第4章 標本分布と推定
統計検定2級の母分散の区間推定と検定
統計検定2級の出題範囲には、正規母集団の母分散の区間推定と、母分散の検定があります。母平均のt分布と違い、母分散ではカイ二乗分布を使い、信頼区間は左右対称になりません。統計量の形と、下限・上限に使う2つの点を押さえれば、計算は代入だけで済みます。
このページは、標本サイズ10・偏差平方和36の1つのデータで、区間推定と3通りの検定を計算し、母平均の区間推定との違いを整理します。
この記事の目次
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結論
- (n−1)s²÷σ²が、正規母集団では自由度n−1のカイ二乗分布に従う
- 検定の統計量はT=(n−1)s²÷σ₀²で、自由度n−1のカイ二乗分布の点と比べる
- 母分散の信頼区間は、下限が(n−1)s²÷上側α/2の点、上限が(n−1)s²÷下側α/2の点で、左右対称にならない
- 母標準偏差の信頼区間は、母分散の下限と上限の平方根
母分散の区間推定の計算例
Penn State STAT 414は、正規母集団の標本について、(n−1)s²/σ²が自由度n−1のカイ二乗分布に従うと述べています。これを変形すると、母分散σ²を挟む区間が作れます。NISTも、検定の式を変えると分散の区間推定になり、標準偏差の区間はその平方根になると説明しています。
標本サイズ10、偏差平方和Σ(x−x̄)²=36の標本を使います。不偏分散はs²=36÷9=4、自由度は9です。自由度9のカイ二乗分布の点は次のとおりです。
| 点 | 自由度9の値 |
|---|---|
| 下側2.5%の点 | 2.700 |
| 下側5%の点 | 3.325 |
| 上側5%の点 | 16.919 |
| 上側2.5%の点 | 19.023 |
- 95%信頼区間の下限: 36÷19.023≒1.892(上側2.5%の点で割る)
- 95%信頼区間の上限: 36÷2.700≒13.333(下側2.5%の点で割る)
- 母標準偏差の95%信頼区間: √1.892≒1.376から√13.333≒3.651
下限には大きい点、上限には小さい点で割るので、割る点の大小が逆になります。点推定値の4から、下側へは約2.1、上側へは約9.3離れており、区間は右に長く伸びます。表の引き方は統計数値表の見方で確認できます。
母分散の検定の計算例
NISTは、帰無仮説をσ²=σ₀²とし、統計量をT=(N−1)(s/σ₀)²と定めています。標本標準偏差sと目標の標準偏差σ₀の比が1から離れるほど、帰無仮説を棄却しやすくなります。同じ標本(偏差平方和36、自由度9)で、帰無仮説と対立仮説を変えた3通りを計算します。
| 仮説 | 統計量 | 棄却域との位置 | 結論 |
|---|---|---|---|
| H0: σ²=9、対立仮説 σ²≠9(両側5%) | T=36÷9=4 | 2.700より大きく19.023より小さい | 棄却できない |
| H0: σ²=16、対立仮説 σ²<16(下側5%) | T=36÷16=2.25 | 3.325より小さい | 棄却する |
| H0: σ²=1、対立仮説 σ²>1(上側5%) | T=36÷1=36 | 16.919より大きい | 棄却する |
両側検定の棄却域は、下側2.5%の点2.700より小さいか、上側2.5%の点19.023より大きい範囲です。片側検定は、対立仮説の向きに5%分をまとめて置くので、下側なら3.325、上側なら16.919が境目です。σ²=9の両側検定で棄却できないのは、9が95%信頼区間1.892〜13.333の中にあるためで、区間推定と検定の結論は一致します。σ²=16は区間の外にあり、両側検定でもT=2.25が2.700より小さいので棄却されます。検定全体の流れは仮説検定の流れにまとめています。
母平均の区間推定との違い
同じ標本で、母平均と母分散の区間推定を並べると、使う分布と区間の形が違います。
- 母平均: 自由度n−1のt分布を使い、推定値±(臨界値×標準誤差)の形で左右対称
- 母分散: 自由度n−1のカイ二乗分布を使い、(n−1)s²を2つの点で割る形で、左右対称にならない
- どちらも、標本サイズnから自由度n−1を求める点は同じ
平均の区間は「足し引き」、分散の区間は「割り算」と覚えると、式の取り違えを防げます。3つの分布の作られ方はt分布・カイ二乗分布・F分布の関係に、母平均の区間推定は信頼区間の計算に、2つの母分散の比は分散比のF検定にまとめています。
間違えやすい点
取り違えを、このページの例で4つ挙げます。
- 下限と上限の点を逆にする: 下限は上側2.5%の点19.023、上限は下側2.5%の点2.700で割ります。
- (n−1)を掛け忘れる: 偏差平方和36は(n−1)s²に等しいので、s²=4に9を掛けた値です。s²のまま割ると区間が9分の1になります。
- 自由度をnにする: n=10なら自由度は9です。
- 標準偏差の検定でsとσ₀を2乗し忘れる: T=(N−1)(s/σ₀)²で、比を2乗します。
問題文が標準偏差で与えられたら、2乗して分散にしてから統計量に入れます。
問題文から読み取る
問題文の言い回しから、手順を選べます。このページの整理から導いた読み方で、出題を予想するものではありません。
- 「母分散の95%信頼区間」とあれば、(n−1)s²を、自由度n−1のカイ二乗分布の上側2.5%の点と下側2.5%の点で割る
- 「ばらつきが基準より大きくなったか」とあれば、上側の片側検定
- 「母標準偏差の信頼区間」とあれば、母分散の下限と上限の平方根
- 「分散が等しいか」と2群で聞かれたら、このページではなくF検定
統計検定2級の学習に使う書籍(Amazon)
試験範囲を通して読むときの1冊です。読んだ章は、このサイトの章別問題で確かめられます。
よくある質問
統計検定2級の出題範囲に、母分散の区間推定と検定は入っていますか?
入っています。統計検定センターの2級出題範囲表は、推定の項目に「正規母集団の母平均・母分散の区間推定」を、仮説検定の項目に「母分散の検定」を挙げています。
母分散の検定の統計量は、どう計算しますか?
NISTは、検定統計量をT=(N−1)(s/σ₀)²とし、Nは標本サイズ、sは標本標準偏差、σ₀は帰無仮説の標準偏差だと示しています。自由度N−1のカイ二乗分布の点と比べます。標本サイズ10で偏差平方和が36、帰無仮説の母分散が9なら、T=9×4÷9=4です。
母分散の信頼区間は、なぜ左右対称にならないのですか?
カイ二乗分布が左右対称ではないためです。標本分散4、自由度9の例では、95%信頼区間は1.892から13.333で、標本分散4からの距離は下側が約2.1、上側が約9.3と違います。母平均の信頼区間は「推定値±誤差」の形に書けますが、母分散の区間は書けません。
母分散の信頼区間から、母標準偏差の信頼区間を作れますか?
作れます。NISTは、標準偏差の信頼区間は分散の信頼区間の下限と上限の平方根をとったものと説明しています。例の1.892と13.333の平方根は、約1.376と約3.651です。
データが正規分布に従わないときも、この方法は使えますか?
この方法は、正規母集団から取った標本を前提にしています。Penn State STAT 414は、正規母集団の標本について(n−1)s²/σ²が自由度n−1のカイ二乗分布に従うと述べています。出題範囲表も「正規母集団の」母分散の区間推定と書いています。
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