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第5章 仮説検定

統計検定2級の検出力と第2種の過誤

統計検定2級の出題範囲の仮説検定には、第1種の過誤、第2種の過誤、検出力が入っています。このページは、母標準偏差が既知の平均の検定を例に、検出力を実際に計算し、標本サイズや有意水準で値がどう動くかを確かめます。検出力は 1−β で、帰無仮説が偽のときに正しく棄却できる確率です。

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結論

  1. 検出力は、帰無仮説が偽のとき正しく棄却できる確率で、1−β と表す
  2. βは、特定の対立仮説(たとえば真の平均が54)を決めて初めて計算できる
  3. 標本サイズを増やすと標準誤差が小さくなり、検出力が上がる
  4. 有意水準αを小さくすると、検出力は下がる(αとβは引き換えの関係)
  5. 必要な標本サイズは、αとβと検出したい差と標準偏差から決まる

αとβと検出力の関係

NIST/SEMATECH e-Handbookは、有意水準αを、真の帰無仮説を棄却する危険として扱います。βは、母平均がμ+δのとき、偽の帰無仮説を受け入れる危険です。ここでδは、検出したい差(シフト)です。

用語起きること確率
第1種の過誤(α)帰無仮説が真なのに棄却する有意水準α(例:0.05)
第2種の過誤(β)帰無仮説が偽なのに棄却しないβ(特定の対立仮説のもとで計算する)
検出力帰無仮説が偽のとき、正しく棄却できる1−β

第1種と第2種の過誤の違いは仮説検定のページ、用語は検出力の用語集にあります。

標本サイズ25と100で検出力を計算する

次の設定で考えます。数値は説明用に作った架空の例です。

  • 帰無仮説は「母平均=50」、対立仮説は「母平均≠50」(両側検定)
  • 母標準偏差は10で既知、有意水準は5%(臨界値1.96)
  • 真の平均は54(検出したい差は4)

標本サイズ25のとき、標準誤差は 10÷5=2 です。真の平均が54なら、標本平均の中心は帰無仮説の50から標準誤差2つ分ずれています。検定統計量の分布が2だけ右にずれるので、検出力は P(Z>1.96−2)+P(Z<−1.96−2) です。右の項は P(Z>−0.04)≒0.516、左の項はほぼ0なので、検出力は約0.516、βは約0.484になります。

標本サイズ100のときは、標準誤差が1になり、ずれは標準誤差の4倍です。検出力は P(Z>1.96−4)=P(Z>−2.04)≒0.979、βは約0.021です。

標本サイズ標準誤差ずれ(標準誤差の何倍か)検出力β
2510÷5=24÷2=2倍約0.516約0.484
5010÷√50≒1.414約2.83倍約0.807約0.193
10010÷10=14÷1=4倍約0.979約0.021

標本サイズを4倍にすると標準誤差が半分になり、検出力は約0.52から約0.98に上がります。標本サイズ25では、真の平均が54でも、見逃す確率が約半分あることになります。

検出力を左右する3つの条件

  • 標本サイズ:増やすと標準誤差が小さくなり、検出力が上がる(上の表)
  • 検出したい差:大きいほど見つけやすい。真の平均が54でなく52なら、同じ標本サイズでも検出力は下がる
  • 有意水準α:5%から1%にすると臨界値が1.96から2.576に上がり、標本サイズ25の検出力は約0.516から約0.282に下がる

第1種の過誤を減らすと、同じデータでは第2種の過誤が増えます。αを小さくしたうえで検出力も保ちたいときは、標本サイズを増やします。有意水準そのものの意味はp値と有意水準のページで整理しています。

必要な標本サイズの求め方

NISTは、母標準偏差が既知のときの最小の標本サイズを、両側検定で N=(z(1−α/2)+z(1−β))²×(σ÷δ)²、片側検定で N=(z(1−α)+z(1−β))²×(σ÷δ)² と示しています。

上の設定で、検出力0.80を目指します。z(0.975)=1.96、z(0.80)≒0.8416、σ÷δ=10÷4=2.5 なので、N=(1.96+0.8416)²×2.5²≒7.849×6.25≒49.06 です。標本サイズは整数なので切り上げて50になります。標本サイズ49では検出力が約0.7995で、0.80に届きません。

NISTは、この式に母標準偏差が既知であることが前提になると述べています。標準偏差が分からないときは、過去の実験などの最良の推定値で代用します。

問題文から読み取る

このページの計算例から導いた読み方です。出題を予想するものではありません。

  • 「帰無仮説が偽なのに棄却しない確率」とあれば、第2種の過誤の確率β
  • 「帰無仮説が偽のとき棄却できる確率」とあれば、検出力(1−β)
  • 「標本サイズを増やすと検出力が下がる」という選択肢は誤り(上がる)
  • 「αを小さくすると、βも小さくなる」という選択肢は誤り(同じデータではβは大きくなる)
  • 「βは帰無仮説だけで決まる」という選択肢は誤り(特定の対立仮説を決めて計算する)

よくある質問

検出力とは何ですか?

帰無仮説が偽のとき、正しく帰無仮説を棄却できる確率で、1−β で表します。βは第2種の過誤の確率です。NISTのハンドブックは、βを特定の対立仮説に対して計算するものとしています。

検出力を上げるにはどうすればよいですか?

標本サイズを増やす、検出したい差を大きく設定する、有意水準αを大きくする、のいずれかです。このページの計算例では、標本サイズを25から100に増やすと、検出力が約0.52から約0.98に上がります。母標準偏差が小さいことも、同じ向きに働きます。

有意水準を5%から1%にすると、検出力はどうなりますか?

下がります。このページの設定で標本サイズ25のとき、検出力は約0.516から約0.282になります。第1種の過誤を抑えると、第2種の過誤が増える関係です。

統計検定2級の範囲に第2種の過誤と検出力はありますか?

このサイトの2級の出題範囲の整理では、仮説検定の項目に「第1種の過誤、第2種の過誤、検出力」が入っています。最新の出題範囲は、受験前に統計検定の公式ページで確認してください。

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執筆: ミナト編集部(運営者情報を見る)