第4章 標本分布と推定(区間推定)
標本の大きさの決め方(誤差の幅から必要な人数を求める計算)
調査や実験の前に「誤差を何以内にしたいなら、何人に聞けばよいか」を決める計算があります。信頼区間の式の誤差の部分を目標の値に置き、標本の大きさ n について解けば、必要な人数が出ます。
このページは、母平均と母比率の2つについて、95%の水準で必要な人数を最後まで計算します。なお、統計検定2級の出題範囲表の区間推定には、母平均・母分散・母比率などの区間推定が挙げられています。ここで扱うのはその信頼区間の式を逆算する計算で、出題を予想するものではありません。
この記事の目次
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結論
- 母平均:誤差を E とすると、n ≧ (1.96 × σ / E)²(95%、σは既知)
- 母比率:n ≧ 1.96² × p(1−p) / E²(95%)。pが分からなければ p=0.5 を入れる
- 計算結果が小数なら、必ず切り上げる
- 誤差 E を半分にしたければ、必要な人数は4倍になる
- 母平均の式は、標準偏差が既知であることが前提
母平均:σ=12・誤差2で計算する
母標準偏差が既知のとき、母平均の95%信頼区間は「標本平均 ± 1.96 × σ/√n」です。±のあとの部分が誤差で、これを E と置くと E = 1.96σ/√n になります。NISTのハンドブックも、誤差δを標準偏差と標本数の関係で示し、95%水準で必要な標本数を N ≧ (1.96/δ)² σ² と書いています。同じ式です。
計算例です(このページの架空のデータです)。母標準偏差が σ = 12 と分かっている測定で、母平均の推定の誤差を2以内にしたいとします。
- 式:n ≧ (1.96 × 12 / 2)²
- かっこの中:1.96 × 12 / 2 = 11.76
- 2乗:11.76² ≒ 138.3
- 切り上げ:139
必要な標本の大きさは139です。確かめると、n=139 の誤差は 1.96 × 12 / √139 ≒ 1.995 で2以内ですが、n=138 では約2.002 となり、わずかに2を超えます。
誤差を変えると人数は2乗で効きます。誤差を1にすると約553.2で554、誤差を4にすると約34.6で35です。誤差を半分にすると、人数はおよそ4倍になります。信頼区間の基本は信頼区間の求め方で確認できます。
母比率:誤差3ポイントで計算する
母比率の信頼区間の誤差は 1.96 × √(p(1−p)/n) です。これを E と置いて n について解くと、n = 1.96² × p(1−p) / E² になります。
困るのは、調査の前には p が分からないことです。Virginia Techの教科書は、pの推定値がないときは保守的な値として0.5を使えると説明しています。p(1−p) は p=0.5 のとき最大の0.25になり、最も大きい人数を与えるので、どんな真の比率でも誤差が目標以内に収まります。p=0.6 なら 0.24、p=0.3 なら 0.21、p=0.2 なら 0.16 と、0.5から離れるほど小さくなります。
計算例です(架空の調査です)。支持率を95%の水準で、誤差3ポイント(0.03)以内で推定したいとします。
- 式:n ≧ 1.96² × 0.5 × 0.5 / 0.03²
- 分子:3.8416 × 0.25 = 0.9604
- 分母:0.03² = 0.0009
- 割り算:0.9604 / 0.0009 ≒ 1067.1
- 切り上げ:1068
pの見当がつかないときの必要人数は1068人です。事前に「支持率は2割前後」と分かっていれば、p=0.2 を使って 3.8416 × 0.16 / 0.0009 ≒ 683.0 で683人に減らせます。その代わり、見当が外れて真のpが0.5に近いと、誤差が目標を超えるおそれがあります。
誤差の幅と必要な人数の対応
p=0.5・95%のとき、誤差の幅ごとの必要人数は次のとおりです。
| 目標の誤差 | 1.96² × 0.25 / E² | 必要な標本の大きさ |
|---|---|---|
| 5ポイント(0.05) | 384.16 | 385人 |
| 3ポイント(0.03) | 1067.11 | 1068人 |
| 2ポイント(0.02) | 2401 | 2401人 |
| 1ポイント(0.01) | 9604 | 9604人 |
誤差を5ポイントから1ポイントへ5分の1にすると、人数は385人から9604人へ約25倍になります。誤差が2乗で効くためです。Wikipediaの「Sample size determination」にも、95%信頼区間の幅が2ポイント(誤差1ポイント)のとき9604が必要だという同じ例があります。
小数は切り上げる
式は「n ≧ …」の形です。必要なのは、誤差が目標以下になる最小の整数です。母平均の例の138.3や、母比率の例の1067.1を四捨五入して138や1067にすると、誤差が目標をわずかに超えます。実際、n=1067 の誤差は約0.03000、n=1068 では約0.02999 で、1068で初めて0.03以内になります。
誤差0.02のようにちょうど割り切れる場合は、2401のまま答えます。小数が少しでも残れば、常に切り上げと覚えれば足ります。
問題文から読み取る
問題文の言い回しから、確かめる点を決められます。このページの計算例から導いた読み方で、出題を予想するものではありません。
- 母標準偏差の値が与えられていれば母平均の式、割合の推定なら母比率の式を使う
- 母比率でpが与えられていなければ、p=0.5 を入れる
- 「誤差が○ポイント以内」は、割合なら E=0.0○ に直してから代入する
- 計算結果が小数のとき、四捨五入や切り捨ての選択肢は誤り
- 「誤差を半分にするには人数も半分」は誤り。4倍が必要
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試験範囲を通して読むときの1冊です。読んだ章は、このサイトの章別問題で確かめられます。
よくある質問
必要な標本の大きさは、母平均と母比率でどこが違いますか?
母平均は母標準偏差σが必要で、n ≧ (1.96σ/E)² です。母比率はσ²の代わりに p(1−p) を使い、n ≧ 1.96² × p(1−p) / E² です。pが分からないときは p=0.5 を入れます。
なぜ p=0.5 を使うのですか?
p(1−p) の積は p=0.5 のとき最大の0.25になり、最も大きい標本の大きさを与えるからです。どんな真の比率でも誤差が目標以内に収まる、安全側の人数になります。事前にpの見当があれば、その値を使うと人数を減らせます。
計算結果が1067.1人のとき、1067人ではだめですか?
だめです。必要な人数は「この人数以上」なので、小数は切り上げて1068人にします。1067人だと誤差が目標の0.03をわずかに超えます。
母平均の必要人数を出すとき、σが分からなければどうしますか?
NISTは、この式の制約として標準偏差が既知であることを挙げています。実際には過去のデータや予備調査から見積もった値を使うのが一般的です。試験問題では、σの値が与えられるかどうかを問題文で確かめます。
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