用語比較
回帰の標準誤差と係数の標準誤差の違い|Residual standard errorとStd. Errorの読み分け(統計検定2級)
回帰の出力には「標準誤差」が2種類あります。Residual standard error は残差のばらつきの大きさ、係数表の Std. Error は傾きや切片の推定値がどれだけぶれるかを表す、別の値です。
2つは次の式でつながっています。Residual standard error を s とすると、傾きの標準誤差は s ÷ √Σ(x−x̄)² です。傾きのt値は、推定値をこの標準誤差で割って求めます。
このページは、回帰の出力を見て「標準誤差」の2つの数字をどちらも同じ意味だと思ってしまう人を対象にしています。x=1〜6の6点データで、2つの値を手計算で求めて違いを確認します。
この記事の目次
この記事の根拠と出典
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結論
回帰の標準誤差(Residual standard error)
s = √(残差平方和 ÷ (n − 推定した係数の個数))。単回帰では分母は n−2。目的変数と同じ単位で、データが回帰直線のまわりにどれだけ散らばるかを表す。
係数の標準誤差(Std. Error)
傾きなら se(b) = s ÷ √Σ(x−x̄)²。標本を取り直したときに傾きの推定値がどれだけぶれるかを表す。t値は 推定値 ÷ Std. Error。
つながり
係数の標準誤差は s を材料にして計算する。s が大きいほど、またxの散らばりΣ(x−x̄)²が小さいほど大きくなる。
違いを表で確認
| 比較軸 | 回帰の標準誤差(Residual standard error) | 係数の標準誤差(Std. Error) |
|---|---|---|
| 何を表すか | 残差(データと回帰直線のずれ)のばらつき | 係数の推定値が標本ごとにぶれる大きさ |
| 式(単回帰) | s = √(SSE ÷ (n−2)) | se(b) = s ÷ √Σ(x−x̄)² |
| 単位 | 目的変数と同じ単位 | 目的変数の単位 ÷ 説明変数の単位 |
| 出力での場所 | Rのsummaryの下部(Residual standard error: … on … degrees of freedom) | 係数表の Std. Error の列 |
| 使う場面 | 予測のはずれ具合の目安にする | t値・p値・信頼区間を求める |
| xの散らばりの影響 | 残差平方和と自由度が同じなら変わらない | Σ(x−x̄)² が大きいほど小さくなる |
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出力の「標準誤差」を、傾きの検定にそのまま使う人
下部の Residual standard error は、傾きの検定には使いません。傾きのt値は、係数表の推定値を係数表の Std. Error で割って求めます。
Residual standard error を、傾きの推定誤差だと読む人
Residual standard error は残差のばらつきで、傾きの推定のぶれではありません。傾きのぶれは Std. Error の列を見ます。
データを増やせば Residual standard error も小さくなると考える人
データを増やしても、直線のまわりの散らばりが同じなら s はほぼ変わりません。小さくなるのは、Σ(x−x̄)² が大きくなって係数の標準誤差が下がる側です。
具体例で使い分ける
例 1
6点データで2つの標準誤差を手計算する
xが1〜6、yが3・5・4・7・8・9の6点データです(架空のデータ)。傾きb=1.2、切片1.8、x̄=3.5、Σ(x−3.5)²=17.5です。
- 予測値は3.0・4.2・5.4・6.6・7.8・9.0です。残差は0・0.8・−1.4・0.4・0.2・0で、合計は0になります。
- 残差平方和は0.64+1.96+0.16+0.04=2.80です。分母はn−2=4なので、平均平方は0.7、Residual standard error は s=√0.7≒0.837です。
- 傾きの標準誤差は se(b)=0.837÷√17.5=√(0.7÷17.5)=0.2です。t値は1.2÷0.2=6.0になります。
- 自由度4の両側5%の臨界値は2.776です。6.0は2.776より大きいので、5%水準では傾きが0という帰無仮説を棄却できます。傾きの95%信頼区間は1.2±2.776×0.2で、約0.65〜1.76です。
結論: s≒0.837は残差の散らばり、se(b)=0.2は傾きのぶれです。検定と信頼区間には、後者を使います。
例 2
xの散らばりを広げると、どちらが変わるか
上と同じ s≒0.837 のまま、xの散らばりΣ(x−x̄)² が17.5から70に増えたとします(仮の設定)。
- Residual standard error は、残差平方和と自由度で決まるので、この設定では0.837のままです。
- 傾きの標準誤差は 0.837÷√70≒0.1 になります。17.5のときの0.2の半分です。
- 同じ傾き1.2なら、t値は1.2÷0.1=12に上がります。
結論: xを広い範囲で取ると、直線のまわりの散らばりが同じでも、傾きの推定はより安定します。変わったのは係数の標準誤差だけです。
問題文から答えを選ぶ手順
- 1
どの値を知りたいかを決める
データの散らばり具合なら Residual standard error、係数の推定の確かさなら係数表の Std. Error を見ます。
- 2
検定・区間推定は係数表で行う
t値は 推定値 ÷ Std. Error です。信頼区間は 推定値 ± t臨界値 × Std. Error です。
- 3
自由度を確かめる
どちらも自由度は n−推定した係数の個数です。単回帰ではn−2を使います。
- 4
大きさの理由を分けて考える
Std. Error が大きいのは、s が大きいか、xの散らばりが小さいかのどちらか、または両方です。
試験での見分け方
- 1Residual standard error は残差のばらつき。s = √(SSE ÷ (n−2))。
- 2係数表の Std. Error は推定値のぶれ。傾きは se(b) = s ÷ √Σ(x−x̄)²。
- 3傾きのt値は、係数表の推定値 ÷ 係数表の Std. Error。
- 4Residual standard error は検定のt値には直接使わず、se(b) を計算する材料にする。
- 5単回帰の自由度は n−2。Residual standard error も傾きの検定も同じ自由度を使う。
誤答しやすい選択肢
残差平方和をnで割ってsを求める
修正: 回帰で推定した係数の個数だけ自由度が減ります。単回帰ではn−2で割ります。n=6なら分母は4です。
se(b) の計算で Σ(x−x̄)² の平方根を取り忘れる
修正: se(b)=s÷√Σ(x−x̄)² です。分母は平方根です。√17.5≒4.183で割るところを17.5で割ると、0.048になって大きくずれます。
Residual standard error をt検定の分母に使う
修正: 傾きの検定の分母は係数の標準誤差 se(b) です。s は se(b) を求める途中の値です。
Std. Error が小さければ当てはまりが良いと読む
修正: Std. Error が小さい原因は、sが小さいことだけではありません。xの散らばりが大きいことでも小さくなります。当てはまりの目安は、Residual standard error や決定係数で見ます。
確認問題
Q1残差平方和が2.8、n=6の単回帰で、Residual standard error はいくつ?
答え: 約0.837
分母はn−2=4で、2.8÷4=0.7です。√0.7≒0.837です。
Q2s≒0.837、Σ(x−x̄)²=17.5のとき、傾きの標準誤差はいくつ?
答え: 0.2
se(b)=0.837÷√17.5≒0.837÷4.183≒0.2です。
Q3傾きb=1.2、傾きの標準誤差0.2のとき、t値はいくつ?
答え: 6.0
t=1.2÷0.2=6.0です。自由度4の両側5%の臨界値2.776より大きくなります。
Q4sが同じで、Σ(x−x̄)²が17.5から70になると、傾きの標準誤差は何倍になる?
答え: 2分の1倍
√70は√17.5の2倍なので、分母が2倍になり、標準誤差は半分になります。
Q5傾きのt値を求めるとき、分母に使うのは Residual standard error と係数表の Std. Error のどちら?
答え: 係数表の Std. Error
t値は 推定値 ÷ その係数の標準誤差です。Residual standard error は、その標準誤差を計算する材料です。
到達チェック
- Residual standard error と係数の標準誤差が別の値だと説明できる
- s=√(SSE÷(n−2)) を計算できる
- se(b)=s÷√Σ(x−x̄)² を計算できる
- t値を 推定値÷Std. Error で求められる
- xの散らばりが大きいほど、傾きの標準誤差が小さくなる理由を説明できる
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よくある質問
QResidual standard error と Std. Error は、何が違う?
Residual standard error は残差のばらつきで、Std. Error は係数の推定値のぶれです。傾きの検定には、係数表の Std. Error を使います。
Q傾きの標準誤差は、どう計算する?
Residual standard error を、Σ(x−x̄)² の平方根で割ります。s=0.837、Σ(x−x̄)²=17.5なら、0.837÷√17.5=0.2です。
QResidual standard error の自由度は、なぜ n−2?
単回帰では切片と傾きの2つの係数を推定しているので、その分だけ自由度が減ります。重回帰ではn−推定した係数の個数です。
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執筆: ミナト編集部(運営者情報を見る)
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