第2章 データ収集と確率
統計検定2級のベイズの定理(陽性から病気の確率を求める計算)
統計検定2級の公式出題範囲の確率の項目には、条件付き確率、乗法定理、ベイズの定理が並んでいます。ベイズの定理は、「原因から結果が起こる確率」を「結果から原因だった確率」に直す式です。この向きは取り違えやすいので、問題文でどちらを求めているかを先に確認します。
このページは、検査の陽性から病気である確率を求める例と、不良品がどの工場の製品かを求める例を、数字を追いながら解きます。
この記事の目次
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結論
- 条件付き確率は P(A|B) = P(A∩B) ÷ P(B)(P(B) > 0 のとき)
- ベイズの定理は P(A|B) = P(B|A)P(A) ÷ P(B)。逆向きの条件付き確率を求める式
- 分母P(B)は、互いに排反で全体を尽くす場合分けごとに「場合の確率 × その場合にBが起こる確率」を作って合計する
- 検査の例では、P(陽性|病気) = 0.9 でも P(病気|陽性) は約0.154。病気の割合が小さいと、この差が大きくなる
- 排反と独立は別の概念。確率が0より大きい排反な2事象は、独立ではない
条件付き確率とベイズの定理の式
Penn StateのSTAT 414は、P(B) > 0 のとき、Bが起きたもとでAが起きる条件付き確率を P(A|B) = P(A∩B)/P(B) としています。ベイズの定理は、これを使って逆向きの条件付き確率を P(A|B) = P(B|A)P(A)/P(B) と求める式です。分母のP(B)は、互いに排反で全体を尽くす場合分けごとの確率を合計して求めます。
検査の陽性から病気の確率を求める
計算例です(このページの架空のデータです)。病気Aの人の割合 P(A) は0.01、病気の人が陽性になる確率 P(陽性|A) は0.9、病気でない人が陽性になる確率は0.05です。陽性だった人が病気である確率 P(A|陽性) を求めます。
- 病気で陽性: 0.01 × 0.9 = 0.009
- 病気でなく陽性: 0.99 × 0.05 = 0.0495
- 陽性の確率 P(陽性) = 0.009 + 0.0495 = 0.0585
- P(A|陽性) = 0.009 ÷ 0.0585 ≒ 0.154
病気の人の90%が陽性になる検査でも、病気の割合が1%なら、陽性だった人が病気である確率は約15.4%です。陽性になる人の大半は、人数の多い「病気でない人」の側から出ているためです。
1000人で数え直すと分かりやすくなります。病気の10人のうち9人、病気でない990人のうち49.5人が陽性なので、陽性の58.5人のうち病気の人は9人です。9 ÷ 58.5 ≒ 0.154となり、式の結果と一致します。
3つの工場から不良品の出所を求める
場合分けが3つになっても、手順は同じです。計算例です(このページの架空のデータです)。ある製品を工場A・B・Cで作っていて、生産量の割合と不良率が下の表のとおりです。不良品が1つ見つかったとき、それが各工場の製品である確率を求めます。
| 工場 | 生産量の割合 | 不良率 | 割合 × 不良率 | 不良品が各工場の製品である確率 |
|---|---|---|---|---|
| 工場A | 0.50 | 0.02 | 0.010 | 0.010 ÷ 0.029 ≒ 0.345 |
| 工場B | 0.30 | 0.03 | 0.009 | 0.009 ÷ 0.029 ≒ 0.310 |
| 工場C | 0.20 | 0.05 | 0.010 | 0.010 ÷ 0.029 ≒ 0.345 |
不良品の確率は 0.010 + 0.009 + 0.010 = 0.029です。3つの確率を足すと 0.345 + 0.310 + 0.345 ≒ 1 になります。生産量が最も多い工場Aと、不良率が最も高い工場Cで、不良品である確率が同じ約0.345になりました。出所は「割合 × 不良率」の大きさで決まります。
排反と独立の取り違え
Penn StateのSTAT 414は、積事象A∩Bが空事象のとき、AとBを互いに排反な事象と呼びます。2事象は、P(A∩B) = P(A)P(B) が成り立つとき、かつそのときに限り独立です。
- 排反な2事象では P(A∩B) = 0。和事象の確率は P(A∪B) = P(A) + P(B)
- P(A) > 0 かつ P(B) > 0 なら P(A)P(B) > 0。右辺が0にならないので、排反な2事象は独立ではない
- 独立なら、Bが起きてもAの起きる確率は変わらず、P(A|B) = P(A)
「同時に起こらないから独立」は誤りです。ともに確率が0より大きい排反な事象では、一方が起きたと分かると他方の確率が0になり、P(B|A) = P(B) が成り立たないためです。用語は独立の用語集で確認できます。
問題文から読み取る
問題文の言い回しから、求める確率の向きを読み取れます。このページの計算例から導いた読み方で、出題を予想するものではありません。
- 「陽性だったとき、病気である確率」は、結果が先で原因を求める向き。ベイズの定理を使う
- 「病気の人が陽性になる確率」は、原因が先の向き。問題文にそのまま与えられている値
- 「不良品が1つ見つかった。それが工場Aの製品である確率」は、分母に全工場の不良品の確率を置く
- 「同時に起こらない」とあれば排反。「一方が起きても他方の確率が変わらない」とあれば独立
- 割合と確率の値が複数並ぶ問題は、先に「場合の確率 × その場合にBが起こる確率」を全部掛けて並べてから分母を作る
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試験範囲を通して読むときの1冊です。読んだ章は、このサイトの章別問題で確かめられます。
よくある質問
条件付き確率とベイズの定理は、統計検定2級の公式出題範囲にありますか?
あります。統計検定センターの2級の出題範囲表は、確率の項目として、事象と確率、加法定理、条件付き確率、乗法定理、ベイズの定理を挙げています。
P(A|B)とP(B|A)は同じ値ですか?
一般には違います。P(A|B)は「Bが起きたもとでAが起きる確率」、P(B|A)はその逆向きです。ベイズの定理は、この2つを P(A|B) = P(B|A)P(A)/P(B) でつなぎます。このページの検査の例では、P(陽性|病気)が0.9でも、P(病気|陽性)は約0.154です。
ベイズの定理の分母P(B)は、どう求めますか?
互いに排反で全体を尽くす場合分けごとに、その場合の確率と、その場合にBが起こる確率の積を作り、合計します。検査の例なら、病気の人が陽性になる分と、病気でない人が陽性になる分を足します。
互いに排反な2つの事象は、独立ですか?
ともに確率が0より大きいなら、独立ではありません。排反ならP(A∩B)=0ですが、独立の条件はP(A∩B)=P(A)P(B)で、右辺は0より大きくなるためです。
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