用語比較
ファインチューニングと転移学習の違い
ファインチューニングと転移学習は、どちらも「学習済みモデルを使い回す」方法として語られますが、モデルのどこまでを再学習するかが違います。転移学習は事前学習済みモデルのパラメータをほとんどそのまま使い、出力層だけをタスクに応じて変更・再学習します。ファインチューニングは、対象タスクに合わせて最終層を取り換えたうえで、モデル全体のパラメータを再学習します。
生成AIパスポートでは、モデルのパラメータをどこまで動かすかを先に見て、出力層だけならなぜ転移学習と呼べるのか、モデル全体ならなぜファインチューニングと呼べるのかを判断します。
このページは、両者を「追加学習」という同じ言葉でひとまとめにしてしまう人と、RAGやプロンプトエンジニアリングとの違いまで整理しきれていない人を対象にしています。事前学習済みモデルの何を変えるかという軸で、判断の手順として整理します。
公式情報の確認
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用語の定義・試験での使われ方は、生成AIパスポートの公式シラバスとの整合を確認したうえでの編集部の解説です。試験仕様は変更される場合があるため、受験前に公式情報を確認してください。
結論
転移学習
事前学習済みモデルのパラメータをほとんどそのまま使い、出力層だけをタスクに応じて変更・再学習する。
ファインチューニング
対象タスクに合わせて最終層を取り換えたうえで、モデル全体のパラメータを再学習する。
違いを表で確認
| 比較軸 | 左側の概念 | 右側の概念 |
|---|---|---|
| 再学習する範囲 | 出力層のみ | モデル全体のパラメータ |
| 既存パラメータの扱い | ほとんどそのまま使う | 更新して調整する |
| 目的の中心 | 別のタスクで学習した知識を新しい領域へ応用する | 特定タスク向けに事前学習済みモデル自体を調整する |
| 対象タスクとの関係 | 元のタスクと異なる新しい領域への適用が前提 | 対象タスクに合わせて最終層を取り換えたうえで調整する |
どこで迷っているかを切り分ける
「追加学習」という言葉でどちらも同じだと考える人
転移学習もファインチューニングも、事前学習済みモデルを土台にする点は共通しますが、モデルのどこまでを再学習するかが違います。転移学習は出力層だけを、ファインチューニングはモデル全体のパラメータを再学習すると覚え、「追加学習」という言葉だけでまとめないようにします。
RAGと混同する人
RAGは外部文書を検索して回答の文脈に加える仕組みで、モデルのパラメータ自体を変更するとは限りません。転移学習・ファインチューニングはどちらもモデル側のパラメータを変更する点で、RAGとは変える対象が異なります。
ファインチューニングをすれば別タスクにも応用できると考える人
ファインチューニングは対象タスクに合わせてモデル全体を調整する手法であり、調整後のモデルが別の新しいタスクへそのまま高い性能で対応できるとは限りません。別タスクへの知識の応用を重視する場面は、むしろ転移学習の考え方に近づきます。
具体例で使い分ける
例 1
画像分類の事前学習済みモデルを、少量データで新しいカテゴリ分類に使う場面
大量の画像で事前学習された画像分類モデルを土台に、少量の新しいカテゴリのデータだけで分類器を作りたい場面です。
- 1.事前学習済みモデルが学んだ特徴抽出の能力は、既存のパラメータのままほとんど活用します。
- 2.新しいカテゴリに対応する出力層だけを、少量のデータで変更・再学習します。
- 3.モデル全体のパラメータを大きく動かすわけではありません。
結論: 出力層だけを新しいタスクに合わせて再学習しているので、転移学習にあたります。
例 2
生成AIモデルを社内の応答スタイルに合わせて調整する場面
汎用的な事前学習済みモデルを、社内の特定の応答トーンや専門用語の使い方に合わせて調整したい場面です。
- 1.対象タスク(社内向けの応答生成)に合わせて、最終層を取り換えます。
- 2.モデル全体のパラメータを、社内データを使って再学習します。
- 3.出力層だけでなく、モデルの広い範囲を対象タスクへ合わせ込みます。
結論: モデル全体のパラメータを対象タスクに合わせて再学習しているので、ファインチューニングにあたります。
例 3
「追加学習」とだけ書かれた説明から、どちらの手法かを判断する場面
「学習済みモデルに追加学習を行う」とだけ書かれた設問で、転移学習かファインチューニングかを判断する場面です。
- 1.「追加学習」という言葉だけでは、転移学習・ファインチューニングのどちらにも当てはまり得ます。
- 2.出力層だけを変更するのか、モデル全体を再学習するのか、再学習する範囲の記述を探します。
- 3.範囲の記述がなければ、既存パラメータをどこまで固定するかという観点で設問の他の手掛かりを確認します。
結論: 「追加学習」という言葉だけでは判断できず、再学習する範囲の記述まで確認する必要があります。
問題文から答えを選ぶ手順
1. 再学習する範囲を探す
設問が出力層だけの変更を述べているか、モデル全体のパラメータの再学習を述べているかを先に読み取ります。
2. 事前学習済みパラメータの扱いを確認する
既存のパラメータをほとんどそのまま使うのか、更新して調整するのかを確認します。
3. 目的を確認する
別タスクで得た知識を新しい領域へ応用する話か、特定タスク向けにモデル自体を調整する話かを見ます。
4. RAG・プロンプトエンジニアリングと混同していないか確認する
外部文書の検索・参照や、指示文の工夫の話であれば、転移学習・ファインチューニングのどちらでもありません。
試験での見分け方
- 出力層だけを再学習し、既存パラメータをほとんど固定するなら転移学習。
- モデル全体のパラメータを対象タスクに合わせて再学習するならファインチューニング。
- 別タスクの知識を新しい領域へ応用する話なら転移学習を疑う。
- 特定タスク向けにモデル自体を調整する話ならファインチューニングを疑う。
- 外部文書の検索・参照はRAG、指示文の工夫はプロンプトエンジニアリングであり、どちらもモデルのパラメータ再学習とは異なる。
- 「追加学習」という言葉だけでは区別できず、再学習する範囲まで確認する。
誤答しやすい選択肢
転移学習とファインチューニングを「追加学習」でひとまとめにする
修正: 出力層だけを再学習するのが転移学習、モデル全体を再学習するのがファインチューニングと、再学習する範囲で区別します。
ファインチューニングすれば別タスクにも応用できると考える
修正: ファインチューニングは対象タスクに合わせた調整であり、別タスクへの応用を重視する場面は転移学習の考え方に近づきます。
RAGを転移学習・ファインチューニングの一種と考える
修正: RAGは外部文書を検索して回答の文脈に加える仕組みで、モデルのパラメータ自体を変更するとは限りません。パラメータを再学習する転移学習・ファインチューニングとは変える対象が異なります。
事前学習済みモデルを使わずに学習することを転移学習と呼ぶ
修正: 転移学習は事前学習済みモデルを土台にすることが前提です。最初から学習する場合は転移学習にあたりません。
確認問題
Q1.事前学習済みモデルのパラメータをほとんどそのまま使い、出力層だけを新しいタスクに合わせて再学習する手法は?
答え: 転移学習
既存パラメータをほとんど固定し、出力層だけを変更する点が判断根拠です。
Q2.対象タスクに合わせて最終層を取り換えたうえで、モデル全体のパラメータを再学習する手法は?
答え: ファインチューニング
モデル全体のパラメータを対象タスクへ合わせて再学習する点が判断根拠です。
Q3.外部文書を検索して回答の文脈に加える手法は、転移学習・ファインチューニングのどちらにあたる?
答え: どちらにもあたらない(RAG)
外部文書の検索・参照はRAGの処理であり、モデルのパラメータを再学習する転移学習・ファインチューニングとは変える対象が異なります。
到達チェック
- ✓転移学習を出力層だけの再学習、ファインチューニングをモデル全体の再学習として説明できる
- ✓既存パラメータをほとんど固定するか更新するかで両者を区別できる
- ✓別タスクへの知識の応用と、特定タスクへのモデル調整という目的の違いを言える
- ✓RAG・プロンプトエンジニアリングと、転移学習・ファインチューニングを変える対象で区別できる
- ✓「追加学習」という言葉だけで判断せず、再学習する範囲まで確認する
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よくある質問
転移学習とファインチューニングはどちらがよい?
目的次第です。別タスクへ知識を応用したいなら転移学習、特定タスク向けにモデル全体を調整したいならファインチューニングを検討します。
転移学習でもモデル全体を再学習することはある?
一般には出力層だけを再学習することが多いですが、既存パラメータをどこまで固定するかは手法や場面によって幅があります。設問では「出力層のみ」か「モデル全体」かの記述を確認します。
ファインチューニングすれば必ず性能が上がる?
対象タスクへの適合は進みますが、少ないデータで無理に調整すると元のモデルが持っていた汎用的な能力が損なわれることもあります。調整後の評価が必要です。
RAGは転移学習やファインチューニングの一種?
いいえ。RAGは外部文書を検索して回答の文脈に加える仕組みで、モデルのパラメータ自体を変更するとは限りません。パラメータを再学習する転移学習・ファインチューニングとは仕組みが異なります。
執筆: ミナト編集部(運営者情報を見る)