AI資格ドリル
資格を選ぶ↓

第1章 データの記述と要約(散布図と相関)

統計検定2級の層別とシンプソンのパラドックス

統計検定2級の公式出題範囲には、散布図と相関の項目に「層別した散布図」と「みかけの相関(擬相関)」があります。このページは、全体では右下がりなのに、層に分けるとどちらも右上がりになる例を、相関係数で最後まで計算します。全体の相関係数だけを見て、変数どうしの関係を決めてはいけない理由が分かります。

データはすべて架空です。相関係数の計算手順は、相関係数のページで先に確認できます。

公式情報の確認

試験日、料金、申込条件、試験方式など変動する情報は、公式情報を最終確認してください。 当サイトの一次情報確認日: 2026-10-09。

試験の出題範囲・実施要項は変動するため、受験前に公式情報を確認してください。

結論

  1. シンプソンのパラドックスは、集団全体の関連が、部分集団に分けると消える、または逆転する現象
  2. 層ごとの相関係数が正でも、層の位置がずれていれば、全体の相関係数は負になる
  3. 割合でも同じで、層ごとに薬Aが上回っても、全体では薬Bが上回ることがある
  4. 原因は、層の大きさ(人数)が群ごとに偏っていること
  5. 全体と層別のどちらを読むかは、計算ではなくデータの背景で決める

相関係数の向きが逆になる例

2つの層A・Bに、5組ずつの(x, y)があります。各層の中ではxが増えるとyも増えます。

層x の値y の値xの平均yの平均相関係数 r
A層1, 2, 3, 3, 48, 9, 9, 10, 112.69.4+0.923
B層6, 7, 8, 8, 92, 3, 3, 4, 57.63.4+0.923
全体(10組)(A層とB層をまとめる)5.16.4−0.764

相関係数は、偏差の積の和÷√(xの偏差平方和×yの偏差平方和)で求めます。

  1. A層:偏差の積の和4.8、xの偏差平方和5.2、yの偏差平方和5.2。r=4.8÷5.2≒0.923
  2. B層:A層と同じ4.8、5.2、5.2。r≒0.923
  3. 全体(平均は5.1と6.4):偏差の積の和−65.4、xの偏差平方和72.9、yの偏差平方和100.4。r=−65.4÷√(72.9×100.4)≒−0.764

各層では相関係数が+0.923なのに、10組をまとめると−0.764になります。層の中の関係と、層どうしの位置のずれが、逆向きに働いた結果です。散布図を層で色分けすると、右上がりの2本の点列が、右下がりに並んで見えます。これが「層別した散布図」を描く意味です。

成功率が逆転する例

同じ現象は、クロス集計表の割合でも起こります。薬Aと薬Bの効いた人数を、症状の重さで分けて比べます。

症状薬A(効いた人÷人数)薬B(効いた人÷人数)
軽症9 ÷ 10 = 90%68 ÷ 80 = 85%
重症36 ÷ 90 = 40%7 ÷ 20 = 35%
全体45 ÷ 100 = 45%75 ÷ 100 = 75%

軽症でも重症でも薬Aの方が高いのに、全体では薬Aが45%、薬Bが75%になります。全体の割合は、層の割合を人数で重みづけした平均です。薬Aは重症の人が90人、薬Bは20人と、重症の人数の偏りが大きく違います。重症は効きにくい層なので、重症の多い薬Aの全体の割合が下がります。クロス集計表の読み方はクロス集計表のページで確かめられます。

なぜ逆転するのか

逆転が起きる条件は、層を決める変数(症状の重さ、A層かB層か)が、2つの変数の両方と関係していることです。

  • 相関の例:A層はxが小さくyが大きく、B層はxが大きくyが小さい。層の位置が、右下がりに並んでいる
  • 割合の例:重症の人が薬Aに集まり、重症は効きにくい。層の人数の偏りが、全体の割合を動かしている

全体で見えた関係が、層を決める第3の変数による「みかけの相関(擬相関)」の場合があります。第3の変数の影響を取り除いて相関を見る方法に、偏相関係数があります。計算式は偏相関係数と相関係数の比較に、第3の変数の呼び方は交絡変数と潜在変数の比較にまとめています。

全体と層別のどちらを読むか

2つの結果が食い違ったとき、数字の計算だけでは決まりません。データがどう生まれたかで決めます。

  • 層を決める変数が、2つの変数の両方に影響する背景(症状の重さなど)なら、層別の結果を読む
  • 層を決める変数が、処理の結果として生まれたもの(たとえば薬で変わった後の検査値)なら、層別せず全体を読む

このページの2つの例では、症状の重さやA層・B層が、背景にあたる変数です。試験では、背景の変数があるかどうかを、問題文の設定から読み取ることになります。

問題文から読み取る

このページの計算例から導いた読み方です。出題を予想するものではありません。

  • 「全体では負の相関だが、グループ別にはどちらも正の相関」とあれば、層別した散布図で見る場面
  • 全体の割合は、層の割合を層の人数で重みづけした平均として計算できる
  • 層の人数の偏りが2群で大きく違うときは、全体の割合の比較に注意する
  • 「第3の変数の影響」とあれば、みかけの相関(擬相関)か、偏相関係数の場面

よくある質問

シンプソンのパラドックスは、統計検定2級の出題範囲にありますか?

この名前では、公式の出題範囲表に載っていません。ただし、2級の出題範囲表は「散布図と相関」の項目に、層別した散布図とみかけの相関(擬相関)を学習用語として挙げています。このページの内容は、その2語の使い方にあたります。

シンプソンのパラドックスとは何ですか?

スタンフォード哲学百科事典は、集団での2変数の関連が、集団を部分集団に分けると現れる、消える、または逆転する統計的な現象だと説明しています。このページの例では、2つの層で相関係数が正なのに、全体では負になります。

全体の結果と層別の結果が食い違ったら、どちらを信じますか?

データだけでは決まりません。層を決める変数が、2つの変数の両方に影響する背景なら層別の結果を、処理の結果として生まれた変数なら全体の結果を読むなど、データの背景で決めます。計算の正しさだけでは選べません。

層別すれば、必ず正しい結論になりますか?

なりません。層別の仕方を変えると、結論が変わることがあります。層に分けるのは、全体の数字が何を混ぜているかを調べる手順であり、層別した結果が常に正解というわけではありません。

次に読むと効率的なページ

執筆: ミナト編集部(運営者情報を見る)