第2章 データ収集と確率
統計検定2級の標本抽出法
統計検定2級の公式出題範囲は、標本抽出法として系統抽出法、層化抽出法、クラスター抽出法、多段抽出法の4つを挙げています。4つは、どの単位を選ぶか、選んだあとに全員を調べるかの2点で見分けられます。
このページは、4つの方法を、1000人の名簿から選ぶ小さな架空の例で比べます。
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結論
- 系統抽出法 = 順に並べた名簿から、無作為な開始点と一定間隔で選ぶ
- 層化抽出法 = 母集団を層に分け、すべての層から一部ずつ選ぶ
- クラスター抽出法 = 一部のクラスターを選び、そのクラスターの全員を調べる
- 多段抽出法 = 一部のクラスターを選び、その中からさらに一部を選ぶ
- 層化とクラスターの違いは「選ばれなかったグループがあるか」で判断する
系統抽出法
系統抽出法は、順序づけた標本抽出枠(名簿)から無作為な開始点を決め、一定間隔ごとに単位を選ぶ方法です。
計算例です(このページの架空のデータです)。1000人の名簿から50人を選びます。
- 間隔は 1000 ÷ 50 = 20
- 最初の1人を、1番から20番の中から無作為に決める。7番に決まったとする
- 選ぶのは 7番、27番、47番、67番、…、987番の50人
無作為に決めるのは開始点だけで、残りは間隔で決まります。用語は系統抽出法の用語集で確認できます。
層化抽出法
カナダ統計局の統計教材は、層化抽出法を、母集団を同質で互いに排他的な層に分け、各層から独立に標本を選ぶ方法と説明しています。層を作る主な理由は抽出の効率を上げることで、関心のある部分集団に十分な標本サイズを確保できる利点もあります。層は、年齢、性別、居住地、所得のように、抽出前にすべての単位で値がわかる変数で作ります。
計算例です(このページの架空のデータです)。1000人の従業員が本社600人と支社400人にいて、本社と支社を層にします。
- 本社の層から60人、支社の層から40人を、それぞれ無作為に選ぶ(この例では層の人数に比例させた)
- 合計100人。支社の人が1人も入らない、という偏りは起こらない
層化抽出法は、すべての層から選ぶ点が決め手です。用語は層化抽出法の用語集で確認できます。
クラスター抽出法
クラスター抽出法は、母集団をクラスターに分けてクラスターを抽出し、選ばれたクラスターの全単位を標本に含める方法です。標本が地理的に広がりすぎると費用が高くなるため、調査費用を下げる目的で使われます。クラスターの例は、工場、学校、選挙区などです。
計算例です(このページの架空のデータです)。50校の高校があり、各校に生徒が200人います。
- 50校の中から5校を無作為に選ぶ
- 選んだ5校の生徒を全員調べる。標本は 5 × 200 = 1000人
- 選ばれなかった45校の生徒は、1人も標本に入らない
カナダ統計局の統計教材は、近くの単位は似る傾向があるため、多くの場合は単純無作為抽出より効率が悪く、少数の大きなクラスターより多数の小さなクラスターを調べるほうがよいと述べています。最終的な標本サイズを完全には制御できない欠点もあります。クラスター抽出法は、効率を上げる方法ではなく、費用を下げる方法です。用語はクラスター抽出法の用語集で確認できます。
多段抽出法
多段抽出法は、まずクラスターを選び、次の段階で選ばれたクラスターの中からさらに単位を抽出する方法です。クラスター抽出法では選んだクラスターの全単位を調べますが、多段抽出法では全単位を調べる代わりに、クラスター内で標本を選びます。
前の節の例を多段にすると、次のようになります(このページの架空のデータです)。
- 第1段: 50校の中から5校を無作為に選ぶ(ここまではクラスター抽出法と同じ)
- 第2段: 選んだ各校の200人から40人ずつを無作為に選ぶ
- 標本は 5 × 40 = 200人。クラスター抽出法の1000人より少ない
第1段でクラスターを選び、第2段で中の単位を選ぶ、と段の数で数えます。用語は多段抽出法の用語集で確認できます。
4つの比較表
| 方法 | 選ぶ単位 | 選んだあと | 覚える点 |
|---|---|---|---|
| 系統抽出法 | 順に並べた名簿から一定間隔で1人ずつ | 選んだ人だけを調べる | 最初の1人を無作為に決めれば、あとは間隔で決まる |
| 層化抽出法 | すべての層から、それぞれ一部の人 | 選んだ人だけを調べる | 層は抽出前に値がわかる変数で作る。部分集団ごとの標本サイズを確保しやすい |
| クラスター抽出法 | 一部のクラスターを丸ごと | 選んだクラスターの全員を調べる | 調査の費用を下げる目的で使う。多くの場合は効率が下がる |
| 多段抽出法 | 一部のクラスター(第1段) | 選んだクラスターの中から、さらに一部を選ぶ | クラスター抽出法の全員調査を、中での抽出に置き換えた形 |
層化抽出法とクラスター抽出法の取り違えを詳しく確認するには、層化抽出法とクラスター抽出法の違いのページが使えます。
問題文から読み取る
問題文の言い回しから、方法を判断できます。このページの例から導いた読み方で、出題を予想するものではありません。
- 「名簿の最初の1人を無作為に決め、以後20人おきに選ぶ」とあれば、系統抽出法
- 「男女、年代などに分け、それぞれから選ぶ」とあれば、層化抽出法
- 「無作為に選んだ学校の生徒全員を調べる」とあれば、クラスター抽出法
- 「無作為に選んだ学校の中から、さらに生徒を無作為に選ぶ」とあれば、多段抽出法
- 「調査費用を下げるため、地域を単位として選ぶ」とあれば、クラスター抽出法(または多段抽出法)の可能性が高い
- 「各部分集団の標本サイズを確保したい」とあれば、層化抽出法
調べなかった対象があるために生じる標本誤差と、回答の誤りなどによる非標本誤差の区別は、標本誤差と非標本誤差の違いで確認できます。
統計検定2級の学習に使う書籍(Amazon)
試験範囲を通して読むときの1冊です。読んだ章は、このサイトの章別問題で確かめられます。
よくある質問
標本抽出法は、統計検定2級の出題範囲に載っていますか?
載っています。公式の出題範囲表は、標本抽出法として系統抽出法、層化抽出法、クラスター抽出法、多段抽出法を挙げています。
層化抽出法とクラスター抽出法は、どこで見分けますか?
選ばれなかったグループがあるかどうかで見分けます。層化抽出法はすべての層から一部の単位を選びます。クラスター抽出法は一部のクラスターだけを選び、選んだクラスターの全単位を調べます。選ばれなかったクラスターの単位は、1つも標本に入りません。
クラスター抽出法を使う理由は何ですか?
調査の費用を下げるためです。標本が地理的に広がりすぎると費用が高くなるため、調査の現場で標本を固まりにして費用を下げます。全単位の名簿がなくても、クラスターの名簿があれば実施できる利点もあります。
無作為に抽出すれば、誤差はなくなりますか?
なくなりません。標本調査では、調べなかった対象があるために標本誤差が生じます。標本は偏りが生じないよう無作為に抽出する必要があります。回答の誤りや未回答による非標本誤差は、全数調査でも生じます。
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