大項目9 AIに関する法律と契約
G検定の法律分野(大項目9)の整理|個人情報保護法・知的財産・契約
G検定のJDLA公式シラバス(G2024#6〜)には、大項目9「AIに関する法律と契約」があります。法律分野は、個人情報保護法、不正競争防止法などの知的財産、AI・データの利用に関する契約ガイドラインの3本柱で整理すると、用語の混同を防げます。
このページは、個人情報保護法の条文、個人情報保護委員会と経済産業省の資料を読み直し、選択肢で間違えやすい違いだけを取り出しています。
この記事の目次
公式情報の確認
試験日、料金、申込条件、試験方式など変動する情報は、公式情報を最終確認してください。 当サイトの一次情報確認日: 2026-10-02。
試験の出題範囲・実施要項は変動するため、受験前に公式情報を確認してください。
結論
- 大項目9には、個人情報・データ保護、GDPR、知的財産権、契約とガイドラインの4つの中項目がある
- 個人データは、個人情報データベース等を構成する個人情報のこと。個人情報と同じ意味ではない
- 匿名加工情報にだけ「復元できない」という定義要素がある。仮名加工情報は第三者提供が原則できない
- AI開発の契約は、結果の保証が難しいため、請負より準委任が親和的とされる。契約ガイドラインは守らされる規則ではない
大項目9の中身
シラバスのキーワード欄を、次の4つの中項目に分けて読みます。右端は、このページで確認した要点です。
| 中項目 | キーワード欄の主な語 | 要点 |
|---|---|---|
| 個人情報・データ保護(日本) | 個人情報保護法、個人識別符号、要配慮個人情報、仮名加工情報、匿名加工情報、保有個人データ、第三者提供、利用目的、委託 | 個人情報から個人データへ、対象が絞られるほど義務が増える。仮名加工と匿名加工は復元できるかで分かれる |
| GDPR(EU) | GDPR | キーワード欄に載る語。このページでは、載っているという事実の確認にとどめる |
| 知的財産権 | 著作権法、著作権法第30条の4、AI生成物、特許法、不正競争防止法、営業秘密、限定提供データ | 営業秘密と限定提供データは、要件の中身と刑事罰の有無が違う |
| 契約とガイドライン | AI・データの利用に関する契約ガイドライン、AI開発委託契約、請負契約、準委任契約、精度保証、PoC | AI開発は結果の保証が難しく、請負より準委任が親和的とされる |
倫理やガバナンスは大項目10で別に扱われ、AI倫理・AIガバナンスの整理にまとめています。大項目9の問題は第9章で演習できます。10大項目全体の位置づけは出題範囲の整理にまとめています。
個人情報保護法で押さえる4つの言葉
個人情報、個人データ、保有個人データは、対象が絞られるほど事業者の義務が増える関係にあります。このページでは、確認できた条文の範囲で次の4点を整理します。
- 個人データは、個人情報データベース等を構成する個人情報をいう(法第16条第3項)。検索できるよう体系的に構成した集合物が個人情報データベース等で、その中身の個人情報が個人データ
- 利用目的は、できる限り特定する(法第17条第1項)。取得したときは本人への通知または公表が必要(法第21条第1項)。本人が一般的かつ合理的に予測・想定できる程度に具体的でなければならず、「医療保険事務に関すること」のような抽象的な記載では足りない
- 委託は、利用目的の達成に必要な範囲で個人データの取扱いを任せる場合で、委託先は第三者に当たらない(法第27条第5項第1号)。そのかわり、委託元には委託先への監督責任がある(法第25条)
- 委託の例として、個人情報保護委員会のガイドラインは、データの打ち込みなど情報処理の委託や、百貨店が注文品の配送のために宅配業者へ個人データを渡す場合を挙げている
一次資料: 個人情報保護委員会FAQ、個人情報保護法ガイドライン(通則編)、e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」
仮名加工情報と匿名加工情報の違い
二つを分ける線は、元の個人情報に戻せるかどうかです。復元できないことが、匿名加工情報だけの定義要素です。条文の確認ができた項目を並べます。
| 項目 | 仮名加工情報 | 匿名加工情報 |
|---|---|---|
| 定義(法第2条) | 他の情報と照合しない限り特定の個人を識別できないように加工した情報(第5項) | 特定の個人を識別できないように加工し、個人情報を復元できないようにした情報(第6項) |
| 利用目的の範囲 | 特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱えない(法第41条第3項) | 仮名加工情報の第41条第3項のような、利用目的の範囲に限る規定は置かれていない |
| 第三者提供 | 法令に基づく場合を除き、仮名加工情報である個人データを第三者に提供できない(第41条第6項)。委託などで第三者に当たらない場合は別に整理される | あらかじめ提供する情報の項目と提供の方法を公表し、提供先に匿名加工情報である旨を明示する(第43条第4項) |
| 本人を識別するための照合 | 他の情報と照合してはならない(第41条第7項) | 自ら取り扱うときも照合してはならない(第43条第5項)。第45条は受け取った事業者にも識別行為を禁じる |
仮名加工情報は、本人への電話・郵便・電磁的方法での連絡や訪問のために、含まれる連絡先を使うことも禁じられています(法第41条第8項)。2つの用語を1対1で比べた整理は仮名加工情報と匿名加工情報の違いにあります。
一次資料: e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」第2条・第41条・第43条・第45条(2026-10-25に確認)
知的財産権:営業秘密と限定提供データ
知的財産権の中項目には、著作権法、特許法、不正競争防止法の語が並びます。このうち不正競争防止法の2つの概念は、要件の数が同じ3つのため混ざりやすい組です。
| 項目 | 3つの要件 | 不正に取得・開示・使用した場合 |
|---|---|---|
| 営業秘密 | 秘密管理性・有用性・非公知性の3要件 | 民事上の差止・損害賠償に加え、一定の要件を満たす不正な取得・開示・使用は刑事罰の対象にもなる |
| 限定提供データ | 限定提供性・相当蓄積性・電磁的管理性の3要件(営業秘密を除く) | 民事上の差止・損害賠償の対象。令和5年改正時点では刑事罰までは導入されていない |
営業秘密は「秘密にしているか」、限定提供データは「特定の者に提供するために管理しているか」が軸で、刑事罰の有無も違います。著作権法第30条の4とAI生成物の扱いは、AIの学習段階と生成・利用段階の著作権の違いに分けて整理しています。
一次資料: 経済産業省「データの利活用に向けた不正競争防止法の取組」(令和5年改正時点の整理)
契約とガイドライン:請負と準委任
経済産業省の「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」は、2018年6月に策定され、1.1版に改訂された文書です。データ編とAI編の2部構成で、事業者が従わなければならないルールではなく、契約の検討・交渉を円滑に進めるための参考としての手引きと位置づけられています。
- データ編は、データ契約をデータ提供型・データ創出型・データ共用型の3類型に整理する。データは民法上の所有権などの物権の対象にならないため、契約で利用条件を決めることが重要になる
- AI編は、AI開発契約(ベンダが学習済みモデルを開発してユーザに納品)とAI利用契約(開発済みのAI技術をユーザに利用させる)の2種を対象にする。性能の確定や保証が従来型のソフトウェアより難しいため、開発を段階に分ける探索的段階型を提唱している
- 民法では、請負は仕事の完成と、その結果への報酬の約束(第632条)。準委任は、法律行為でない事務の委託に委任の規定を準用するもの(第656条)
ガイドライン1.1版は、従来型の開発では設計・開発段階が請負型に親和的であるのに対し、学習済みモデルの生成ではどの段階でも準委任型が親和的だと説明しています。アセスメントとPoCは、そもそも学習済みモデルの完成を目的とする段階ではなく、開発段階も仕様や検収基準を契約時に確定しにくいためです。
準委任でも、成果の完成に報酬を払う成果完成型と、事務の処理割合に応じて払う履行割合型があります。請負との大きな違いは、完成義務と瑕疵担保責任の有無です。詳しい比較は請負契約と準委任契約の違いにあります。
一次資料: 経済産業省「AI・データの利用に関する契約ガイドライン 1.1版」(令和元年12月)、同「AI・データの利用に関する契約ガイドラインの概要」(2021年1月)、e-Gov法令検索「民法」第632条・第656条
選択肢の読み方
条文と資料の記載から、選択肢を次のように読みます。
- 「個人情報はすべて個人データである」は、個人データが個人情報データベース等を構成するものに限られる点と合わない
- 「委託先への提供は第三者提供にあたる」は、委託の提供先が第三者に該当しないという条文の整理と合わない
- 「仮名加工情報は復元できないように加工した情報」は、復元不能が匿名加工情報の定義要素であることと合わない
- 「限定提供データを不正に使うと刑事罰の対象になる」は、令和5年改正時点では導入されていないという整理と合わない
- 「契約ガイドラインは事業者が従う義務のある規則」は、参考としての手引きという位置づけと合わない
ここで挙げた読み方は、条文と一次資料の記載から導いたこのページの整理で、出題を予想するものではありません。
G検定の学習に使う書籍(Amazon)
試験範囲を通して読むときの1冊です。読んだ章は、このサイトの章別問題で確かめられます。
よくある質問
G検定の法律分野は、条文番号まで覚える必要がありますか?
このページが確認できたのは、JDLA公式シラバスのキーワード欄に法律名や制度名が載っているという事実までです。条文番号まで問われるかは公式に示されていないため、このページの条番号は、制度の違いを理解するための手がかりとして読んでください。
仮名加工情報と匿名加工情報の違いは何ですか?
個人情報保護法第2条の定義で、匿名加工情報にだけ「個人情報を復元することができないようにしたもの」という要素があります。仮名加工情報は、他の情報と照合しない限り特定の個人を識別できない状態にした情報です。
個人データと個人情報は同じ意味ですか?
同じではありません。個人データは、個人情報データベース等を構成する個人情報をいいます(法第16条第3項)。検索できるよう体系的に構成した集合物が個人情報データベース等で、その中身の個人情報が個人データです。
AI開発の委託契約は、請負と準委任のどちらですか?
経済産業省の契約ガイドライン(1.1版)は、学習済みモデルの生成ではどの段階でも準委任型が親和的だと説明しています。ただし当事者間の合意がない場合のデフォルトルールにすぎず、何を目的とし、成果物をどう評価し、どう報酬を払うかを契約で明確に定める必要が高いとしています。
AI・データの利用に関する契約ガイドラインは、守らないと違法ですか?
経済産業省の資料は、事業者が従わなければならないルールではなく、契約の検討や交渉を円滑に進めるための参考としての手引きと位置づけています。
