第4章 標本分布と推定
統計検定2級の中心極限定理と標準誤差(標本平均の確率を求める計算手順)
統計検定2級の公式出題範囲には、標本分布の項目として、標本平均の期待値・分散、大数の法則、中心極限定理、二項分布の正規近似、連続修正などが並んでいます。標本平均の確率を求める問題は、標準誤差σ/√nを求め、標準化して、標準正規分布表を読む、の流れ(下の4ステップ)で解けます。
このページは、母平均50・母標準偏差12の母集団から標本をとる計算例と、二項分布を正規分布で近似する計算例を、数字を追いながら解きます。
この記事の目次
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結論
- 標本サイズが大きくなると、標本平均の分布は元の分布によらず近似的に正規分布になる(中心極限定理)
- その正規分布の中心は母平均μ、標準偏差(標準誤差)はσ/√n
- 標本平均の確率は z = (標本平均 − μ) ÷ (σ/√n) で標準化して、標準正規分布表から読む
- 標準誤差は標本平均の分散σ²/nの平方根。分散と標準誤差を取り違えない
- 二項分布の正規近似では、端点を0.5ずらす連続修正を行う
4ステップの流れ
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 標準誤差を求める | 標本平均の標準偏差は σ/√n。母標準偏差σを標本サイズの平方根で割る |
| 2. 標準化する | z = (標本平均 − 母平均μ) ÷ (σ/√n)。標本平均を標準正規分布の値に直す |
| 3. 標準正規分布表で確率を読む | zに対応する上側確率(または下側確率)を表から読む |
| 4. 問いに合わせて答える | 「超える確率」は上側確率、「以下の確率」は下側確率。両側なら2倍する場合もある |
一次資料: 統計検定センター「統計検定2級 出題範囲」、NIST/SEMATECH e-Handbook of Statistical Methods
標本平均の確率の計算例
NISTが説明する中心極限定理では、標本サイズが大きくなると標本平均の標本分布は近似的に正規分布となり、その中心は母平均μ、標準偏差すなわち標準誤差はσ/√nに近づきます。
計算例です(このページの架空のデータです)。母平均50、母標準偏差12の母集団から、大きさ36の標本をとります。標本平均が54を超える確率を求めます。
- 標準誤差: 12 ÷ √36 = 12 ÷ 6 = 2
- 標準化: z = (54 − 50) ÷ 2 = 2
- 標準正規分布表: z = 2 の上側確率は約0.0228
標本平均が54を超える確率は約0.0228、つまり約2.3%です。ここで割る値は、母標準偏差の12ではなく標準誤差の2です。12で割ってしまう間違いが典型です。用語は標準誤差、標準化の用語集で確認できます。表の読み方は統計数値表のページで練習できます。
標本サイズと標準誤差
NBS Special Publication 747(現在はNISTが公開)では、独立な測定値の母分散をσ²、標本サイズをnとすると、標本平均の分散はσ²/n、標準誤差はσ/√nです。同じ母標準偏差12のまま、標本サイズを変えると次のようになります。
| 標本サイズ n | 標準誤差 12 ÷ √n | 読み方 |
|---|---|---|
| 9 | 12 ÷ 3 = 4 | 標本平均は母平均50のまわりで大きくばらつく |
| 36 | 12 ÷ 6 = 2 | 9のときの半分 |
| 144 | 12 ÷ 12 = 1 | 36のときの半分。標本サイズは4倍必要 |
標準誤差を半分にするには、標本サイズを4倍にします。標本サイズを2倍にしても、標準誤差は半分にならず、約0.71倍(1÷√2)にしかなりません。分散で答える問題なら、標本サイズ36のとき σ²/n = 144 ÷ 36 = 4 で、標準誤差2の2乗です。
二項分布の正規近似と連続修正
二項分布は、とびとびの値(0, 1, 2, …)をとる離散分布です。これを連続分布の正規分布で近似するとき、端点を0.5ずらす補正を連続修正と呼びます。Penn State STAT 414 Lesson 28は、P(Y=5)をP(4.5<Y<5.5)、P(7<Y≦9)をP(7.5<Y<9.5)のように置き換えると説明しています。
計算例です(このページの架空のデータです)。コインを100回投げて表が出る回数をYとします。Yは二項分布で、平均はnp=100×0.5=50、分散はnp(1−p)=100×0.5×0.5=25、標準偏差は5です。表が55回以下になる確率を、連続修正つきの正規近似で求めます。
- 連続修正: P(Y ≦ 55) を P(Y < 55.5) とみなす
- 標準化: z = (55.5 − 50) ÷ 5 = 1.1
- 標準正規分布表: z = 1.1 の下側確率は約0.8643
表が55回以下になる確率は、約0.864です。連続修正をしないで 55 のまま標準化すると z=1 となり、約0.8413になります。修正の有無で答えが変わるので、問題文に「連続修正を行う」とあれば0.5を足し引きします。
問題文から読み取る
問題文の言い回しから、何を計算するかを読み取れます。このページの計算例から導いた読み方で、出題を予想するものではありません。
- 「標本平均が〇〇を超える確率」とあれば、標準誤差σ/√nで標準化して上側確率を読む
- 「個々の値が〇〇を超える確率」とあれば、標準誤差ではなく母標準偏差σで標準化する
- 「標本サイズを4倍にすると標準誤差は」とあれば、答えは半分
- 「標本平均の分散」とあれば σ²/n、「標準誤差」とあれば σ/√n
- 「二項分布を正規分布で近似し、連続修正を行う」とあれば、端点を0.5ずらしてから標準化する
- 「標本サイズが小さいので、標本平均は正確に正規分布に従う」という文は、元の分布が正規分布でない限り成り立たない
統計検定2級の学習に使う書籍(Amazon)
試験範囲を通して読むときの1冊です。読んだ章は、このサイトの章別問題で確かめられます。
よくある質問
中心極限定理は、統計検定2級の公式出題範囲にありますか?
あります。統計検定センターの2級の出題範囲表は、標本分布の項目に、標本平均の期待値・分散、大数の法則、中心極限定理、二項分布の正規近似、連続修正などを並べています。
標準誤差と標準偏差は、何が違いますか?
標準偏差は個々のデータのばらつき、標準誤差は標本平均のばらつきです。母標準偏差σのとき、標本サイズnの標本平均の標準誤差はσ/√nです。
標準誤差と、標本平均の分散は同じ値ですか?
同じ値ではありません。標本平均の分散はσ²/nで、標準誤差はその平方根のσ/√nです。分散を答える問題で√をかけ忘れる、または標準誤差を答える問題で√を取り忘れる間違いに注意してください。
元のデータが正規分布でなくても、標本平均は正規分布に従いますか?
標本サイズが大きくなると、標本平均の分布は元の分布によらず近似的に正規分布になる、というのが中心極限定理です。近似なので、標本サイズが小さいときには正規分布とのずれが残ります。
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