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第5章 仮説検定

統計検定2級の2つの母比率の差の検定

統計検定2級の公式出題範囲には、仮説検定の項目に母比率の差の検定があります。このページは、2つの群の割合に差があるかを、z統計量で最後まで計算します。ポイントは、2群の成功数を合計して求めた比率(プールした標本比率)で標準誤差を作ることです。

データはすべて架空です。2つの群の「はい」の人数と、群の人数から検定します。

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結論

  1. 帰無仮説は「2つの母比率は等しい」
  2. プールした標本比率は、(x1+x2)÷(n1+n2)
  3. z=(p1−p2)÷√( p(1−p)(1/n1+1/n2) )
  4. 両側検定は|z|をz(1−α/2)と、片側検定はzをz(1−α)と比べる
  5. 標本が小さいときは、正規近似でなくフィッシャーの正確確率検定を使う

例題の設定と仮説

新しい案内を見たA群と、見ていないB群で、申し込んだ人の割合に差があるかを調べます。各群の標本比率は「申し込んだ人数÷群の人数」です。

群人数 n申し込んだ人 x標本比率 x÷n
A群200620.31
B群150330.22

帰無仮説は「A群とB群の母比率は等しい」、対立仮説は「母比率が異なる」(両側)です。後半では「A群の方が高い」(片側)も扱います。仮説の立て方は仮説検定のページで確かめられます。

プールした標本比率を求める

NISTのハンドブックは、2群の不良の数x1、x2と標本サイズn1、n2から、p=(x1+x2)÷(n1+n2)を求めます。帰無仮説が正しければ母比率は共通の1つなので、2群をひとまとめにして推定する考え方です。

  1. 成功数の合計:62+33=95
  2. 標本サイズの合計:200+150=350
  3. プールした標本比率:95÷350≒0.2714

プールした標本比率は約0.2714で、2つの標本比率0.31と0.22の間に入ります。大きい群の比率に近づくので、200人のA群の0.31寄りの値です。

標準誤差とz統計量を求める

z統計量は、標本比率の差を標準誤差で割った値です。標準誤差は √( p(1−p)(1/n1+1/n2) ) で求めます。

  1. p(1−p):0.2714×0.7286≒0.19776
  2. 1/n1+1/n2:1/200+1/150≒0.011667
  3. 標準誤差:√(0.19776×0.011667)≒√0.0023071≒0.04803
  4. 標本比率の差:0.31−0.22=0.09
  5. z:0.09÷0.04803≒1.874

検定統計量はz≒1.874です。標本比率の差0.09は、標準誤差の約1.9個分にあたります。

両側検定と片側検定で判定する

NISTのハンドブックは、両側検定では|z|を正規分布のz(1−α/2)と比べ、片側検定(対立仮説がp1>p2)ではzをz(1−α)と比べます。NISTの標準正規分布表では、p=0.975の値が1.960、p=0.950の値が1.645です。有意水準5%では、次のようになります。

検定対立仮説臨界値p値(約)5%での判定
両側母比率が異なる1.960(1.874<1.960)0.061棄却できない
片側A群の母比率が高い1.645(1.874>1.645)0.0305棄却する

同じz≒1.874でも、両側では棄却できず、片側では棄却できます。片側のp値は両側の半分です。ただし、データを見てから片側に変えるのは、結果に合わせて仮説を選ぶことになります。仮説は、データを見る前に問題の目的から決めます。p値と有意水準の関係はp値と有意水準のページにまとめています。

プールしない式との違い

各群の比率をそのまま使った標準誤差 √( p1(1−p1)/n1 + p2(1−p2)/n2 ) だと、この例では 0.04705、z≒1.913 になります。プールした式のz≒1.874と少し違いますが、どちらも両側の臨界値1.960には届きません。

NISTの検定の式は、母比率が等しいという帰無仮説の下で標準誤差を作るので、プールした標本比率を使います。このページもその式を基準にします。選択肢に両方の式が並ぶときは、帰無仮説の下で標準誤差を作っているかどうかで見分けます。

この例では、z²≒3.511 です。同じ表を2×2の独立性の検定にかけた連続性補正なしのカイ二乗統計量も3.511になり、一致します。2×2表の独立性の検定はカイ二乗検定のページで扱っています。

標本が小さいとき

z統計量は、正規分布で近似できる大きさの標本が前提です。NISTのハンドブックは、小標本では、2つの独立な群が「成功と失敗」の2つの分類に分かれるデータについて、2×2表を使うフィッシャーの正確確率検定を勧めています。人数が数人ずつの表で、このページのz統計量をそのまま当てはめるのは避けます。

問題文から読み取る

このページの計算例から導いた読み方です。出題を予想するものではありません。

  • 「2つの母比率が等しいという帰無仮説」とあれば、成功数を合計したプールした標本比率で標準誤差を作る
  • 「A群の方が高いか」とあれば片側検定、「差があるか」とあれば両側検定
  • 有意水準5%の両側検定の臨界値は1.96、片側検定は1.645
  • プールした標本比率は、2つの標本比率の間の値になる。範囲の外に出た結果は計算ミス

よくある質問

母比率の差の検定は、統計検定2級の出題範囲にありますか?

あります。統計検定センターの2級の出題範囲表は、仮説検定の項目に母平均の差の検定、母分散の比の検定、母比率の差の検定を挙げています。

なぜ2群の成功数を合計した比率を使うのですか?

検定では「2つの母比率は等しい」という帰無仮説が正しいと仮定して標準誤差を作るためです。等しいなら共通の比率が1つあるので、2群の成功数の合計を標本サイズの合計で割った値で推定します。NISTのハンドブックの式も、この合計した比率を使います。

片側検定と両側検定は、どう選びますか?

対立仮説の向きで選びます。「差がある」なら両側、「A群の方が高い」のように向きが決まっているなら片側です。NISTのハンドブックは、両側では|z|をz(1-α/2)と、片側ではzをz(1-α)と比べます。このページの例では、同じz=1.874でも両側では棄却できず、片側では棄却できます。

標本が小さいときはどうしますか?

NISTのハンドブックは、小標本には2×2表のフィッシャーの正確確率検定を勧めています。z統計量の正規近似は、標本が十分大きいときの方法です。

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執筆: ミナト編集部(運営者情報を見る)