用語比較
ウェルチの検定と等分散を仮定する2標本t検定の違い|統計検定2級で整理する
どちらも、対応のない2つの標本で母平均の差を調べるt検定です。違いは分散の扱いにあります。等分散を仮定する2標本t検定は、2つの母分散が等しいと仮定して、2つの標本の分散を1つにまとめた(プールした)値を使います。ウェルチの検定は、母分散が等しいとは限らないとして、2つの標本分散をそのまま使います。分散をまとめる検定と、まとめない検定と覚えると区別できます。
統計検定2級の公式出題範囲表は、2つの母集団の母数に関する仮説検定として、母平均の差の検定を「分散既知、分散未知であるが等分散、分散未知で等しいとは限らない場合」に分けて挙げています。表には「ウェルチ」という名前は書かれていませんが、「等しいとは限らない場合」の標準的な方法がウェルチの検定です。
このページは、2標本t検定の式を1つだけ覚えていて、問題文で等分散が仮定できるかどうかによって、t統計量の分母と自由度がどう変わるかを説明できない人を対象にしています。
この記事の目次
この記事の根拠と出典
各セクションの見出しの下に、公式資料で確認した内容か編集部の整理かをラベルで示しています。 試験日・料金・申込条件・試験方式は変わることがあるため、申込前に公式サイトで確認してください。統計検定2級の一次情報確認日: 2026-10-09。
結論
等分散を仮定する2標本t検定
2つの母分散が等しいと仮定し、プールした分散を使ってt統計量を求める。自由度は N1+N2-2。
ウェルチの検定
母分散が等しいとは限らないとして、各標本の分散を各標本サイズで割った値の和の平方根で、標本平均の差を割る。自由度はウェルチ・サタースウェイトの式で求める。
分かれ目
問題文で「等分散と仮定できる」と示されているかどうか。示されていなければ、等しいとは限らない場合の式を使う。
違いを表で確認
| 比較軸 | 等分散を仮定する2標本t検定 | ウェルチの検定 | 確認できる根拠 |
|---|---|---|---|
| 分散の扱い | 2つの母分散が等しいと仮定し、2つの標本分散をまとめて(プールして)1つの値にするG検定の「分散の扱い」 | 母分散が等しいとは限らないとして、2つの標本分散をそのまま別々に使う統計検定2級の「分散の扱い」 | 公式出題範囲表は、母平均の差の検定を「分散未知であるが等分散」と「分散未知で等しいとは限らない場合」に分けているDS検定の「分散の扱い」 |
| t統計量の分母 | プールした標準偏差 sp に、1/N1+1/N2 の平方根を掛けた値G検定の「t統計量の分母」 | 各標本の分散を各標本サイズで割った値(s1²/N1 と s2²/N2)の和の平方根統計検定2級の「t統計量の分母」 | NISTの電子ハンドブックは、等分散を仮定すると式が上の形に簡単になると示しているDS検定の「t統計量の分母」 |
| プールした分散・自由度 | sp² は (N1-1)s1² と (N2-1)s2² の和を N1+N2-2 で割る。自由度は N1+N2-2G検定の「プールした分散・自由度」 | 分散をまとめないので sp² は使わない。自由度はウェルチ・サタースウェイトの式で求め、整数にならないことが多い統計検定2級の「プールした分散・自由度」 | NISTの電子ハンドブックは、ウェルチ・サタースウェイトの自由度が、標本サイズが等しくない場合や分散が等しくない場合に頑健だと説明しているDS検定の「プールした分散・自由度」 |
| 問題文で見る語 | 「等分散を仮定する」「母分散は等しい」G検定の「問題文で見る語」 | 「等分散を仮定しない」「母分散が等しいとは限らない」統計検定2級の「問題文で見る語」 | 公式出題範囲表の文言をそのまま手がかりにできるDS検定の「問題文で見る語」 |
統計検定2級の学習に使う書籍(Amazon)
試験範囲を通して読むときの1冊です。読んだ章は、このサイトの章別問題で確かめられます。
統計検定2級対応のPythonデータ分析講座(Winスクール)
Pythonのpandas・NumPy・matplotlibを使い、記述統計、仮説検定、分散分析、回帰分析を手を動かして学ぶ講座です。オンラインでも受講でき、90分×18回で構成されています。
対象はPythonプログラミングの修了者か同程度の知識がある人で、統計の計算をPythonで実務に使いたい人に向いています。試験対策だけが目的なら、先にこのサイトの予想問題と模試で弱点の章を確かめてください。
無料の受講相談を見るどこで迷っているかを切り分ける
2標本t検定の式を1つしか覚えていない受験者
分母の形が違う式が2つあります。問題文が等分散を仮定していれば、プールした分散を使う式です。等しいとは限らないとあれば、標本分散を別々に割る式を使います。
ウェルチの検定の自由度を N1+N2-2 だと思っている受験者
N1+N2-2 は等分散を仮定する場合の自由度です。ウェルチの検定では、ウェルチ・サタースウェイトの式で求め、整数にならないことが多くなります。
具体例で使い分ける
例 1
標本サイズも分散も違う2グループで、2つの式を並べる
グループAの4人(70・75・65・80)とグループCの別の6人(50・70・90・60・80・100)の得点を比べる場面です。
- 標本平均はグループAが72.5、グループCが75で、平均の差は-2.5です。
- 不偏分散はグループAが約41.67、グループCが350で、大きく違います。
- ウェルチの検定では、41.67÷4と350÷6の和の平方根である約8.29で割り、t統計量は約-0.30、自由度は約6.59になります。
- 等分散を仮定すると、プールした分散は約234.4、分母は約9.88で、t統計量は約-0.25、自由度は8になります。
結論: 同じデータでも、分母と自由度が変わります。問題文が等分散を仮定しているかを読んでから、式を選びます。
問題文から答えを選ぶ手順
- 1
標本が対応のないデータか確かめる
異なる対象から独立に集めた2つの標本であれば、この2つの検定のどちらかを使います。対になる形のデータは別の検定です。
- 2
分散の仮定を問題文から読む
「等分散を仮定する」とあるか、「等しいとは限らない」とあるかを確かめます。
- 3
分母を選ぶ
等分散を仮定するならプールした標準偏差を使う式、そうでなければ s1²/N1 と s2²/N2 の和の平方根を使う式です。
- 4
自由度を選ぶ
等分散を仮定するなら N1+N2-2、そうでなければウェルチ・サタースウェイトの式です。
試験での見分け方
- 1どちらも、対応のない2つの標本で母平均の差を調べるt検定。
- 2等分散を仮定する検定は、分散をプールし、自由度は N1+N2-2。
- 3ウェルチの検定は、分散をプールせず、各標本分散を各標本サイズで割った値の和の平方根を分母にする。
- 4ウェルチの検定の自由度は、ウェルチ・サタースウェイトの式で求め、整数にならないことが多い。
誤答しやすい選択肢
ウェルチの検定でもプールした分散を使う
修正: ウェルチの検定は分散をまとめません。各標本分散を各標本サイズで割った値の和の平方根が分母です。
ウェルチの検定の自由度を N1+N2-2 とする
修正: N1+N2-2 は等分散を仮定する場合の自由度です。ウェルチの検定はウェルチ・サタースウェイトの式で求めます。
対応のあるデータにこの2つの検定を当てはめる
修正: どちらも対応のないデータの検定です。同じ対象の前後などは、各組の差を作る対応のあるt検定です。
確認問題
Q1対応のない2標本で、母分散が等しいとは限らない場合に使う母平均の差の検定は?
答え: ウェルチの検定
各標本分散を各標本サイズで割った値の和の平方根でt統計量を求め、自由度はウェルチ・サタースウェイトの式で求めます。
Q2等分散を仮定する2標本t検定の自由度は、標本サイズN1、N2を使うとどう表されるか。
答え: N1+N2-2
プールした分散を使う場合の自由度です。
Q3ウェルチの検定のt統計量の分母は、s1²、s2²、N1、N2を使うとどう表されるか。
答え: s1²/N1 と s2²/N2 の和の平方根
分散をまとめず、各標本分散を各標本サイズで割ってから足します。
到達チェック
- 等分散を仮定する検定が、分散をプールして自由度 N1+N2-2 を使うと説明できる
- ウェルチの検定が、分散をプールせず s1²/N1 と s2²/N2 の和の平方根を使うと説明できる
- ウェルチの検定の自由度が、ウェルチ・サタースウェイトの式で求められると説明できる
関連ページで確認する
同じ資格で次に知りたいこと
- 多重共線性と相関係数の違い(重回帰での見方)|統計検定2級で整理する
統計検定2級の多重共線性と相関係数の違いを、何を表す語か、説明変数どうしの相関が強いときに回帰係数で何が起こるかという重回帰での見方で整理し、確認問題つきで解説します。
- 外れ値の見つけ方と扱い方(箱ひげ図・四分位範囲・平均と中央値への影響)
外れ値の見つけ方(箱ひげ図、四分位範囲、1.5×IQの境界)と、見つけた後の扱い方、平均と中央値への影響を、計算例つきで整理します。統計検定2級での判断手順と確認問題も示します。
- 最小二乗法と残差|統計検定2級で整理する
統計検定2級の最小二乗法を、残差との関係、傾きと切片の求め方、回帰直線が平均点を通る理由、残差標準偏差までを数値例つきで整理します。確認問題つき。
よくある質問
Qウェルチの検定とは?
対応のない2つの標本で、母分散が等しいとは限らないとして母平均の差を調べるt検定です。2つの標本分散をまとめずに使い、自由度はウェルチ・サタースウェイトの式で求めます。
Q等分散を仮定する2標本t検定とは?
2つの母分散が等しいと仮定し、プールした分散を使って母平均の差を調べるt検定です。自由度は N1+N2-2 です。
Qウェルチの検定は統計検定2級の範囲ですか?
公式出題範囲表は、母平均の差の検定に「分散未知で等しいとは限らない場合」を挙げています。表に「ウェルチ」という名前は書かれていません。
次に見る比較
- G検定・DS検定・統計検定2級で重なる用語10語の比較
同じ名前の用語の定義と収録章を、資格ごとに並べます。
- ベイズの定理と条件付き確率の違い(統計検定2級の式と計算例)
求める確率の向きの違いと、陽性になる確率の計算例を確かめます。
- 紛らわしい用語ペア早見表
混同しやすい用語の違いと判定の手掛かりを、資格別の一覧で確かめます。
執筆: ミナト編集部(運営者情報を見る)
![日本統計学会公式認定 統計検定2級 公式問題集[CBT対応版] の表紙](/_next/image?url=https%3A%2F%2Fm.media-amazon.com%2Fimages%2FP%2F4788920476.09._SCLZZZZZZZ_.jpg&w=256&q=75)