第1章 データの記述と要約
統計検定2級の時系列データの処理(5つの計算の使い分け)
統計検定2級の公式出題範囲には、時系列データの処理として、成長率、指数化、幾何平均、系列相関・コレログラム、平滑化(移動平均)が並んでいます。5つは、見たいものが違います。変化の速さは成長率と幾何平均、水準の比較は指数、傾向は移動平均、時間をずらした関係は系列相関です。
このページは、各計算の定義を一次資料で確かめ、数字の小さい計算例で使い分けを整理しています。
この記事の目次
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結論
- 複数期間の平均的な成長の速さは、算術平均ではなく幾何平均で求める
- 指数は「比較時点の値 ÷ 基準時点の値 × 100」で、基準時点に対する相対的な水準を表す
- N項の移動平均は、直近N個の観測値の合計をNで割り、1期ごとに最も古い値を外して新しい値を加える
- ラグkの系列相関は、k期離れた値どうしの偏差の積の和を、全観測値の偏差平方和で割る
- 5つは別の目的の計算なので、問題文の「何を知りたいか」から選ぶ
5つの処理の使い分け
| 処理 | 見たいもの | 計算 |
|---|---|---|
| 成長率 | 前の期から何%増えたか(減ったか)を見る | (今期 − 前期)÷ 前期 |
| 幾何平均 | 複数期間にわたる平均の成長の速さを求める | n個の正の値の積のn乗根 |
| 指数化 | 基準時点を100として、相対的な変化を比べる | 比較時点の値 ÷ 基準時点の値 × 100 |
| 平滑化(移動平均) | 細かな上下をならして傾向(トレンド)を見る | 直近N個の観測値の合計 ÷ N |
| 系列相関(コレログラム) | k期離れた値どうしの関係の強さを見る | k期離れた偏差の積の和 ÷ 全観測値の偏差平方和 |
一次資料: 統計検定センター「統計検定2級 出題範囲」、NIST/SEMATECH e-Handbook of Statistical Methods、総務省統計局の消費者物価指数の解説資料
成長率と幾何平均
NISTは、幾何平均を、n個の値の積のn乗根として定義しています。各期間の成長係数(今期÷前期。正の値)を幾何平均すると、その平均を期間数だけ掛けたとき、元の累積成長係数になります。これは定義から導かれる性質です。
数字で確かめます。ある値が最初の期に+20%、次の期に−25%変化したとします(このページの計算例です)。成長係数は1.2と0.75で、掛けると0.9、つまり2期間で全体は10%減ります。
- 算術平均: (+20% − 25%)÷ 2 = −2.5%。これを2期続けると 0.975 × 0.975 ≒ 0.951で、実際の0.9にならない
- 幾何平均: √(1.2 × 0.75) = √0.9 ≒ 0.949。1期あたり約−5.1%で、2期続けるとちょうど0.9に戻る
掛け算で積み上がる変化は、幾何平均で平均します。用語の定義は幾何平均と成長率の用語集で確認できます。算術平均との違いは算術平均と幾何平均を比べたページでも確認できます。
指数化
総務省統計局の消費者物価指数の解説資料は、物価指数を、基準となる時点の物価を100として、その時々の物価を比較計算した数値と説明しています。資料の例では、2025年の買物の費用30万円を100とすると、2026年の31万円は比例計算で103.3になります。この比例計算を式にすると、比較時点の値÷基準時点の値×100です。
計算例です。基準時点の売上が200、比較時点が250なら、指数は 250 ÷ 200 × 100 = 125です。指数125は「基準を100とした水準が125」という意味で、増えた金額の50ではありません。単位の違う系列も、基準時点を100にそろえると同じ目盛りで比べられます。成長率と指数の使い分けは成長率と指数を比べたページに整理しています。
平滑化(移動平均)
N項の単純移動平均は、現在を含む直近N個の観測値を合計してNで割ります。1期進むごとに、最も古い値を外して新しい値を加えます。
計算例です。4, 6, 8, 10, 12の5期に3項移動平均をかけると、(4+6+8)÷3 = 6、(6+8+10)÷3 = 8、(8+10+12)÷3 = 10となり、3つの値が得られます。最初の2期は直近3個がそろわないため、移動平均を計算できません。出題範囲にはトレンドも並んでおり、移動平均は細かな上下をならして傾向を見る平滑化の方法として挙がっています。 項数を変えたときの違いは、移動平均の3項と5項を比べたページで、同じデータの計算結果と合わせて確認できます。用語は平滑化の用語集にあります。
系列相関とコレログラム
NISTの説明では、ラグkの系列相関は、等間隔の時系列について、平均からの偏差をk期離れた値どうしで掛けた和を、全観測値の偏差平方和で割って計算します。ラグごとの系列相関を並べて見るグラフがコレログラムです。
ラグ0の系列相関は、分子と分母が同じ式になるため1です。ラグを大きくするほど、比べる組の数は減ります。用語はコレログラムの用語集で確認できます。相関係数との違いは自己相関と相関係数を比べたページで確認できます。
問題文から処理を選ぶ
5つの計算は、問題文が何を求めているかで選べます。このページの計算例から導いた読み方です。出題を予想するものではありません。
- 「年平均の増加率」「複数期間を通した平均的な伸び」とあれば、成長係数の幾何平均
- 「基準年を100としたとき」「相対的に比べる」とあれば、指数化
- 「季節や偶然の細かな上下をならして傾向を見る」とあれば、移動平均による平滑化
- 「1期前、2期前の値との関係」とあれば、ラグ1、ラグ2の系列相関
- 「成長率を算術平均した値が、累積の変化を表す」という文は、先の計算例のとおり成り立たない
- 「指数が増えた数を表す」という文は、相対的な変化を表すという説明と食い違う
統計検定2級の学習に使う書籍(Amazon)
試験範囲を通して読むときの1冊です。読んだ章は、このサイトの章別問題で確かめられます。
よくある質問
時系列データの処理は、統計検定2級の公式出題範囲にありますか?
あります。統計検定センターの2級の出題範囲は、時系列データの処理として、成長率、指数化、幾何平均、系列相関・コレログラム、トレンド、平滑化(移動平均)を挙げています。
成長率の平均は、算術平均ではだめですか?
複数期間の平均的な成長の速さを求めるときは幾何平均を使います。算術平均で平均すると、掛け合わせたときの累積の変化を再現できません。このページの計算例(+20%のあと−25%)で、2つの平均の違いを確認できます。
指数が120というのは、20増えたという意味ですか?
基準時点を100としたときの相対的な水準が120という意味です。基準時点の値を100とした比で表すもので、増加した数そのものではありません。
移動平均は、項数が大きいほど良いのですか?
項数が大きいほど、ならされる強さは増えますが、そのぶん平均を計算できない期間も増えます。項数による違いの計算は、移動平均の3項と5項を比べたページで確認できます。
コレログラムは何を表しますか?
ラグ(ずらす期間)ごとの系列相関を並べて見るグラフです。ラグkの系列相関は、k期離れた値どうしの関係の強さを表します。
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