第6章 統計ソフトウェアの活用
統計検定2級のRの出力の読み方(係数表とF統計量)
統計検定2級の公式出題範囲には、統計ソフトウェアの活用として「計算出力を活用できるか」が挙がっています。回帰分析の出力は、係数表、残差標準誤差、決定係数、F統計量が並ぶ形で、どの数字がどの数字から計算されているかを知っていると読み取りが速くなります。Rのsummary(lm)の出力は、推定値 ÷ 標準誤差 = t値、t値の2乗 = F統計量(説明変数が1つのとき)という数字のつながりで読めます。
このページは、架空の小さな出力を1つ用意して、係数表、下の3行、分散分析表を、数字を追いながら読み解きます。
この記事の目次
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結論
- 係数表のt値は、推定値(Estimate)を標準誤差(Std. Error)で割った値。p値は両側p値で、有意水準と比べて判断する
- Residual standard errorは、残差の平均平方の平方根。自由度は 標本サイズ − 係数の個数
- 説明変数が1つの単回帰では、F統計量は傾きのt値の2乗に等しく、p値も同じになる
- 分散分析表では、Mean Sq = Sum Sq ÷ Df、F値 = 回帰のMean Sq ÷ 残差のMean Sq
- 信頼区間は平均の不確実さ、予測区間は新しい1個の観測値まで含むので、同じxと同じ水準なら予測区間のほうが広い
例にする出力
標本サイズ12の単回帰 lm(y ~ x) で、次の出力が得られたとします(このページの架空の例です。実際の試験の出力ではありません)。
Coefficients:
Estimate Std. Error t value Pr(>|t|)
(Intercept) 4.0000 2.0000 2.000 0.07339
x 2.5000 0.5000 5.000 0.00054
Residual standard error: 1.8 on 10 degrees of freedom
Multiple R-squared: 0.7143, Adjusted R-squared: 0.6857
F-statistic: 25 on 1 and 10 DF, p-value: 0.00054以降は、この出力の数字が互いにどうつながっているかを順に確かめます。
係数表の読み方
R公式のsummary.lm文書は、係数表を、推定値、標準誤差、t統計量、対応する両側p値の列を持つ行列と定義しています。各行が回帰式の項に対応し、(Intercept) が切片、x が傾きです。
- 回帰式は ŷ = 4.0 + 2.5 × x。xが1増えると、yは平均で2.5増えると読む
- 傾きのt値は 2.5 ÷ 0.5 = 5.0、切片のt値は 4.0 ÷ 2.0 = 2.0
- 自由度は 12 − 2 = 10。両側p値は、傾きが0.00054、切片が0.07339
- 有意水準5%なら、傾きは帰無仮説「傾き = 0」を棄却できる。切片は0.07339 > 0.05なので、5%では棄却できない
p値が有意水準より大きいことは、「係数が0である」と証明されたことではなく、このデータでは0でないとまでは言えない、ということです。検定の手順は仮説検定のページ、回帰係数の標準誤差の計算は単回帰分析のページで確認できます。
下の3行の読み方
係数表の下には、モデル全体の当てはまりを示す3行が出ます。
- Residual standard error: 1.8 on 10 degrees of freedom は、残差の大きさの目安と自由度。1.8² × 10 = 32.4 が残差平方和になる
- Multiple R-squared: 0.7143 は決定係数。単回帰では t² ÷ (t² + 自由度) = 25 ÷ 35 ≒ 0.7143 とも計算できる
- Adjusted R-squared: 0.6857 は自由度調整済み決定係数。1 − (1 − 0.7143) × 11 ÷ 10 ≒ 0.6857
- F-statistic: 25 on 1 and 10 DF は、分子の自由度が1、分母の自由度が10。傾きのt値 5.0 の2乗 = 25 と一致し、p値も同じ0.00054
説明変数が1つのときは、傾きのt検定とモデル全体のF検定は同じ結論になりますが、説明変数が2つ以上の重回帰では、F検定は「すべての傾きが0」を一度に検定するので、個々のt値とは別の検定です。用語は決定係数とF統計量の用語集で確認できます。重回帰の調整済み決定係数は重回帰分析のページに計算例があります。
分散分析表との対応
R公式のanova.lm文書によると、単一モデルの分散分析表は、式へ項を順に追加したときの残差平方和の減少を各行に示し、各行の平均平方と残差平均平方を比べるF統計量とp値を含みます。同じ例で anova(lm(y ~ x)) を実行したとすると、次の表になります(架空の例)。
Analysis of Variance Table
Response: y
Df Sum Sq Mean Sq F value Pr(>F)
x 1 81.0 81.00 25 0.00054
Residuals 10 32.4 3.24- Residualsの行: 平方和32.4は、前の節の 1.8² × 10。平均平方は 32.4 ÷ 10 = 3.24
- xの行: 平均平方は 81.0 ÷ 1 = 81.00。F値は 81.00 ÷ 3.24 = 25
- 全平方和は 81.0 + 32.4 = 113.4。決定係数は 81.0 ÷ 113.4 ≒ 0.7143 で、summaryの値と一致する
summary(lm)の下の3行と分散分析表は、同じ平方和と自由度から作られているので、どちらか一方の数字から、もう一方の欠けた数字を逆算できます。平方和と平均平方の関係は分散分析のページで確認できます。
信頼区間と予測区間
R公式のpredict.lm文書では、intervalにnone・confidence・predictionを指定でき、levelの既定は0.95です。区間を指定した結果は、fit(予測値)、lwr(下限)、upr(上限)の列で返ります。
- confidence(信頼区間): 特定のxでの平均的な応答の区間
- prediction(予測区間): 同じxで新しく得られる1個の観測値の区間。平均の不確実さに個々のばらつきが加わるので、同じxと同じ信頼水準の信頼区間より常に広い
出力にfit・lwr・uprが2組あり、片方の幅がもう片方より広いときは、広いほうが予測区間です。用語は予測区間と信頼区間の用語集で確認できます。
問題文から読み取る
出力の読み取りでは、次の手順で足りない数字を埋めます。このページの計算例から導いた読み方で、出題を予想するものではありません。
- t値が空欄なら、Estimate ÷ Std. Error で埋める
- 自由度が空欄なら、標本サイズ − 係数の個数(切片を含む)。標本サイズ12の単回帰なら10
- 「有意水準5%で、傾きは0と異なるか」とあれば、傾きの行のp値を0.05と比べる
- F値が空欄なら、回帰のMean Sq ÷ 残差のMean Sq。単回帰ならt値の2乗でも確かめられる
- 表題が z value のときは、summary(glm) のように分散パラメータが固定された族の出力を疑う
統計検定2級の学習に使う書籍(Amazon)
試験範囲を通して読むときの1冊です。読んだ章は、このサイトの章別問題で確かめられます。
よくある質問
統計検定2級で、Rの出力を読む問題は出ますか?
公式の出題範囲表は、統計ソフトウェアの活用の項目に「計算出力を活用できるか、問題解決に活用できるか」を挙げています。Rの出力が出ると明記されているわけではありません。このページの出力は、出題範囲の項目を学ぶための架空の例で、実際の試験の出力や問題を再現したものではありません。
係数表のt値は、どう計算された値ですか?
推定値(Estimate)を標準誤差(Std. Error)で割った値です。この例では、傾きが 2.5 ÷ 0.5 = 5.0、切片が 4.0 ÷ 2.0 = 2.0 です。R公式のsummary.lm文書は、係数表を推定値、標準誤差、t統計量、両側p値の列を持つ行列と定義しています。
p値が小さいとき、どう判断しますか?
p値を、あらかじめ決めた有意水準と比べます。この例の傾きのp値0.00054は、有意水準5%より小さいので、傾きが0であるという帰無仮説を棄却できます。切片のp値0.07339は5%より大きいので、5%では棄却できません。
ロジスティック回帰などのsummary(glm)の係数表は、lmと何が違いますか?
R公式のsummary.glm文書によると、係数表の3列目は、分散パラメータを推定するときはt比、既知または固定のときはz比になり、4列目はそれぞれt分布または標準正規分布にもとづく両側p値です。二項分布とポアソン分布の族では、分散パラメータの既定は1です。
![日本統計学会公式認定 統計検定2級 公式問題集[CBT対応版] の表紙](/_next/image?url=https%3A%2F%2Fm.media-amazon.com%2Fimages%2FP%2F4788920476.09._SCLZZZZZZZ_.jpg&w=256&q=75)