第3章 確率分布
統計検定2級の期待値と分散
統計検定2級の公式出題範囲には、確率変数の期待値と分散が挙がっています。分散はE(X²)−[E(X)]²で求め、aX+bに変換すると平均はa倍してb足し、分散はa²倍になります。
このページは、期待値と分散の求め方、変換したときの変化、和と差の分散を、小さな確率分布の例で整理します。
この記事の目次
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結論
- 期待値 = 各値に確率を掛けて合計、E(X)=Σx·f(x)
- 分散 = E(X²)−[E(X)]²(平均との差の2乗の期待値と同じ値)
- Y=aX+bの平均 = aμ+b、分散 = a²σ²、標準偏差 = |a|σ(bは分散に影響しない)
- 和と差の分散 = V(X)+V(Y)±2Cov(X,Y)(共分散が0なら足し算)
期待値と分散を求める
離散確率変数Xの期待値は、各値x_iにその確率f(x_i)を掛けて合計したE(X)=Σx_i f(x_i)です。分散は、平均との差の2乗の期待値E[(X−E(X))²]で、E(X²)−[E(X)]²でも求められます。
例です(架空のデータです)。Xが1、2、3をそれぞれ確率0.2、0.5、0.3でとるとします。
| x | 確率 | x×確率 | x²×確率 |
|---|---|---|---|
| 1 | 0.2 | 1×0.2=0.2 | 1²×0.2=0.2 |
| 2 | 0.5 | 2×0.5=1.0 | 2²×0.5=2.0 |
| 3 | 0.3 | 3×0.3=0.9 | 3²×0.3=2.7 |
- 期待値: E(X)=0.2+1.0+0.9=2.1
- 2乗の期待値: E(X²)=0.2+2.0+2.7=4.9
- 分散: V(X)=4.9−2.1²=4.9−4.41=0.49
- 標準偏差: √0.49=0.7
aX+bに変換する
Penn State STAT 414は、Xの平均がμ、分散がσ²のとき、Y=aX+bの平均をaμ+b、分散をa²σ²、標準偏差を|a|σとしています。前の例のX(平均2.1、分散0.49、標準偏差0.7)で計算します。
- Y=3X+2の平均: 3×2.1+2=8.3
- Y=3X+2の分散: 3²×0.49=4.41、標準偏差は3×0.7=2.1
- Y=−2X+10の平均: −2×2.1+10=5.8
- Y=−2X+10の分散: (−2)²×0.49=1.96、標準偏差は|−2|×0.7=1.4
平均は変換の式をそのまま当てはめ、分散はaを2乗するだけでbを使いません。aが負でも分散は正のままで、標準偏差は絶対値をとります。
偏差値への変換で確かめる
aX+bの身近な例が偏差値です。平均60、標準偏差8の得点Xを、平均50、標準偏差10にそろえる変換T=10(X−60)÷8+50を整理すると、T=1.25X−25になります(架空の例です)。
- 平均: 1.25×60−25=50
- 標準偏差: 1.25×8=10
定数を引いても標準偏差は変わらず、掛けた倍率だけ標準偏差が変わります。同じ考え方で標準化する手順は標準化のページにまとめています。
和と差の分散
英語版Wikipediaの「Variance」は、Var(aX+bY)=a²Var(X)+b²Var(Y)+2ab Cov(X,Y)、Var(aX−bY)=a²Var(X)+b²Var(Y)−2ab Cov(X,Y)としています。相関のない確率変数の和の分散は、各分散の和に等しくなります。
例です。前のXに加えて、平均3、分散0.25の確率変数Wを考えます(架空の例です)。XとWの共分散Cov(X,W)が0のときと0.1のときで、X+WとX−Wの分散を比べます。
| 項目 | 共分散が0 | 共分散が0.1 |
|---|---|---|
| X+Wの平均 | 2.1+3=5.1 | 5.1(共分散に関係なし) |
| X+Wの分散 | 0.49+0.25=0.74 | 0.49+0.25+2×0.1=0.94 |
| X−Wの平均 | 2.1−3=−0.9 | −0.9(共分散に関係なし) |
| X−Wの分散 | 0.49+0.25=0.74 | 0.49+0.25−2×0.1=0.54 |
平均は和も差も単純に足し引きし、分散は差でも足して、共分散の項だけ符号が変わります。共分散と相関係数の関係は相関係数のページで確認できます。
間違えやすい点
計算の途中で起きやすい取り違えを、このページの例で4つ挙げます。
- aを2乗し忘れる: Y=3X+2の分散は3×0.49ではなく、3²×0.49=4.41です。
- bを分散に足す: Y=3X+2の分散に2を足さず、bは平均だけに入ります。
- 差の分散を引き算にする: X−Wの分散は0.49−0.25ではなく、足して0.74です(共分散が0のとき)。
- 標準偏差を足す: X+Wの標準偏差は0.7+0.5=1.2ではなく、√0.74≒0.86です。足せるのは分散です。
足したり掛けたりする前に、いま扱っているのが平均か分散か標準偏差かを一度確かめます。
問題文から読み取る
問題文の言い回しから、使う式を判断できます。このページの例から導いた読み方で、出題を予想するものではありません。
- 「確率分布表が与えられている」とあれば、E(X)とE(X²)を表から計算
- 「Y=aX+b」とあれば、平均はaμ+b、分散はa²σ²
- 「単位を変える」「得点を換算する」とあれば、aX+bの変換
- 「XとYの和や差の分散」とあれば、共分散の有無を確かめて±2Cov
- 「独立」または「共分散が0」とあれば、分散はそのまま足し算
統計検定2級の学習に使う書籍(Amazon)
試験範囲を通して読むときの1冊です。読んだ章は、このサイトの章別問題で確かめられます。
よくある質問
分散は、どの式で計算するのが速いですか?
値が少ない離散分布なら、E(X²)−[E(X)]²が速くなります。各値を2乗して確率を掛けて合計し、平均の2乗を引くだけで、平均との差を1つずつ作る手間が要りません。
Y=aX+bの分散に、bは関係しますか?
関係しません。Penn State STAT 414は、Y=aX+bの分散をa²σ²_Xとしています。定数bを足すと分布全体が平行に動くだけで、ばらつきは変わりません。
X−Yの分散は、V(X)−V(Y)ですか?
違います。Var(aX−bY)の式は、a²Var(X)+b²Var(Y)から2ab Cov(X,Y)を引く形です。共分散が0なら、X−Yの分散もV(X)+V(Y)と足し算になります。
期待値と分散は、統計検定2級の出題範囲に載っていますか?
載っています。公式の出題範囲表は、確率と確率分布の項目として、確率変数の期待値と分散などを挙げています。
![日本統計学会公式認定 統計検定2級 公式問題集[CBT対応版] の表紙](/_next/image?url=https%3A%2F%2Fm.media-amazon.com%2Fimages%2FP%2F4788920476.09._SCLZZZZZZZ_.jpg&w=256&q=75)