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第4章 標本分布と推定(区間推定)

相関係数の区間推定(フィッシャーのz変換で信頼区間を求める手順)

統計検定2級の公式出題範囲には、母平均・母分散・母比率の区間推定とならんで、相関係数の区間推定があります。相関係数rは、フィッシャーのz変換でzに直すと近似的に正規分布に従うので、zで区間を作ってからrに戻します。

このページは、標本相関係数 r = 0.6、標本の大きさ n = 30 の例で、95%信頼区間を最後まで計算します。区間が左右対称にならない理由と、標本の大きさを変えたときの幅も確かめます。

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結論

  1. z = (1/2) ln((1+r)/(1−r))。rをこの式でzに直す
  2. zは近似的に正規分布に従い、標準偏差(標準誤差)は 1/√(n−3)
  3. 95%信頼区間は z ± 1.96 × 1/√(n−3)
  4. 得られた上限と下限を r = (e^(2z)−1)/(e^(2z)+1) でrに戻す
  5. rに戻した区間は、rを中心に左右対称にならない。nが大きいほど狭くなる

rをそのまま正規分布で扱えない理由

Wikipediaの説明では、標本相関係数が1や−1に近いとき、その分布は大きく歪みます。そのため、母相関係数の信頼区間を作ったり検定したりするのが難しくなります。

フィッシャーのz変換はこの問題を解く変換です。変換後の値は近似的に正規分布に従い、分散はrの値によらず安定します。母集団が2変数の正規分布に従い、データの組が互いに独立同分布であることが前提です。標準偏差は 1/√(N−3) で、Nは標本の大きさです。

母平均の区間推定との対応は、次のとおりです。母平均では「標本平均 ± 1.96 × 標準誤差」と書きます。相関係数では、標本平均の代わりにz、標準誤差に 1/√(n−3) を置きます。区間推定の一般的な考え方は信頼区間の求め方で確認できます。

r=0.6・n=30で計算する

計算例です(このページの架空のデータです)。30組のデータから標本相関係数 r = 0.6 が得られたとして、母相関係数の95%信頼区間を求めます。

  1. zに直す:z = (1/2) ln((1+0.6)/(1−0.6)) = (1/2) ln 4 ≒ 0.693
  2. 標準誤差:1/√(30−3) = 1/√27 ≒ 0.192
  3. 幅:1.96 × 0.192 ≒ 0.377
  4. zの区間:0.693 − 0.377 = 0.316 から、0.693 + 0.377 = 1.070
  5. rに戻す:下限は (e^0.632 − 1)/(e^0.632 + 1) ≒ 0.31、上限は (e^2.141 − 1)/(e^2.141 + 1) ≒ 0.79

母相関係数の95%信頼区間は、おおよそ0.31から0.79です。標本では0.6と中程度以上の相関に見えても、30組では母集団の相関が0.3台から0.8近くまでありうる、と読みます。

区間が左右対称にならない

上の例で、rの上の幅を比べます。下側は 0.6 − 0.31 = 0.29、上側は 0.79 − 0.6 = 0.19 で、下側のほうが広くなっています。対称なのはz変換した値の上の区間で、rに戻す変換が直線でないために、rの上では歪みます。

rが1に近いほど、戻した区間は上側が詰まり、下側に伸びます。別の例として、r = 0.8・n = 12 を考えます。zは約1.099、標準誤差は 1/√9 ≒ 0.333、幅は約0.653なので、zの区間は 0.445 から 1.752 です。rに戻すと約0.42から0.94で、rより下に0.38、上に0.14の幅です。区間の上限が1を超えることはありません。

標本の大きさで幅が変わる

同じ r = 0.6 でも、標本の大きさが大きいほど標準誤差が小さくなり、区間が狭くなります。r = 0.6 のまま n を変えた結果です。

標本の大きさ n標準誤差 1/√(n−3)1.96×標準誤差zの区間rの区間(95%)
301/√27 ≒ 0.1920.3770.316 〜 1.0700.31 〜 0.79
1001/√97 ≒ 0.1020.1990.494 〜 0.8920.46 〜 0.71

nが30から100に増えると、区間の幅は約0.48から約0.25へ、およそ半分になります。標準誤差が 1/√(n−3) なので、幅を半分にするには標本の大きさをおよそ4倍にする必要があります。

無相関の検定への使い方

区間が0を含むかどうかで、「母相関係数は0である」という帰無仮説の検定と同じ結論になります。95%信頼区間が0を含まなければ、有意水準5%(両側)で無相関は棄却されます。

検定統計量で書くと、帰無仮説 ρ = 0 のもとでzの平均は0なので、検定統計量は z × √(n−3) です。標本の大きさが30、標本相関係数が0.5のとき、z = (1/2) ln 3 ≒ 0.549、検定統計量は 0.549 × √27 ≒ 2.85 です。2.85は標準正規分布の1.96を上回るので、5%水準で母相関係数が0とは言えません。ここでの検定の流れは、仮説検定の手順と同じです。なお、公式出題範囲で相関係数について挙げられているのは区間推定です。この検定の節は、区間との対応を確かめるための導出です。

問題文から読み取る

問題文の言い回しから、確かめる点を決められます。このページの計算例から導いた読み方で、出題を予想するものではありません。

  • 「相関係数の信頼区間」とあれば、まずzに直し、標準誤差 1/√(n−3) を使う
  • 標準誤差の分母が n、n−1、n−2 になっている選択肢は、n−3 でないので誤り
  • 「rを中心に ± 1.96 × 標準誤差」と直接書いた選択肢は、z変換を飛ばしている
  • rに戻した区間が1を超えていれば、戻す計算の誤り
  • 「標本の大きさを増やすと区間は広がる」は誤り。標準誤差が小さくなり、区間は狭まる

よくある質問

相関係数の区間推定は、統計検定2級の公式出題範囲にありますか?

あります。統計検定センターの2級の出題範囲表には、1つの母集団の母数の区間推定として、正規母集団の母平均・母分散の区間推定、母比率の区間推定とならび、相関係数の区間推定が挙げられています。

z変換の式 z=(1/2)ln((1+r)/(1−r)) は覚える必要がありますか?

式そのものの暗記より、手順の理解が先です。rをzに直し、標準誤差 1/√(n−3) で通常の正規分布の区間を作り、最後にrへ戻します。式や変換表が問題文に与えられるかは、受験前に過去問と公式の出題範囲で確認してください。

標準誤差の n−3 は、n−1 や n−2 ではないのですか?

相関係数の区間推定では n−3 です。単回帰の係数の検定などで出てくる n−2 とは別物です。Wikipediaの説明では、z変換した値の標準偏差は 1/√(N−3) とされています。

信頼区間が r を中心に左右対称にならないのは計算ミスですか?

計算ミスではありません。区間はz変換した値の上で左右対称に作り、その後でrに戻すため、rの上では左右の幅が違います。r=0.6・n=30 の例では、区間の下限は0.6より0.29低く、上限は0.6より0.19高くなります。

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執筆: ミナト編集部(運営者情報を見る)