第3章 確率分布
統計検定2級の幾何分布・超幾何分布・負の二項分布
統計検定2級の公式出題範囲の確率分布には、二項分布やポアソン分布に加えて、幾何分布、超幾何分布、負の二項分布が挙がっています。3つは、「何を数えるか」と「復元か非復元か」で見分けます。
このページは、二項分布を基準に3つの分布の違いを整理し、サイコロと12個の玉の数値例で確率を計算します。
この記事の目次
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結論
- 二項分布 = 一定回数の試行での成功回数
- 幾何分布 = 最初の成功が出るまでの試行回数(成功確率は毎回同じ)
- 負の二項分布 = k回目の成功が出るまでの試行回数(k=1なら幾何分布)
- 超幾何分布 = 有限の母集団から非復元で取り出したときの、標識のある要素の数
- 最初の3つは成功確率が毎回一定、超幾何分布だけは取り出すたびに割合が変わる
二項分布を基準にする
二項分布は、各試行の成功確率pが一定で、成功と失敗の2結果を持つn回の試行で、成功回数がxとなる確率がC(n,x)p^x(1-p)^(n-x)になる分布です。試行の回数nを先に決めておき、成功の回数を数えます。
ほかの3つは、この「回数を先に決めて成功を数える」形のどこかを入れ替えたものです。二項分布の計算は二項分布の確率・期待値・分散のページで確認できます。
幾何分布
幾何分布は、成功確率が一定の独立な試行を繰り返すとき、最初の成功までを扱う分布です。数える対象が資料によって2通りあるので、先に整理します。
- 失敗回数を数える形: 確率はp(1-p)^x。NISTの資料がこの形です
- 試行回数を数える形: 確率は(1-p)^(t-1)p。失敗回数に1を足したものです
このページは、試行回数を数える形で計算します。サイコロを振って、初めて6が出る場面です(成功確率p=1/6)。
- 3回目で初めて6: (5/6)×(5/6)×(1/6)=25/216≒0.116
- 3回以内に6が出る: 1−(5/6)^3=91/216≒0.421
- 期待値: 1/p=6回(日本語版Wikipediaが試行回数を数える形の期待値として示す式)
「初めて」「最初の成功まで」という言葉が出たら、幾何分布を疑います。用語は幾何分布の用語集にあります。
負の二項分布
NISTは、負の二項分布を、k回目の成功がx回目の試行で起こる確率の分布としています。確率はC(x-1,k-1)p^k(1-p)^(x-k)です。x回目が成功と決まっているので、それ以前のx-1回の中に、成功をk-1回並べる組合せを数えます。
例です。成功確率0.5の試行で、3回目の成功が5回目に起こる確率を求めます。
- k=3、x=5、p=0.5
- C(4,2)×0.5^3×0.5^2=6×0.03125=0.1875
- k=1にすると、C(x-1,0)p(1-p)^(x-1)=p(1-p)^(x-1)となり、試行回数を数える幾何分布に一致します
日本語版Wikipediaは、成功回数r、失敗回数を数える形の期待値をr(1−p)/pとしています。失敗回数にrを足せば試行回数になるので、このページの形の期待値はr/pです(この足し算は、このページでの導出です)。p=0.5、r=3なら6回です。幾何分布は、負の二項分布の「1回目の成功まで」という特別な場合です。用語は負の二項分布の用語集にあります。
超幾何分布
NISTは、超幾何分布を、標識のある要素と無い要素からなる母集団から、一定の大きさの標本を非復元で取り出したときの、標識のある要素の数の分布としています。このページでは、記号をNISTの表記から置き換えて、母集団がN個、標識のある要素がK個、取り出す数がn個とします。標識のある要素がk個になる確率は、C(K,k)C(N−K,n−k)/C(N,n)です。
例です。12個の玉のうち赤玉が5個あり、戻さずに3個取り出して、赤玉がちょうど1個になる確率を求めます。
- N=12、K=5、n=3、k=1
- C(5,1)×C(7,2)÷C(12,3)=5×21÷220≒0.477
- 同じ割合5/12で毎回戻す(二項分布、p=5/12、n=3)なら、3×(5/12)×(7/12)^2≒0.425
非復元では、取り出すたびに残りの赤玉の割合が変わります。そのため、0.477と0.425の差が出ます。母集団が120個で赤玉が50個なら、C(50,1)C(70,2)÷C(120,3)=50×2415÷280840≒0.430となり、0.425にかなり近づきます。
期待値は、日本語版Wikipediaの表記でn×K/Nです。例では3×5/12=1.25個で、二項分布の期待値np=1.25と同じです。分散は、同じ資料でn(K/N)((N−K)/N)((N−n)/(N−1))で、例では3×(5/12)×(7/12)×(9/11)≒0.597になります。二項分布の分散np(1−p)≒0.729より小さくなります。期待値は二項分布と同じで、分散だけが(N−n)/(N−1)倍だけ小さくなります。用語は超幾何分布の用語集にあります。
4つの分布の見分け方
数える対象と取り出し方を、表にまとめます。例の列は、このページが作った場面です。
| 分布 | 数えるもの | 取り出し方 | 例 |
|---|---|---|---|
| 二項分布 | n回中の成功回数 | 毎回同じ成功確率(復元) | サイコロを5回振って6が出る回数 |
| 幾何分布 | 最初の成功までの試行回数 | 毎回同じ成功確率 | 初めて6が出るまでに振る回数 |
| 負の二項分布 | k回目の成功までの試行回数 | 毎回同じ成功確率 | 3回目の6が出るまでに振る回数 |
| 超幾何分布 | 標本中の標識のある要素の数 | 非復元で取り出す | 12個の玉から3個を戻さず取り、赤玉の数 |
回数が決まっていれば二項分布、成功が出るまでなら幾何分布か負の二項分布、非復元なら超幾何分布です。2つずつの違いは二項分布と超幾何分布の違いと幾何分布と負の二項分布の違いのページでも比べています。
間違えやすい点
取り違えを、このページの例で3つ挙げます。
- 幾何分布の定義を確かめない: 「3回目で初めて6」は試行回数で数えると(5/6)^2(1/6)、失敗回数2回で数えても同じ値ですが、期待値は6回と5回(=(1-p)/p)で異なります。
- 非復元なのに二項分布で計算する: 12個の玉の例では、0.477と0.425で答えが変わります。
- 負の二項分布で、最後の1回を数え忘れる: x回目が成功と決まっているので、組合せはC(x,k)ではなくC(x-1,k-1)です。
式を選ぶ前に、「何を数えるか」「戻すか戻さないか」を問題文から1行で書き出します。
問題文から読み取る
問題文の言い回しから、分布を選べます。このページの整理から導いた読み方で、出題を予想するものではありません。
- 「n回のうち成功がx回」とあれば、二項分布
- 「初めて成功するまでの回数」とあれば、幾何分布
- 「k回目の成功が起こるまで」とあれば、負の二項分布
- 「戻さずに取り出す」「有限個の中から」とあれば、超幾何分布
- 「母集団に比べて取り出す数が小さい」とあれば、超幾何分布を二項分布で近似できる
- 「失敗回数」か「試行回数」かが書かれていれば、その定義に合わせて式を選ぶ
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試験範囲を通して読むときの1冊です。読んだ章は、このサイトの章別問題で確かめられます。
よくある質問
統計検定2級の出題範囲に、幾何分布・超幾何分布・負の二項分布は入っていますか?
入っています。統計検定センターの2級出題範囲表は、確率分布の項目に、ベルヌーイ試行、二項分布、ポアソン分布、幾何分布、一様分布、指数分布、正規分布、2変量正規分布、超幾何分布、負の二項分布を挙げています。
幾何分布は、失敗回数と試行回数のどちらを数えますか?
資料によって定義が分かれます。NISTの資料は最初の成功までの失敗回数x、確率p(1-p)^xとしています。日本語版Wikipediaは、試行回数を数える形(確率p(1-p)^(k-1)、期待値1/p)と失敗回数を数える形(確率p(1-p)^k、期待値(1-p)/p)の両方を載せています。問題文で何を数えるかを確かめてください。
超幾何分布は、どんなときに二項分布で近似できますか?
母集団の大きさに対して取り出す数が小さいと、非復元でも各回の成功確率はほとんど変わらないので、二項分布に近い値になります。このページの例では、赤玉の割合が5/12の母集団から3個取るとき、母集団が12個なら確率0.477と0.425で差が大きく、120個なら約0.430と0.425で差が小さくなります。
負の二項分布の確率は、どう計算しますか?
成功確率pの独立な試行で、k回目の成功がx回目に起こる確率は、C(x-1,k-1)p^k(1-p)^(x-k)です。x回目は成功と決まっているので、それ以前のx-1回の中にk-1回の成功を並べる組合せを数えます。
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