第2章 データ収集と確率
統計検定2級の観察研究と実験研究
統計検定2級の公式出題範囲には、観察研究と実験研究、そして実験の基本的な考え方として処理群と対照群、反復、ブロック化が挙がっています。因果関係を言えるのは、処置をランダムに割り当てた実験研究です。
このページは、2種類の研究の違いと、実験計画の4つの用語を、小さな架空の例で整理します。
この記事の目次
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結論
- 観察研究 = 変数を操作せず記録する。関係は示せても、因果関係は必ずしも示せない
- 実験研究 = 処置をランダムに割り当てる。因果関係の結論を導ける
- ランダムな抽出は一般化の根拠、ランダムな割り当ては因果関係の根拠
- このページで整理する実験計画の用語は、対照群・ランダム化・反復・ブロック化の4つ
- 制御できる妨害要因はブロック化し、制御できないものはランダム化する
観察研究と実験研究
ペンシルベニア州立大学の講義資料は、観察研究を、変数を操作せずに観測や測定を記録する研究と説明しています。実験研究は、処置のランダムな割り当てを伴う研究で、処置がランダムに割り当てられていれば因果関係の結論を導けます。
例です(このページの架空のデータです)。新しい教材の効果を調べます。
- 観察研究: 教材を使っている生徒と使っていない生徒の成績を、そのまま記録して比べる
- 実験研究: 生徒をくじ引きで教材あり群・なし群に分け、成績を比べる
- 観察研究で教材あり群の成績が高くても、「教材のおかげ」とは限らない
生徒が自分で教材を選んだかどうかが、「割り当て」があるかどうかの分かれ目です。詳しい比較は観察研究と実験研究の違いのページで確認できます。用語は観察研究の用語集にあります。
2種類のランダム
同じ講義資料は、ランダムな抽出とランダムな割り当てを別のものだと注意しています。
- ランダムな抽出: 母集団から無作為に標本を選ぶ。結果を母集団へ一般化する根拠になる
- ランダムな割り当て: 実験単位を処置群へ無作為に振り分ける。因果関係の結論の根拠になる
「誰を選ぶか」がランダムな抽出、「選んだ人をどの群に入れるか」がランダムな割り当てです。標本の選び方は標本抽出法4種の違いで確認できます。
交絡変数と潜在変数
講義資料は、潜在変数を、研究に含まれていないが説明変数と結果の両方と関連しうる変数と定義しています。交絡変数は、研究に含まれていて他の変数と関連し、変数間の関係に影響を与える変数です。潜在変数が研究に含まれれば、交絡変数になりえます。
前の節の例では、勉強熱心な生徒ほど新しい教材を選び、成績も高い、という場合の「勉強熱心さ」が当てはまります。処置をランダムに割り当てる実験では、こうした変数が各群へ均等に分かれると想定でき、結果への影響が打ち消されるか小さくなります。ランダムな割り当てが因果関係の根拠になるのは、この働きがあるからです。用語は交絡変数の用語集で確認できます。
対照群・ランダム化・反復
講義資料は、実験計画の原則として対照群、ランダム化、反復を挙げています。ブロック化とあわせた4つを、教材の例で並べます。
| 用語 | 役割 | 教材の例 |
|---|---|---|
| 対照群 | 処置の効果を測る基準になる群 | 新しい教材を使わない群 |
| ランダム化 | 被験者を無作為に群へ分け、意図しない選択バイアスを避ける | くじ引きで教材あり群・なし群に分ける |
| 反復 | 十分な被験者数で、処置間の差を検出しやすくする | 各群に1人ではなく数十人を入れる |
| ブロック化 | 制御できる妨害要因を一定にした均質なブロック内で水準を比べる | 学年ごとに分け、学年の中で教材あり・なしを比べる |
医学実験のプラセボは、交絡を防ぐための対照処置です。対照群は、処置を受けた群の結果と比べるための基準になる群です。用語は対照群と反復の用語集で確認できます。
ブロック化
NISTのハンドブックは、測定結果に影響するが主たる関心ではない要因を妨害要因と呼び、制御できる妨害要因にはブロック化を使うと述べています。ブロック化の基本は、妨害要因を一定に保った均質なブロックを作り、ブロック内で水準の効果を比べることです。担当者、実施時刻、室温が妨害要因の例として挙げられています。
教材の例では、学年によって成績の水準が違うとします。
- 学年を妨害要因として、1年・2年・3年の3つのブロックを作る
- 各ブロックの中で、くじ引きにより教材あり群・なし群に分ける
- 比較は学年の中で行うので、学年の違いが教材の効果に混ざらない
NISTは、制御できるものはブロック化し、制御できないものはランダム化する、という一般則を示しています。ブロックの中でさらにランダムに割り当てる形が、ランダム化ブロック計画です。用語はブロック化の用語集で確認できます。違いの詳しい整理はランダム化とブロック化の違いのページにあります。
問題文から読み取る
問題文の言い回しから、使う用語を判断できます。このページの例から導いた読み方で、出題を予想するものではありません。
- 「すでに喫煙している人と、していない人の健康状態を記録する」とあれば、観察研究
- 「くじ引きで処置群と対照群に分ける」とあれば、ランダムな割り当てのある実験研究
- 「調査結果を母集団全体に当てはめたい」とあれば、ランダムな抽出が根拠
- 「処置の効果に原因があると結論したい」とあれば、ランダムな割り当てが根拠
- 「担当者の違いの影響を取り除くため、担当者ごとに分けて比べる」とあれば、ブロック化
- 「群ごとの被験者を増やして差を検出しやすくする」とあれば、反復
講義資料は、喫煙と肺がんの関係が、喫煙行動を割り当てた実験ではなく観察研究に基づいていたと述べ、実験では倫理が重要になると注意しています。
統計検定2級の学習に使う書籍(Amazon)
試験範囲を通して読むときの1冊です。読んだ章は、このサイトの章別問題で確かめられます。
よくある質問
観察研究では、因果関係はまったく言えませんか?
ペンシルベニア州立大学の講義資料は、観察研究では関係があることは示せても、因果関係は必ずしも示せないと説明しています。処置のランダムな割り当てがない観察研究では、処置は結果と関連していると言えるだけです。
ランダムな抽出とランダムな割り当ては、同じものですか?
別のものです。ランダムな抽出は母集団から標本を無作為に選ぶ方法で、結果を母集団へ一般化する根拠になります。ランダムな割り当ては実験単位を処置群へ無作為に振り分ける方法で、因果関係の結論の根拠になります。
ブロック化とランダム化は、どう使い分けますか?
NISTのハンドブックは、制御できるものはブロック化し、制御できないものはランダム化する、という一般則を示しています。ブロック化で少数の重要な妨害要因の影響を取り除き、残りの妨害要因の混入はランダム化で減らします。
ブロック化は、統計検定2級の出題範囲に載っていますか?
載っています。公式の出題範囲表は、実験の基本的な考え方として処理群と対照群、反復、ブロック化を挙げています。
![日本統計学会公式認定 統計検定2級 公式問題集[CBT対応版] の表紙](/_next/image?url=https%3A%2F%2Fm.media-amazon.com%2Fimages%2FP%2F4788920476.09._SCLZZZZZZZ_.jpg&w=256&q=75)