第2章 データ収集と確率(実験計画の概念)
統計検定2級の分散分析(平方和・F比・分散分析表)
統計検定2級の公式出題範囲には、3群以上の平均値の差を調べる分散分析とF比が含まれています。一元配置の分散分析は、全体のばらつきを群間と群内に分け、その平均平方の比であるF比を、F分布の臨界値と比べる計算です。
このページは、3群各4個のデータで、平方和、自由度、F比、分散分析表、判定までを順に計算します。最後に、F検定でわからないことも確認します。
この記事の目次
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結論
- 全体の平方和は、群間平方和と群内平方和に分けられる(32 + 6 = 38)
- 各平方和を自由度で割ると平均平方になり、F比 = 群間の平均平方 ÷ 群内の平均平方
- 3群各4個では、自由度は群間が2、群内が9。F比24は、5%の臨界値4.256を超える
- F検定でわかるのは「平均は等しくない」まで。どの群が違うかは多重比較で調べる
なぜ分散分析を使うのか
2群の平均の差ならt検定で足ります。3群以上を比べるとき、ペアごとの比較を何度も繰り返すやり方について、NISTは、全体の有意水準が1組の比較で指定した水準にならないため、一般にうまくいかないと述べています。そこで、群が3つ以上でも1回の検定で「平均がすべて等しい」という帰無仮説を調べる方法として、分散分析のF検定を使います。
2群の場合との整理は分散分析とt検定の比較にあります。
平方和・自由度・F比の式
要因の水準数(群の数)をI、各群の観測数をJ個(全群で等しいとき)とします。NISTの一元配置の分散分析表にならい、次のように定義します。
- 群間平方和 = JΣ(各群平均 − 全体平均)²、自由度は I−1
- 群内平方和 = ΣΣ(観測値 − 各群平均)²、自由度は I(J−1)
- 全体の平方和 = ΣΣ(観測値 − 全体平均)²、自由度は IJ−1
- 平均平方は、平方和を自由度で割った値。F比 = (群間平方和÷(I−1)) ÷ (群内平方和÷[I(J−1)])
群の平均に差があれば、群間の平均平方は群内の平均平方より大きくなります。データの仮定のもとでは、この比は表の自由度のF分布に従います。
3群のデータで計算する
計算例です(このページの架空のデータです)。I = 3群、J = 4個ずつで、帰無仮説は「3群の母平均は等しい」です。
| 群 | 観測値 | 群平均 | 群内の偏差平方和 |
|---|---|---|---|
| A | 4, 5, 6, 5 | 5 | (4−5)²+(5−5)²+(6−5)²+(5−5)² = 2 |
| B | 6, 7, 8, 7 | 7 | (6−7)²+(7−7)²+(8−7)²+(7−7)² = 2 |
| C | 8, 9, 10, 9 | 9 | (8−9)²+(9−9)²+(10−9)²+(9−9)² = 2 |
- 全体平均は (5 + 7 + 9) ÷ 3 = 7(各群の個数が同じなので、群平均の平均と一致する)
- 群間平方和は 4 × {(5−7)² + (7−7)² + (9−7)²} = 4 × 8 = 32
- 群内平方和は 2 + 2 + 2 = 6
- 全体の平方和は 32 + 6 = 38(全12個について、各観測値と全体平均7の差を2乗して足した値と一致する)
- 自由度は、群間が 3−1 = 2、群内が 3×(4−1) = 9、全体が 12−1 = 11
- 平均平方は、群間が 32÷2 = 16、群内が 6÷9 ≒ 0.667
F比は 16 ÷ (6÷9) = 24 です。
分散分析表の読み方
ここまでの計算を、NISTの形式にならって1つの表にまとめます。ソフトウェアの出力も、基本的にこの並びです。
| 変動の要因 | 平方和 | 自由度 | 平均平方 | F比 |
|---|---|---|---|---|
| 群間(要因) | 32 | 2 | 16 | 24 |
| 群内(残差) | 6 | 9 | 約0.667 | |
| 全体 | 38 | 11 |
検算は2つです。平方和は「群間 + 群内 = 全体」、自由度も「群間 + 群内 = 全体」になっていることを確かめます。ここが合わなければ、どこかの計算が違います。
F分布表で判定する
NISTのF分布の上側臨界値表は、分子の自由度ν1と分母の自由度ν2の組ごとに、有意水準5%・10%・1%の臨界値を示します。この表は片側検定用で、検定統計量が表の値より大きいときに帰無仮説を棄却します。
このページの例は、分子の自由度が群間の2、分母の自由度が群内の9です。5%の表で ν1 = 2、ν2 = 9 を引くと臨界値は4.256です。F比24は4.256より大きいので、5%の有意水準で「3群の母平均は等しい」という帰無仮説を棄却します。表の読み方は統計数値表の読み方でも確認できます。
F分布は、右に長く伸びた非対称な形です。分散分析では、F比が大きいほど群間の違いが大きいため、上側の裾だけを棄却域にします。両側ではありません。
F検定でわからないこと
NISTは、平均が等しいという帰無仮説が棄却されたとき、わかるのは「等しくない」ことだけで、どの平均がどう違うかまではわからないと述べています。ペアごとの比較をすべての組で繰り返しても全体の有意水準が保てないため、どの平均が違うかは多重比較の手続きで調べるとしています。ANOVAのF検定は、調査を続けるべきかを知らせる予備的な検定という位置づけです。
このページの例では、F比24が有意でも、A・B・Cのどの組に差があるかは、F検定だけでは結論づけられません。「Cが最も高い」のように言えるのは、群の平均が5、7、9という記述の範囲です。
問題文から読み取る
問題文の言い回しから、確かめる点を決められます。このページの計算例から導いた読み方で、出題を予想するものではありません。
- 「3群以上の平均値の差」「分散分析表」なら、一元配置のF検定
- 自由度が問われたら、群間は「群の数−1」、群内は「全観測数−群の数」
- 平方和の欠けた値は、「群間 + 群内 = 全体」の関係から逆算できる
- F比は「群間の平均平方 ÷ 群内の平均平方」。分母と分子を逆にした選択肢は誤り
- 「有意なので全部の群の平均が互いに異なる」と言い換えた選択肢は誤り
統計検定2級の学習に使う書籍(Amazon)
試験範囲を通して読むときの1冊です。読んだ章は、このサイトの章別問題で確かめられます。
よくある質問
分散分析は、統計検定2級の公式出題範囲にありますか?
あります。統計検定センターの2級の出題範囲表は、実験計画の概念として、一元配置実験、3群以上の平均値の差(分散分析)、F比を挙げています。
F検定でP値が小さいと、どの群が違うかまでわかりますか?
わかりません。NISTは、平均が等しいという帰無仮説が棄却された時点でわかるのは「等しくない」ことだけで、どの平均が違うかは多重比較の手続きで調べると述べています。このページの計算例でも、F比24は「3群の平均は等しくない」ことを示すだけです。
群間平方和と群内平方和を足すと、全体の平方和になりますか?
なります。このページの例では、群間平方和32と群内平方和6の合計が38で、全体の平方和 Σ(各観測値−全体平均)² と一致します。自由度も、群間2と群内9の合計が全体の11になります。
F比はなぜ1より大きくなると有意になりやすいのですか?
群間の平均平方は群ごとの平均の違いの大きさ、群内の平均平方は同じ群の中のばらつきの大きさを表します。群の平均に差がなければ両者は同程度になり、NISTによれば差があると群間の平均平方のほうが大きくなります。F比が大きいほど、群ごとの違いがばらつきに比べて大きいことになります。
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