用語比較
AIの学習段階と生成・利用段階の著作権の違い
生成AIと著作権の話は、「学習に使ってよいのか」と「生成物を公表してよいのか」が混ざりやすい論点です。文化庁の文化審議会が示した『AIと著作権に関する考え方について』(令和6年3月15日)は、AI開発・学習段階と生成・利用段階では著作物の利用行為が異なり、関係する条文も異なるため、分けて考える必要があるとしています。
生成AIパスポートの公式シラバスは著作権を扱いますが、第30条の4や類似性・依拠性までは明記していません。このページは、文化庁の考え方に基づく補足です。選択肢を読むときは、学習データとして集める話は著作権法第30条の4、生成物を公表・販売する話は類似性と依拠性と、段階を先に切り分けると整理できます。AI生成物そのものが著作物かどうかは、さらに別の論点です。
このページは、学習が適法なら生成物も自由に使えると考えている人と、AIが作ったものは必ず著作権侵害の心配があると考えている人を対象にしています。段階、判断の基準、生成物の著作物性の3点から整理します。
この記事の目次
この記事の根拠と出典
各セクションの見出しの下に、公式資料で確認した内容か編集部の整理かをラベルで示しています。 試験日・料金・申込条件・試験方式は変わることがあるため、申込前に公式サイトで確認してください。生成AIパスポートの一次情報確認日: 2026-08-31。
結論
学習段階
著作物を学習用データとして収集・複製し、AIを開発する段階。著作権法第30条の4により、思想又は感情の享受を目的としない利用は、原則として許諾なく行える。著作権者の利益を不当に害する場合は除かれる。
生成・利用段階
AIで画像や文章を生成し、公表・販売する段階。通常の著作権侵害と同じ基準で、既存の著作物との類似性と依拠性があり、権利制限の対象外であれば侵害となる。
違いを表で確認
| 比較軸 | 学習段階 | 生成・利用段階 |
|---|---|---|
| 行われる行為 | 著作物を学習用データとして収集・複製し、AIを開発する | AIで生成した画像等を公表したり、複製物を販売したりする |
| 関係する条文 | 著作権法第30条の4など | 通常の著作権侵害の考え方(類似性と依拠性) |
| 判断の基準 | 思想又は感情の享受を目的としているか。著作権者の利益を不当に害しないか | 既存の著作物との類似性と依拠性があるか。権利制限規定の対象外か |
| 許諾の要否 | 非享受目的なら、原則として著作権者の許諾は不要 | 類似性と依拠性が認められれば侵害となり、許諾が必要になる場合がある |
| 適法の連鎖 | 学習が適法でも、生成物の利用まで適法になるとは限らない | 生成が適法でも、アップロード等の利用は場面ごとに判断する |
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試験範囲を通して読むときの1冊です。読んだ章は、このサイトの章別問題で確かめられます。
どこで迷っているかを切り分ける
学習が適法なら生成物も自由に使えると考える人
学習段階で第30条の4が使えても、生成物を公表・販売する段階は別に判断されます。既存の著作物と類似性と依拠性が認められれば、通常の著作権侵害と同じように扱われます。
AIが作ったものは必ず著作権侵害の心配があると考える人
既存の著作物との類似性か依拠性のどちらかが認められなければ、著作権侵害にはなりません。個人的に生成して鑑賞するだけの行為は、権利制限規定の対象になります。
プロンプトを入れれば生成物は必ず自分の著作物になると考える人
人が何も指示をしないか簡単な指示にとどまり、ボタンを押すだけでAIが生成したものは、著作物に当たらないと考えられています。著作物になるかは、創作意図と創作的寄与で判断されます。
具体例で使い分ける
例 1
文章を集めて学習用データセットを作る場面
ある開発事業者が、多数の文章を収集・複製して、AIの学習用データセットを作る場面です。
- 行為は、AIの学習データとして用いるための著作物の収集(複製)です。
- 文章を読んで楽しむ目的ではなく、情報解析のための利用です。
- 著作権者の利益を不当に害するかどうかは、なお確認が必要です。
結論: 学習段階の話で、享受する目的が併存しなければ、著作権法第30条の4の非享受目的にあたり、原則として許諾なく行えます。
例 2
生成した画像をSNSに投稿する場面
利用者が生成AIで作った画像を、SNSに公表する場面です。画像は、ある既存のイラストによく似ています。
- 行為は、生成物の公表という生成・利用段階の行為です。
- 既存のイラストと創作的表現が共通していれば、類似性があります。
- 権利者が、利用者が既存のイラストにアクセス可能だったことや高度な類似性を立証すれば、依拠性が推認されます。
- 学習されていたことが立証できれば、通常は依拠性が推認されます。ただし、学習した表現が出力される状態でなければ、依拠性なしとなり得ます。
結論: 類似性と依拠性が認められ、権利制限の対象外であれば、著作権侵害となります。
例 3
「AIと著作権」とだけ書かれた設問の場面
「生成AIと著作権の関係」とだけ書かれた設問で、何の段階を問うているかを判断する場面です。
- 「学習データ」「収集」「複製」とあれば、学習段階です。
- 「生成物を公表」「販売」「既存の作品に似ている」とあれば、生成・利用段階です。
- 「著作物にあたるか」を問うなら、生成物の著作物性という別の論点です。
結論: 設問の行為がどの段階かを先に決めてから、段階ごとの基準で選択肢を判断します。
問題文から答えを選ぶ手順
- 1
行為がどの段階かを見る
データを集めてAIを作る話か、AIで作ったものを使う話かを先に確認します。
- 2
学習段階なら非享受目的かを確認する
著作物の表現を味わうためでなく、情報解析などのための利用なら、第30条の4の対象になります。著作権者の利益を不当に害する場合は除かれます。
- 3
生成・利用段階なら類似性と依拠性を確認する
既存の著作物と創作的表現が共通し、かつ既存の著作物をもとにしている場合に、侵害の判断に進みます。
- 4
生成物が著作物かは別に確認する
AIが自律的に生成したものは著作物に当たらないと考えられます。人が道具としてAIを使い、創作的寄与があれば著作物になり得ます。
試験での見分け方
- 1学習用データの収集・複製の話は、著作権法第30条の4を思い浮かべる。
- 2生成物の公表・販売の話は、類似性と依拠性で判断する。
- 3類似性と依拠性の両方が必要で、どちらかが欠ければ侵害にならない。
- 4学習の適法性と生成物の利用の適法性は、別々に判断する。
- 5AIが自律的に生成したものは、著作物に当たらないと考えられる。
誤答しやすい選択肢
学習が適法なら生成物の利用も適法と考える
修正: 生成・利用段階は別に判断します。生成物の公表や販売は、類似性と依拠性の基準で見ます。
第30条の4を、何でも自由に使える規定と考える
修正: 享受を目的としない場合に限られます。主たる目的が非享受でも享受する目的が併存すれば適用されず、著作権者の利益を不当に害する場合も除かれます。
類似していれば必ず侵害になると考える
修正: 侵害には、類似性に加えて依拠性が必要です。どちらかが認められなければ侵害にはなりません。
AI自体が著作者になれると考える
修正: 著作者となれるのは人(自然人又は法人)だけで、AI自体が著作者になることはありません。
確認問題
Q1AIの学習データとして著作物を収集・複製する行為に、関係する著作権法の条文は?
答え: 第30条の4
思想又は感情の享受を目的としない利用は、原則として許諾なく行えます。ただし、著作権者の利益を不当に害する場合は除かれます。
Q2生成AIの生成物が既存の著作物の著作権侵害になる要件として、必要な2つは?
答え: 類似性と依拠性
既存の著作物との創作的表現の共通(類似性)と、既存の著作物をもとにした創作(依拠性)の両方が必要です。
Q3人が簡単な指示を出して「生成」を押すだけでAIが作った画像は、著作物に当たる?
答え: 当たらないと考えられる
AIが自律的に生成したものは、思想又は感情を創作的に表現したものとはいえないと考えられています。
到達チェック
- 学習段階と生成・利用段階を分けて説明できる
- 著作権法第30条の4の非享受目的と、不当に害する場合の除外を言える
- 侵害の要件が類似性と依拠性の両方であると言える
- 学習が適法でも生成物の利用は別に判断されると説明できる
- AIが自律的に生成したものは著作物に当たらないと考えられることを言える
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よくある質問
Q生成AIの学習に著作物を使うのは、必ず許諾が必要?
いいえ。著作権法第30条の4は、思想又は感情の享受を目的としない利用を、その必要な限度で認めています。ただし、著作権者の利益を不当に害する場合は除かれます。
Q既存の作品と似た画像が生成されたら侵害になる?
類似性と依拠性の両方が認められ、権利制限の対象外であれば侵害になります。依拠性は、アクセス可能性や高度な類似性が立証された場合、また学習されていたことが立証できた場合に、通常は推認されます。ただし、学習した表現が出力される状態でなければ、依拠性なしとなり得ます。
Q生成した画像を自分で見るだけなら許諾が必要?
個人的に生成して鑑賞する行為は、私的使用のための複製など権利制限規定の対象となる行為にあたり、許諾は不要です。
QAIが作った文章や画像は著作物になる?
AIが自律的に生成したものは著作物に当たらないと考えられます。人が創作意図をもち、道具としてAIを使い、創作的寄与を行ったと認められれば、著作物になり得ます。
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