用語比較
和の期待値と和の分散の違い|X+Yは足せるが分散は条件つき(統計検定2級)
確率変数XとYを足したX+Yの期待値は、E(X)+E(Y)です。これは独立でなくても成り立ちます。ところが分散は、Var(X)+Var(Y)に共分散の項が加わり、独立(無相関)のときだけ分散の和になります。
統計検定センターの2級の出題範囲表は、確率変数の項目に「確率変数の和と差(同時分布、和の期待値・分散)」と「2変数の共分散・相関」を挙げています。和と差の期待値・分散は、計算問題の定番です。
このページは、差の分散を引き算してしまう人や、独立の条件を忘れる人向けです。数値を決めた例とサイコロの例で、足せる量と足せない量を手計算で比べます。
この記事の目次
この記事の根拠と出典
各セクションの見出しの下に、公式資料で確認した内容か編集部の整理かをラベルで示しています。 試験日・料金・申込条件・試験方式は変わることがあるため、申込前に公式サイトで確認してください。統計検定2級の一次情報確認日: 2026-10-09。
結論
和の期待値
E(X+Y)=E(X)+E(Y)。独立かどうかに関係なく成り立つ(期待値の線形性)。
和の分散
Var(X+Y)=Var(X)+Var(Y)+2Cov(X,Y)。独立(無相関)ならCovが0で、分散の和になる。
差の分散
Var(X−Y)=Var(X)+Var(Y)−2Cov(X,Y)。独立なら、差でも分散は足す。
違いを表で確認
| 比較軸 | 和の期待値 | 和の分散 |
|---|---|---|
| 条件 | 和の期待値:条件なしで足せる | 和の分散:独立(無相関)のときだけ単純に足せる |
| 共分散の項 | 期待値の式に共分散は出ない | 分散の式に2Cov(X,Y)が入る |
| 差のとき | E(X−Y)=E(X)−E(Y)と引く | Var(X−Y)は独立なら足す(引かない) |
| 定数倍 | E(aX)=aE(X) | Var(aX)=a²Var(X) |
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差の分散をVar(X)−Var(Y)と計算してしまう人
差のときも、独立なら分散は足します。分散は2乗の量なので、Yの符号が逆でも2乗すると正に戻ります。
独立かどうかを確かめずに分散を足している人
同じ値を使う、片方がもう片方から決まるなど、共分散が0でないときは2Cov(X,Y)の項が必要です。
2Xの分散を、Xと同じ分布の独立なXを足したものと同じだと考える人
2Xは同じ確率変数を2回使うので、分散は4倍です。独立な2個の和の2倍ではありません。
具体例で使い分ける
例 1
独立な2変数の和と差を計算する
XとYは独立で、E(X)=3・Var(X)=4・E(Y)=5・Var(Y)=9とします(架空の値)。
- 和の期待値は3+5=8、差の期待値は3−5=−2です。
- 独立なので共分散は0です。和の分散は4+9=13です。
- 差の分散も4+9=13です。4−9=−5にはなりません。分散は負にならないので、引くとおかしいと気づけます。
結論: 期待値は引き算、分散は足し算です。差でも分散が13になる点を覚えます。
例 2
共分散が正のときの和と差の分散
同じXとYで、共分散Cov(X,Y)=3とします(架空の値)。
- 期待値は変わらず、E(X+Y)=8、E(X−Y)=−2です。
- 和の分散は4+9+2×3=19です。
- 差の分散は4+9−2×3=7です。
結論: 同じ向きに動く2変数は、和では分散が大きく、差では小さくなります。独立のときの13と比べると、19と7に分かれます。
例 3
サイコロで、独立な2個の和と2倍を比べる
サイコロ1個の目をXとします。期待値は3.5、Xの2乗の期待値は91÷6、分散は91÷6−3.5²=35÷12≒2.917です。
- 独立な2個の目の和は、期待値が3.5+3.5=7、分散が35÷12×2=35÷6≒5.83です。
- 同じ1個の目を2倍した2Xは、期待値が2×3.5=7で、和と同じです。
- 2Xの分散は2²×35÷12=35÷3≒11.67で、独立な2個の和の2倍です。
結論: 期待値は同じ7でも、分散は5.83と11.67に分かれます。2個目が1個目と完全に連動すると、分散は独立な場合の2倍になります。
問題文から答えを選ぶ手順
- 1
求めたいのが期待値か分散かを分ける
期待値なら、独立かどうかを気にせず足し引きできます。
- 2
分散なら、独立か共分散の値があるかを確認する
独立(または共分散が0)なら、和でも差でも分散を足します。
- 3
共分散が与えられているなら、2Cov(X,Y)の符号を決める
和なら+2Cov、差なら−2Covです。
- 4
定数倍があれば、分散は2乗してから足す
Var(aX)=a²Var(X)なので、2Xなら4倍、−Yなら1倍です。
試験での見分け方
- 1期待値の和は、独立でなくても期待値の和になる。
- 2和の分散が分散の和になるのは、無相関のとき(独立なら無相関)。
- 3差の分散は、独立なら分散の和。引き算はしない。
- 4定数倍の分散は、定数の2乗倍。
- 5独立は無相関の十分条件で、必要条件ではない。
誤答しやすい選択肢
差の分散をVar(X)−Var(Y)にする
修正: 独立ならVar(X−Y)=Var(X)+Var(Y)です。例では4と9から13になり、−5ではありません。
独立でないのに分散を足す
修正: 共分散が3のとき、和の分散は13でなく19です。2Cov(X,Y)の項が必要です。
Var(2X)を2Var(X)とする
修正: 定数倍の分散は2乗倍です。サイコロの例では、2Xの分散は2×35÷12でなく4×35÷12です。
期待値の和にも独立の条件が必要だと考える
修正: 和の期待値は、独立でなくても期待値の和です。条件が必要なのは分散の方です。
確認問題
Q1XとYが独立で、E(X)=3・E(Y)=5のとき、E(X−Y)は?
答え: −2
期待値は引き算なので、3−5=−2です。
Q2XとYが独立で、Var(X)=4・Var(Y)=9のとき、Var(X−Y)は?
答え: 13
独立なら差でも分散は足すので、4+9=13です。
Q3Var(X)=4・Var(Y)=9・Cov(X,Y)=3のとき、Var(X+Y)は?
答え: 19
4+9+2×3=19です。
Q4同じ条件で、Var(X−Y)は?
答え: 7
4+9−2×3=7です。
Q5Var(X)=35÷12のとき、Var(2X)は?
答え: 35÷3(約11.67)
定数倍は2乗倍なので、4×35÷12=35÷3です。
到達チェック
- 和の期待値が独立の条件なしに足せる理由を言える
- 和と差の分散の式を、共分散の符号まで含めて書ける
- 独立ならば差でも分散を足すと説明できる
- Var(aX)=a²Var(X)を使える
- 独立が無相関の十分条件であることを説明できる
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よくある質問
Q和の期待値は、独立でないと足せない?
独立でなくても、E(X+Y)=E(X)+E(Y)です。期待値の線形性により、条件なしで成り立ちます。
Q和の分散が分散の和になるのは、どんなとき?
XとYが無相関のときです。独立な確率変数は常に無相関なので、独立でも成り立ちます。ただし独立は十分条件で、必要条件ではありません。
Q差の分散は、なぜ引き算にならない?
独立ならVar(X−Y)=Var(X)+Var(Y)です。例では4と9から13になります。共分散があるときは、4+9−2Cov(X,Y)です。
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執筆: ミナト編集部(運営者情報を見る)
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