用語比較
帰無仮説と対立仮説の違い|仮説検定の2つの仮説(統計検定2級)
帰無仮説は検定で疑う側の仮説、対立仮説は帰無仮説が棄却されたときに採る側の仮説です。NIST(米国標準技術研究所)のハンドブックは、疑われている条件を帰無仮説、信じられている条件を対立仮説と説明しています。
統計検定2級では、仮説の立て方、棄却するという結論の意味、帰無仮説が棄却されなかったときの言い方が問われます。検定にかけるのは常に帰無仮説で、対立仮説は棄却された後の行き先と最初に整理します。
このページは、2つの仮説の役割分担に絞ります。対立仮説の向きは片側検定と両側検定の違い、誤りの種類は第1種の過誤と第2種の過誤の違いのページで扱っているため、ここでは重複させません。
この記事の目次
この記事の根拠と出典
各セクションの見出しの下に、公式資料で確認した内容か編集部の整理かをラベルで示しています。 試験日・料金・申込条件・試験方式は変わることがあるため、申込前に公式サイトで確認してください。統計検定2級の一次情報確認日: 2026-10-09。
結論
帰無仮説(H0)
検定で疑う条件。例は2つの母平均は等しい。検定統計量が棄却域に入ったときに棄却する。
対立仮説(Ha)
帰無仮説が棄却されたときに採る条件。例は2つの母平均は等しくない。1標本t検定では両側・上側・下側の3通りに置ける。
違いを表で確認
| 比較軸 | 帰無仮説(H0) | 対立仮説(Ha) |
|---|---|---|
| 役割 | 疑われている条件。検定の対象 | 信じられている条件。棄却後の行き先 |
| 記号と例 | H0:2つの母平均は等しい | Ha:2つの母平均は等しくない |
| 検定の結論 | 棄却する、または棄却しない | 帰無仮説を棄却したときに採る |
| 1標本t検定での形 | 母平均 = μ0 の1通り | μ ≠ μ0(両側)、μ > μ0(上側)、μ < μ0(下側)の3通り |
| 誤りの確率との関係 | 真のときに棄却する確率が有意水準α(第1種の過誤) | βは特定の対立仮説に対してだけ計算できる(第2種の過誤) |
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どちらを検定するのか迷う人
検定にかけるのは帰無仮説です。検定統計量が棄却域に入るかを見て、入れば帰無仮説を棄却し、対立仮説を採ります。
棄却できなかったときの書き方に迷う人
NISTは、仮説を受け入れることは真だと示すことではなく、疑う証拠がないというだけだと述べます。帰無仮説が正しいと書かず、棄却できないと書きます。
p値が小さいから差が大きいと考える人
NISTは、統計的に有意とは帰無仮説を棄却したという意味にすぎず、標本が大きいと実務上は小さな差でも棄却されると注意します。差の大きさは別に判断します。
具体例で使い分ける
例 1
母平均が10かどうかを調べるとき
NISTの例のように、母平均は10に等しいという条件を調べる場合です。
- 帰無仮説はH0:μ = 10、対立仮説は両側ならHa:μ ≠ 10です。
- 標本サイズ10の1標本t検定では、検定統計量t = (標本平均 − 10) ÷ (標本標準偏差 ÷ √10) の自由度は9です。
- 両側有意水準0.05の臨界値は自由度9で2.262です。仮にtが2.5なら絶対値が臨界値を超えるので棄却し、仮にtが−2.0なら超えないので棄却できません。
結論: 絶対値が2.262を超えたときだけ帰無仮説を棄却し、μ ≠ 10を採ります。
例 2
回帰直線の傾きを検定するとき
単回帰で、説明変数が目的変数に関係しているかを調べる場合です。
- 帰無仮説は母傾きβ1 = 0、つまり傾きがないという条件です。
- 推定した傾きb1をその標準誤差se(b1)で割ったt統計量を、自由度n − 2の臨界値と比べます。
結論: 棄却されれば傾きが0ではないと結論します。0と異なる値が具体的にいくつかは、検定だけでは決まりません。
例 3
3つ以上の平均を比べて帰無仮説が棄却されたとき
NISTの多重比較の説明にある、複数の平均が等しいかを調べる場合です。
- 帰無仮説はすべての平均が等しいです。
- 棄却された時点でわかるのは等しくないということだけで、どの平均が違うかまでは示されません。
結論: どの平均が違うかは、検定とは別に多重比較の手法で調べます。
問題文から答えを選ぶ手順
- 1
疑う条件を帰無仮説に置く
等しい差がない傾きが0のように、等号で書ける条件が帰無仮説になります。
- 2
棄却後に採る条件を対立仮説に置く
等しくないなら両側、より大きいより小さいなら片側です。向きは検定の前に決めます。
- 3
有意水準と棄却域を決める
有意水準αは、帰無仮説が真のときに誤って棄却してよい確率です。0.1、0.05、0.01がよく使われます。
- 4
検定統計量が棄却域に入るか確かめる
入れば帰無仮説を棄却して対立仮説を採り、入らなければ棄却できないと結論します。
試験での見分け方
- 1検定にかけるのは帰無仮説。対立仮説は棄却されたときの行き先。
- 2帰無仮説は等号で書ける条件。対立仮説は不等号(≠、>、<)で書く条件。
- 3棄却できなかったときは《帰無仮説が正しい》と書かず、《棄却できない》と書く。
- 4帰無仮説を棄却しても、わかるのは等しくないことだけで、差の大きさや実務上の重要性は別に判断する。
誤答しやすい選択肢
対立仮説を検定にかけると考える
修正: 検定統計量の分布を計算するのは、帰無仮説が真だと仮定した場合です。対立仮説は棄却された後に採る側です。
棄却できないことを帰無仮説が証明されたと書く
修正: NISTは、仮説を受け入れても真だとは限らず、疑う証拠がないだけだと述べます。結論は棄却できないです。
有意水準を帰無仮説が正しい確率と読む
修正: 有意水準αは、帰無仮説が真のときに誤って棄却する確率(第1種の過誤の確率)です。仮説が正しい確率ではありません。
有意なら実務上も重要な差だと考える
修正: 標本が大きいと小さな差でも棄却されます。統計的有意と実務上の意味は別に判断します。
確認問題
Q1仮説検定で、検定統計量の分布を求めるときに真だと仮定するのは帰無仮説と対立仮説のどちらですか?
答え: 帰無仮説
有意水準は、帰無仮説が真のときにこれを棄却する確率です。検定は帰無仮説を基準に組み立てます。
Q2標本サイズ10の1標本t検定(両側、有意水準0.05)で、検定統計量が−2.0のとき、帰無仮説は棄却されますか?
答え: 棄却されない(自由度9の臨界値2.262に対し、絶対値2.0は小さい)
両側検定では、検定統計量の絶対値が臨界値を超えたときに帰無仮説を棄却します。
Q3帰無仮説が棄却されなかったとき、結論はどう書きますか?
答え: 帰無仮説を棄却できない
帰無仮説が真だと示したことにはなりません。疑う証拠が得られなかったという意味です。
到達チェック
- 帰無仮説と対立仮説の役割を一言で言える
- 検定にかけるのが帰無仮説だと説明できる
- 棄却できなかったときの結論を正しく書ける
- 有意水準が仮説の正しさの確率ではないと言える
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よくある質問
Q帰無仮説と対立仮説の最大の違いは何ですか?
検定にかけるかどうかです。帰無仮説は疑う条件として検定の対象になり、対立仮説は帰無仮説が棄却されたときに採る条件です。
Q帰無仮説は等号で書くのですか?
NISTの例では、H0は2つの母平均は等しいのように等しい条件、Haは等しくない条件です。1標本t検定の対立仮説はμ ≠ μ0、μ > μ0、μ < μ0の3通りです。
Q帰無仮説を棄却できなかったら、帰無仮説は正しいのですか?
いいえ。NISTは、受け入れることは真だと示すことではなく、疑う証拠がないだけだと述べます。
Q検出力と対立仮説にはどんな関係がありますか?
帰無仮説が偽のときに正しく棄却する確率が検出力1 − βです。βは特定の対立仮説に対してだけ計算できます。
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執筆: ミナト編集部(運営者情報を見る)
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