用語比較
大数の法則と中心極限定理の違い|平均の行き先とばらつきの形(統計検定2級)
大数の法則は、標本の大きさが増えるほど標本平均が母平均(期待値)に近づく、という法則です。中心極限定理は、標本平均のばらつき方が、元の分布によらず正規分布に近づく、という定理です。
前者は平均がどこへ向かうか、後者は平均の周りのばらつきがどんな形かを述べています。統計検定2級では、確率を計算するときは中心極限定理、平均が真の値に近づく理由の説明には大数の法則、と使い分けます。
このページは、二つの名前が似ていて、どちらが何を保証するのか混ざってしまう人を対象にしています。数値例で、標準誤差を使った確率の計算まで確認します。
この記事の目次
この記事の根拠と出典
各セクションの見出しの下に、公式資料で確認した内容か編集部の整理かをラベルで示しています。 試験日・料金・申込条件・試験方式は変わることがあるため、申込前に公式サイトで確認してください。統計検定2級の一次情報確認日: 2026-10-09。
結論
大数の法則
標本が大きくなるほど、標本平均が期待値に近づく。サイコロなら、出目の平均が期待値3.5に近づく。観測数が少ないうちの偏りが、後で相殺されるという意味ではない。
中心極限定理
標本サイズNが大きいとき、標本平均の分布は元の分布によらず近似的に正規分布となり、中心は母平均μ、標準偏差(標準誤差)はσ/√Nになる。
違いを表で確認
| 比較軸 | 大数の法則 | 中心極限定理 |
|---|---|---|
| 述べていること | 標本平均が期待値に近づく | 標本平均の分布が正規分布に近づく |
| 注目する点 | 平均の行き先(中心) | 平均のばらつきの形と大きさ |
| 計算に使えるか | 正規分布を使った確率の計算には使わない | 標準化して範囲の確率を求められる |
| 出てくる式 | 標本平均→期待値 | z=(標本平均-μ)/(σ/√N) |
| 試験での使いどころ | 平均が真の値に近づく理由の説明 | 標本平均の確率の計算、二項分布の正規近似 |
統計検定2級の学習に使う書籍(Amazon)
試験範囲を通して読むときの1冊です。読んだ章は、このサイトの章別問題で確かめられます。
統計検定2級対応のPythonデータ分析講座(Winスクール)
Pythonのpandas・NumPy・matplotlibを使い、記述統計、仮説検定、分散分析、回帰分析を手を動かして学ぶ講座です。オンラインでも受講でき、90分×18回で構成されています。
対象はPythonプログラミングの修了者か同程度の知識がある人で、統計の計算をPythonで実務に使いたい人に向いています。試験対策だけが目的なら、先にこのサイトの予想問題と模試で弱点の章を確かめてください。
無料の受講相談を見るどこで迷っているかを切り分ける
二つの名前が似ていて、どちらが何かを混ぜてしまう人
大数の法則は「平均が期待値に近づく」、中心極限定理は「平均の分布が正規分布に近づく」と、近づく対象で区別します。前者は値、後者は分布の形です。
確率を求める問題で、どちらを使うか迷う人
「標本平均が54を超える確率」のように確率を求めるときは、中心極限定理で標本平均を標準化します。大数の法則だけでは、確率の値は出せません。
標準誤差のσ/√nがどこから来るか知りたい人
中心極限定理が述べる標本平均の標準偏差が、標準誤差σ/√Nです。標本を増やすほど小さくなり、平均が期待値に近づくという大数の法則の感覚とも合います。
具体例で使い分ける
例 1
標本平均が54を超える確率を求める
母平均50、母標準偏差12の母集団から、大きさ36の標本をとります。標本平均が54を超える確率を求めます。
- 標本サイズ36は大きいので、中心極限定理により標本平均は近似的に正規分布に従います。中心は50です。
- 標準誤差は12/√36=2です。
- z=(54-50)/2=2です。標準正規分布の上側確率は約0.0228です。
結論: 標本平均が54を超える確率は約2.3%です。確率を出すのに使ったのは、中心極限定理です。
例 2
サイコロの平均が3.5に近づく理由を説明する
サイコロを何回も振ったとき、出目の平均がどうなるかを説明します。
- 1回の期待値は(1+2+3+4+5+6)/6=3.5です。
- 振る回数を増やすほど、出目の平均は3.5に近づきます。これが大数の法則です。
- ただし、少ない回数での偏りが、後の回で打ち消されるという原理はありません。
結論: 平均が期待値に近づく理由の説明は、大数の法則です。確率の計算には、中心極限定理を使います。
問題文から答えを選ぶ手順
- 1
問われているものを確認する
「平均が真の値に近づく」という性質の説明か、「平均が一定の範囲に入る確率」の計算かを確認します。
- 2
説明なら大数の法則を選ぶ
標本が大きいほど標本平均が期待値に近づく、と答えます。
- 3
確率の計算なら中心極限定理を選ぶ
標準誤差σ/√Nを求め、z=(標本平均-μ)/(σ/√N)で標準化します。
- 4
標準正規分布表で確率を読む
zの値から上側確率を読み、問われている向き(超える、下回る)に合わせて整えます。
試験での見分け方
- 1標本平均が期待値に近づく、という説明は大数の法則。
- 2標本平均の分布が正規分布に近づく、という説明は中心極限定理。
- 3標本平均の確率の計算は、標準誤差σ/√Nで標準化して行う。
- 4標本が小さいうちの偏りが、後で相殺されるわけではない。
誤答しやすい選択肢
大数の法則を、少ない試行の偏りが後で埋め合わせられる法則と読む
修正: 観測数が多いときの平均の話です。少数の観測が期待値に一致する、偏りが相殺されるという原理はありません。
中心極限定理を、元の分布が正規分布に変わるという意味で読む
修正: 正規分布に近づくのは標本平均の分布です。元の母集団の分布は変わりません。
標準誤差をσのまま計算に使う
修正: 標本平均の標準偏差は、σを√Nで割った値です。上の例では12ではなく2を使います。
標本サイズが小さい場合でも、正規近似をそのまま使う
修正: 中心極限定理は標本サイズNが大きいときの近似です。問題文で標本の大きさと母集団の分布を確認します。
確認問題
Q1サイコロを何回も振ったとき、出目の平均が3.5に近づく性質の名前は?
答え: 大数の法則
標本平均が期待値に近づく性質です。1回の期待値は3.5です。
Q2母標準偏差12、標本サイズ36のとき、標本平均の標準誤差は?
答え: 2
12/√36=12/6=2です。
Q3上の条件で、母平均が50のとき、標本平均が54のzの値は?
答え: 2
(54-50)/2=2です。上側確率は約0.0228です。
Q4標本平均の分布が、元の分布によらず正規分布に近づく定理は?
答え: 中心極限定理
標本サイズNが大きいとき、標本平均の分布は近似的に正規分布になります。
到達チェック
- 大数の法則が述べていることを一文で言える
- 中心極限定理が述べていることを一文で言える
- 標準誤差σ/√Nを計算できる
- 標本平均を標準化して確率を読める
- 確率の計算と、性質の説明で、使う法則を選べる
関連ページで確認する
同じ資格で次に知りたいこと
- 条件付き確率とベイズの定理の違い|逆向きの確率の求め方(統計検定2級)
条件付き確率とベイズの定理の違いを、P(A|B)とP(B|A)の向き、式、全体を場合分けして合計する分母の求め方、陽性と病気の数値例(約15.4%)、統計検定2級での判断手順と確認問題まで解説します。
- 共分散と相関係数の違い|単位の有無と-1から1の範囲(統計検定2級)
共分散と相関係数の違いを、単位の有無、値の範囲、標準偏差の積で割る関係、x=1〜5・y=2,3,5,6,9の計算例(共分散3.4、相関係数約0.98)、yを10倍したときの変化、統計検定2級での判断手順と確認問題まで解説します。
- z検定とt検定の違い|母標準偏差が分かるかで選ぶ(統計検定2級)
z検定とt検定の違いを、母標準偏差が既知か未知か、検定統計量の式、標準正規分布とt分布の臨界値(1.96と2.064)、同じ数値で結論が分かれる計算例、統計検定2級での選び方と確認問題まで解説します。
よくある質問
Q大数の法則と中心極限定理は、何が違う?
大数の法則は標本平均が期待値に近づくこと、中心極限定理は標本平均の分布が正規分布に近づくことを述べます。
Q確率の計算に使うのはどちら?
中心極限定理です。標準誤差σ/√Nで標準化して、標準正規分布表から確率を読みます。
Q少ない回数の偏りは、あとで打ち消される?
打ち消されるという原理はありません。大数の法則は、観測数が多いときの平均の話です。
次に見る比較
- G検定・DS検定・統計検定2級で重なる用語10語の比較
同じ名前の用語の定義と収録章を、資格ごとに並べます。
- ベイズの定理と条件付き確率の違い(統計検定2級の式と計算例)
求める確率の向きの違いと、陽性になる確率の計算例を確かめます。
- 紛らわしい用語ペア早見表
混同しやすい用語の違いと判定の手掛かりを、資格別の一覧で確かめます。
執筆: ミナト編集部(運営者情報を見る)
![日本統計学会公式認定 統計検定2級 公式問題集[CBT対応版] の表紙](/_next/image?url=https%3A%2F%2Fm.media-amazon.com%2Fimages%2FP%2F4788920476.09._SCLZZZZZZZ_.jpg&w=256&q=75)