企業のAI資格制度
G検定などのAI資格を昇格・昇進の要件にする企業の制度と3つの型
AI資格の位置づけが変わり始めています。これまで資格は個人が自己啓発で取るものでしたが、 三菱商事は2027年度から課長級への昇格要件としてG検定の取得を義務化し、段階的に役員を含む全社員5,000人超へ広げる方針と報じられました。 ユニ・チャームも2026年1月から、G検定の取得を係長級への昇進要件に加えると報じられています。「取っておくと良い資格」から「取らないと昇進できない資格」への変化です。
AI資格を昇進要件にする動き以外にも、人事制度への組み込みが進んでいます。住友商事は全社員のAIスキルを6段階で等級化して人事配置に使う制度を始め、 ホンダは高度な生成AI人材を認定して手当で報いる制度を運用しています。 会社によって形は違いますが、いずれもAIスキルを個人任せにせず、人事制度で可視化して動かそうとしている点で共通しています。
以下、確認できている企業の事例から順に見ていきます。個別の事例にはすべて出典を付けています。 G検定と三菱商事・ユニ・チャームの昇格要件に絞って知りたい場合は、G検定を昇格・昇進の要件にした企業の制度(三菱商事・ユニ・チャーム)で、対象の職位と開始時期を個別にまとめています。
この記事の目次
確認できている企業の制度
以下は、報道・公開情報で内容を確認できている事例です。制度は変更されることがあるため、 確認できた範囲の記述に留め、事例ごとの確認日と出典を同じ行に表示しています。
| 企業 | 制度タイプ | 制度の内容(報道ベース) | 確認日 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 三菱商事 | 昇格要件 | 2027年度から課長級への昇格要件としてG検定の取得を義務化し、段階的に役員を含む全社員5,000人超へ拡大する方針と報じられている | 2026-08-21 | 日本経済新聞(2025年4月28日) |
| ユニ・チャーム | 昇進要件 | 2026年1月から、AI関連資格(G検定)の取得を係長級への昇進要件に加えると報じられている | 2026-08-21 | 日本経済新聞(2025年12月5日) |
| 住友商事 | スキル等級・配置 | 2026年8月から、国内外の全社員5,000人のAIスキルを資格・研修・実務実績の点数で6段階に等級化する「Dグレード」制度を開始し、基礎等級は2027年度中に国内社員へ取得を義務付ける方針。等級は人事配置にも活用されると報じられている | 2026-08-16 | 日本経済新聞(2026年5月) |
| ホンダ | 認定・手当 | 生成AIエンジニアを3段階で認定する「Gen-AIエキスパート制度」を2024年6月に開始。認定レベルと関与度に応じた手当を支給し、最上位レベルの専任者には月15万円、初級レベルの兼任者にも月2万5,000円を支給している | 2026-10-15 | 『日本の人事部』取材記事(Gen-AIエキスパート制度) |
| GMOメディア | 資格手当 | 「リスキリング支援制度」の一環として、G検定取得者には毎月10,000円、ITパスポート取得者には毎月5,000円を資格手当の位置づけで給与に上乗せしていると、JDLAの企業事例で紹介されている | 2026-10-15 | JDLA公式(企業事例・GMOメディア) |
| デジタルキューブ | 資格手当 | 2024年7月に資格手当(月額支給)の対象資格へG検定を新規追加したと発表している(月額手当の金額は公式ページの本文では確認できないため記載しない。支給には受験時・合格時・支給時に正社員であることが条件) | 2026-10-08 | デジタルキューブ公式(プレスリリース) |
| 丸紅 | 取得必須 | 若手社員にAI資格の取得を義務付けていると報じられている | 2026-08-21 | 日本経済新聞(2025年12月5日) |
| 三菱食品 | 取得必須 | 若手社員にAI資格の取得を義務付けていると報じられている | 2026-08-21 | 日本経済新聞(2025年12月5日) |
| ソフトバンク | 研修支援・実績 | 「AI Campusプログラム」を通じてG検定の資格取得を支援し、2025年3月時点で社員の8人に1人にあたる2,200人超(全社員の12%)が合格した | 2026-08-07 | ソフトバンク公式ニュース(2025年4月28日) |
| 電通グループ | 全社推奨・実績 | 国内電通グループ39社の従業員1,114人(2024年11月25日時点)がG検定資格を取得したと発表。「AI For Growth」戦略のもと、職種・領域を問わず全従業員にG検定資格取得を推奨し、検定受験料の補助や検定試験対策講座の開催などの支援も行っている | 2026-10-15 | 電通グループ プレスリリース(2025年1月23日・共同通信PRワイヤー配信) |
| 社会情報サービス | 部門研修・学習支援 | アルバイトや派遣を含めて社員は約140名で、そのうち調査事業部門は約80名。部門内で統計検定2級に合格しているのは13名で、会社全体で見ると約1割が2級取得者にあたる。約10年前に統計解析ソフト販売部門の社員が統計検定に合格し、その後、先に2級を取得していた同部門の3名が講師となって社内で5、6人を集めた勉強会が始まった。初期は毎週1時間集まり半年で2級合格を目指す日程だったとされ、担当者は初期の勉強会について、業務時間内に勉強できる点と、合格すれば検定費が補助される点に触れている。現在は集合ではなく、過去問題を交えて自社開発に近い形で作った社内用のeラーニング形式に切り替え、各自のタイミングで学習している。新入社員には初期研修期間に、公開の学習サイトを1日に1項目ずつ読んでもらうと、統計検定公式の取組事例(2024年8月30日掲載)で紹介されている | 2026-10-20 | 統計検定公式(社会情報サービスの取組事例) |
| 戸田建設 | 全社推奨・取得キャンペーン | AI活用を全社標準にする3つの施策(AI基本方針の策定と公開、生成AI専門部署「GenAI推進課」の設立、生成AIパスポートの取得)の一つとして、全社員が生成AIパスポートを取得することを目指す方針を公表。2026年度は会社主導による団体申し込みを実施するなど社内で「取得キャンペーン」を展開し、社員の事務的負荷を軽減しながら資格取得を後押しするとしている。GenAI推進課はDX統轄部内に2026年3月1日付で新設され、AI基本方針は2026年4月1日に策定・公開した | 2026-10-20 | 戸田建設公式プレスリリース(2026年4月1日) |
| 大塚商会 | 研修支援・実績 | G検定合格者は687名、E資格合格者は39名(2023年5月時点)。合格するとG検定の取得費用を会社から支給する制度を整え、AIスタートアップ企業が開発した無料のG検定対策講座も受けられる環境を用意していると、JDLAの企業事例で紹介されている | 2026-10-15 | JDLA公式(企業事例・大塚商会) |
| 千代田化工建設 | 資格手当・一時金 | E資格取得者は現在20名在籍し、毎年1~2名が受験・合格している。2030年までに全社員の約2%にあたる約30名のE資格取得を目指す方針を掲げ、受験料の補助に加え、資格取得後には一時金を支給する仕組みを設けていると、JDLAの企業事例で紹介されている | 2026-10-15 | JDLA公式(企業事例・千代田化工建設) |
このページの更新履歴
- 2026-08-16: 大塚商会(G検定)・千代田化工建設(E資格)の事例を追加し14社に
- 2026-08-10: 社会情報サービス(統計検定2級)・戸田建設(生成AIパスポート)の事例を追加し12社に
- 2026-07-26: 統計検定2級・生成AIパスポートの企業研修ガイドを追加し、立場別に再編
- 2026-07-22: GMOメディア・デジタルキューブの資格手当の事例を追加し8社に
- 2026-07-20: 6社の制度タイプ・確認日・出典対応を同じ表で確認できる形へ整理
- 2026-07-12: 6社の制度内容を出典・確認日つきで初回掲載
制度は3つのタイプに分かれる
同じ「AI資格の制度化」でも、社員への効き方はタイプによって違います。自分の会社の制度(またはこれから来そうな制度)がどれに当たるかで、動き方が変わります。
昇格・昇進の要件型
三菱商事(課長級)、ユニ・チャーム(係長級)
特定の役職に上がる条件としてAI資格の取得を課すタイプです。対象者にとっては「いつまでに取るか」が昇進のタイミングに直結するため、最も切実な制度です。要件になっている資格と期限の定義(申込・受験・合格のどれか)を正確に確認する必要があります。
スキル等級・配置反映型
住友商事(Dグレード)
資格・研修・実務実績を点数化して社員のAIスキルを等級で可視化し、プロジェクトへの登用や人事配置に使うタイプです。単発の合否ではなく、継続的にスキルの証明を積み上げる設計になっているのが特徴です。
手当・認定型
ホンダ(Gen-AIエキスパート制度)、GMOメディア(資格手当)、デジタルキューブ(資格手当)
資格の取得や社内認定に、手当などの金銭的なリターンで応えるタイプです。ホンダは高度なAIスキルを持つ社員を独自に認定し手当を支給する仕組みですが、GMOメディアやデジタルキューブのように、G検定のような公的資格を取得したこと自体に毎月の資格手当を紐づける企業もあります。義務ではなく取得した人に還元する設計が中心で、スキル獲得の動機づけをつくります。
研修支援・全社推奨型
ソフトバンク(AI Campusプログラム)、電通グループ(AI For Growth)
昇進要件や手当のような直接の見返りを設けず、研修プログラムや全社的な推奨を通じて取得を後押しするタイプです。義務化された対象者だけでなく、希望する社員が広く挑戦できる設計のため、合格者数や取得率という規模の実績で制度の浸透度を示す点が特徴です。
なぜこの動きが広がっているのか
背景には、AIを使える人材の構造的な不足があります。経済産業省の推計では、AI・ロボット等の利活用を担う人材は2040年に782万人の需要に対して339万人不足するとされています。 IPAの調査でも、DXを推進する人材が量的に不足していると回答した日本企業は85.1%にのぼり、米国やドイツと比べて突出して高い水準です。
不足している人材を外部採用で確保しようとすると、各社が同じ人材を取り合うことになります。だから「今いる社員を育て、スキルを可視化する」方向に向かう。 その可視化の物差しとして、出題範囲が公開されていて合否が客観的に決まる資格が使われています。 一過性のブームではなく、人材需給の構造に根ざした動きである点が、社員側にとって重要です。
資格で基礎を学んだあとの業務での使い方としては、請求書や申込書などの書類から項目を読み取る作業が具体例になります。 進め方は運営会社の別サイトの解説「AIで書類から項目を読み取る実務の進め方」にまとめています。
立場別に選ぶ実践ガイド
会社から取得を求められた社員と、資格制度を設計する担当者では、先に決めることが異なります。 自分の立場に合う入口から読み、受験の段取りまたは制度の対象・支援を具体化してください。
取得を求められた社員向け
資格名や期限を確認し、限られた時間で受験までの段取りを決めます。
最初に読む会社からAI系資格の取得を求められたときの確認事項と、資格の3タイプ別の学習の重心 →会社からAI関連資格の取得を求められたものの、資格名や理由が曖昧な人向けに、最初に確認すべきことと、AI資格の3タイプの見分け方、タイプ別の学習の重心までを案内します。人事・研修・AI推進の制度設計担当向け
対象者、学習時間、会社の支援、取得後の業務接続を資格の役割に合わせて設計します。
最初に読むDX推進担当者向け、AI人材育成でのAI系資格の使い方(自分・チーム・データ人材の3層) →DX・AI活用の推進担当になった人向けに、自分の学習、チームの底上げ、データ人材の育成という3つの層で、AI系資格をどう組み合わせて使うかを制度設計の手順で示します。どの状況でも、最初の一歩は同じ
教材を選ぶ前に、分野別の問題演習で自分がどの分野で失点するかを数字で掴むこと。 期限がある学習では、この数字が残り時間の配分の根拠になります。
よくある質問
QAI資格が昇進要件になるのは、一部の大企業だけではないですか?
現時点で報道により確認できるのは大手企業の事例が中心です。ただし、経済産業省の推計ではAI・ロボット等の利活用人材が2040年に339万人不足するとされ、IPAの調査では日本企業の85.1%がDX推進人材の不足を回答しています。人材を外部採用で確保しにくい構図は企業規模を問わないため、社内育成と資格による可視化という手法が追随される素地はあります。自社に制度がなくても、上司や人事の推奨として同じ動きが来ることはあります。
Q対象の資格としてG検定がよく出てくるのはなぜですか?
報道で確認できる昇格・昇進要件の事例(三菱商事、ユニ・チャーム)では、いずれも対象資格がG検定です。G検定はAIの技術だけでなく、応用例、プロジェクトの進め方、法律・契約、倫理・ガバナンスまでを一体で問う構成のため、管理職級に求める「AIを事業で正しく使う判断力」の確認手段として採用しやすい構造があります。
Q三菱商事に「AIエキスパート」という名称の認定制度はありますか?
当サイトが一次情報で確認できた範囲では、三菱商事の関連制度は2027年度から課長級への昇格要件としてG検定の取得を義務化する方針というものだけで、「AIエキスパート」という名称の制度は確認できていません。該当する制度が公式に確認でき次第、出典つきで追記します。
Q自分の会社にはまだ制度がありません。先取りする意味はありますか?
判断材料は2つあります。1つは社内の評価で、制度化前でも上司や人事がAIスキルを評価軸として見始めているなら、先に持っておく価値があります。もう1つは転職市場で、複数の大手が要件化した資格は、履歴書上の共通言語として通用しやすくなります。逆に、業務にも評価にも接点がないなら、急いで取る必要はありません。
Q会社の制度に納得できない場合はどうすればよいですか?
制度への賛否と、自分の合否は分けて考えることをすすめます。制度の是非は会社の意思決定の問題で、個人の学習で変えられるものではありません。一方で、要件になっている以上、取らない選択は昇進の機会を手放すことを意味します。取ったうえで制度に意見を言う方が、立場としても通りやすくなります。
Q資格を取れば評価されますか?
要件型の制度では、資格は「土俵に上がる条件」であって加点の上限ではありません。取得はスタートラインで、評価されるのはその知識で業務のどこを変えたかです。ツールの選定理由を説明できる、契約や利用規約のリスクに気づける、といった場面で知識が表に出ます。
社内の受験に備える公式テキスト(Amazon)
このページで事例を扱うG検定と生成AIパスポートについて、試験の実施団体が出している公式テキストです。購入前に版と最新のシラバスへの対応を確認してください。
一次情報の確認について
企業の制度は変更・廃止されることがあります。各事例の確認日は上の表に表示しています。本ページの企業事例は以下の報道・公開情報に基づいています。制度の詳細は各社の発表・報道原文を、自社の制度は勤務先の人事部門の案内を確認してください。
- 日本経済新聞(2025年4月28日)を確認する →
- 日本経済新聞(2025年12月5日)を確認する →
- 日本経済新聞(2026年5月)を確認する →
- 『日本の人事部』取材記事(Gen-AIエキスパート制度)を確認する →
- JDLA公式(企業事例・GMOメディア)を確認する →
- デジタルキューブ公式(プレスリリース)を確認する →
- ソフトバンク公式ニュース(2025年4月28日)を確認する →
- 電通グループ プレスリリース(2025年1月23日・共同通信PRワイヤー配信)を確認する →
- 統計検定公式(社会情報サービスの取組事例)を確認する →
- 戸田建設公式プレスリリース(2026年4月1日)を確認する →
- JDLA公式(企業事例・大塚商会)を確認する →
- JDLA公式(企業事例・千代田化工建設)を確認する →
- 経済産業省 2040年の就業構造推計(改訂版)を確認する →
- IPA「DX動向2025 AI時代のデジタル人材育成」を確認する →
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