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第4章 標本分布と推定

統計検定2級のt分布・カイ二乗分布・F分布の関係

統計検定2級の公式出題範囲には、t分布、カイ二乗分布、F分布が並んでいます。3つは別々の分布に見えますが、すべて標準正規分布から作られます。作られ方を押さえると、どの検定でどの分布を使うかを丸暗記せずに選べます。

このページは、3つの作られ方、標本サイズ25の例でのt統計量の計算、使う場面と自由度の対応を整理します。

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結論

  1. カイ二乗分布 = 標準正規分布に従う独立な変数ν個を2乗して足したもの(自由度ν)
  2. t分布 = 標準正規変数Zを、独立なカイ二乗変数Uを自由度rで割った値の平方根で割ったもの
  3. F分布 = 2つのカイ二乗変数を、それぞれの自由度で割ってから比にしたもの
  4. 平均を扱うならt分布、分散や度数の当てはまりを扱うならカイ二乗分布、分散の比を扱うならF分布

3つの分布の作られ方

NISTは、カイ二乗分布を、標準正規分布に従うν個の独立な変数を2乗して足したときに得られる分布と説明しています。νが自由度です。 Penn State STAT 414は、正規母集団から取った標本の標本分散s²について、(n−1)s²/σ²が自由度n−1のカイ二乗分布に従い、標本平均と標本分散は独立だと述べています。

Penn Stateはt分布を、Zが標準正規分布、Uが自由度rのカイ二乗分布に従い、両者が独立なとき、T=Z÷√(U/r)が自由度rのt分布に従う、と定義しています。標本平均を標準化した値のσを標本から求めたsに置き換えると、(標本平均−μ)÷(s/√n)になり、これが自由度n−1のt分布に従います。

NISTはF分布を、自由度ν1とν2の2つのカイ二乗分布の比で、それぞれ先に自由度で割ったものと説明しています。式にするとF=(U/ν1)÷(V/ν2)です。つまり、正規分布が土台で、カイ二乗分布はその2乗和、t分布は正規とカイ二乗の比、F分布はカイ二乗どうしの比です。

この定義から、Zを2乗した値は自由度1のカイ二乗変数なので、tの2乗は自由度(1,r)のF変数と同じ形になります(この関係は、このページでの導出です)。標準正規分布の表そのものの引き方は正規分布の計算で確認できます。

t統計量の計算例

標本サイズ25、標本平均52、帰無仮説の母平均50で、標準偏差が2通りの場合を比べます。

  • 母標準偏差5が既知: z=(52−50)÷(5÷√25)=2。標準正規分布の両側5%の臨界値は1.96なので、2は超えており棄却
  • 5が標本標準偏差sの値: t=(52−50)÷(5÷√25)=2で、自由度は25−1=24。NISTのt分布表では両側5%の臨界値は2.064なので、2は超えず棄却できない

数値が同じでも、σが既知か標本から推定したかで、使う分布と結論が変わります。tの臨界値が大きいのは、sが標本ごとにぶれる分だけ、裾を厚く見積もるためです。表の引き方は統計数値表の見方に、検定の手順は仮説検定の流れにまとめています。

使う場面の対応表

NISTは、カイ二乗分布は仮説検定と信頼区間の作成に使うもの、F分布は分散分析や2つの母分散が等しいかのF検定に使うもの、t分布は棄却域や信頼区間の決定に使うものと説明しています。出題範囲の項目と合わせて表にします。

分布作られ方使う場面自由度
t分布標準正規分布÷√(カイ二乗÷自由度)母標準偏差が未知のときの母平均の区間推定・1標本と2標本のt検定・回帰係数の検定n−1など
カイ二乗分布標準正規変数ν個の2乗和母分散の区間推定・適合度検定・独立性の検定n−1、k−c、(r−1)(c−1)など
F分布(カイ二乗÷自由度)の比2つの母分散の比のF検定・分散分析・回帰の分散分析表分子と分母の2つ

平均の話ならt、分散の話ならカイ二乗、分散の比ならFと、扱う量で選びます。各検定の手順は信頼区間、カイ二乗検定、分散比のF検定、分散分析のページに分けてあります。

自由度の求め方

表の行や列を選ぶ前に、自由度を出します。場面ごとの考え方は次のとおりです。

  • 標本サイズnの1標本のt検定・母平均の区間推定: 自由度はn−1(n=25なら24)
  • 母分散の区間推定: 自由度n−1のカイ二乗分布の分位点を使い、下限は(n−1)s²÷χ²(1−α/2)、上限は(n−1)s²÷χ²(α/2)(χ²(p)は下側確率pの点。上側確率の表では、下限側の分母に上側α/2の点を使う)
  • r行c列のクロス集計表の独立性の検定: 自由度は(r−1)(c−1)(3行4列なら2×3=6)
  • 2つの母分散の比のF検定: 分子の標本サイズ−1と、分母の標本サイズ−1の2つ(分散が20と10なら、F=20÷10=2)

自由度の数え方が場面ごとに違うので、式の分母にあるnやセルの数から、毎回数え直します。

間違えやすい点

取り違えを、このページの例で4つ挙げます。

  • 標本標準偏差を使っているのに1.96で判定する: n=25、t=2なら臨界値は2.064で、棄却できません。
  • t分布の自由度をnにする: 1標本ならn−1です。n=25なら24です。
  • 独立性の検定の自由度をセルの数−1にする: 3行4列なら12−1=11ではなく、(3−1)(4−1)=6です。
  • F分布の分子と分母を入れ替える: 分子の標本分散の自由度が、1つ目の自由度ν1です。

「母標準偏差が未知」とあればt、「分散」とあればカイ二乗かF、と問題文の語から絞ります。

問題文から読み取る

問題文の言い回しから、使う分布を選べます。このページの整理から導いた読み方で、出題を予想するものではありません。

  • 「母標準偏差が未知で、標本標準偏差から」とあれば、自由度n−1のt分布
  • 「母分散の95%信頼区間」とあれば、自由度n−1のカイ二乗分布の2つの分位点
  • 「クロス集計表で、2つの変数が独立か」とあれば、カイ二乗分布、自由度は(r−1)(c−1)
  • 「2つの母集団の分散が等しいか」とあれば、F分布、統計量は標本分散の比
  • 「分散分析表のF値」とあれば、F分布、群間と群内の平均平方の比

よくある質問

統計検定2級の出題範囲に、t分布・カイ二乗分布・F分布は入っていますか?

入っています。統計検定センターの2級出題範囲表は、推測の項目に、標準正規分布、標準正規分布表の利用、t分布、カイ二乗分布、F分布、分布表の活用、上側確率点(パーセント点)を挙げています。

t分布は、自由度が大きくなるとどうなりますか?

標準正規分布に近づきます。NISTは、自由度が違っても形は似ていて違いは裾の厚さにあり、自由度が大きくなると正規分布に近づく(自由度30超ならかなりよい近似)と説明しています。自由度が小さいほど臨界値は大きく、両側5%の臨界値は自由度1で12.706、自由度9で2.262、標準正規分布では1.96です。

カイ二乗分布の平均はいくつですか?

自由度νのカイ二乗分布の平均はνです(NIST)。標準正規変数ν個の2乗和なので、自由度24なら平均は24です。

F分布の2つの自由度は、どちらが分子ですか?

NISTは、F分布を、自由度ν1とν2の2つのカイ二乗分布を、それぞれの自由度で割ってから比にしたものと説明しています。分子側の自由度がν1、分母側がν2です。2つの母分散の比のF検定では、分子の標本分散の標本サイズ−1がν1になります。

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執筆: ミナト編集部(運営者情報を見る)