用語比較
肖像権とパブリシティ権の違い
肖像権とパブリシティ権は、どちらも人の氏名や容ぼうの無断利用に関わる権利です。ただし、守る対象が違います。肖像権は、人格に由来して、肖像をみだりに利用されない権利です。パブリシティ権は、肖像などの顧客吸引力(商品の販売を促す力)を、排他的に利用する権利です。
生成AIパスポートのシラバスでは、「制作物に関わる権利」の項目に、肖像権とパブリシティ権が並びます。人格に由来して無断で使われない権利が肖像権、顧客吸引力という商業的価値を独占的に使う権利がパブリシティ権と分けると、設問の説明文で判定できます。
このページでは、守る利益、侵害になる場面、最高裁判決の判断枠組みという三つの軸で比較します。最高裁平成24年2月2日判決の判決文で確かめた内容だけを使い、設問で使える判断手順と、取り違えやすい点まで整理します。
この記事の目次
この記事の根拠と出典
各セクションの見出しの下に、公式資料で確認した内容か編集部の整理かをラベルで示しています。 試験日・料金・申込条件・試験方式は変わることがあるため、申込前に公式サイトで確認してください。生成AIパスポートの一次情報確認日: 2026-08-31。
結論
肖像権
人の氏名・肖像等は個人の人格の象徴であり、個人は、人格権に由来するものとして、これをみだりに利用されない権利を有すると解される(最高裁平成24年2月2日判決)。
パブリシティ権
肖像等の顧客吸引力を排他的に利用する権利。肖像等それ自体の商業的価値に基づき、上記の人格権に由来する権利の一内容を構成する(同判決)。
違いを表で確認
| 比較軸 | 肖像権 | パブリシティ権 |
|---|---|---|
| 守る利益 | 人格に関わる利益(人格の象徴としての肖像) | 肖像等それ自体の商業的価値(顧客吸引力) |
| 権利の中身 | 肖像等をみだりに利用されない | 顧客吸引力を排他的に利用する |
| 判決上の位置付け | 人格権に由来する権利 | 人格権に由来する権利の一内容 |
| 侵害になる場面 | 人格の象徴としての肖像等を、みだりに利用すること | 専ら顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合(商品化、商品の差別化、広告など) |
| 選択肢で探すキーワード | 人格、人格の象徴、みだりに利用されない | 顧客吸引力、商業的価値、広告、商品化、専ら |
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試験範囲を通して読むときの1冊です。読んだ章は、このサイトの章別問題で確かめられます。
どこで迷っているかを切り分ける
二つを同じ権利の別名だと思っている人
どちらも無断利用に関わるため、同じ権利に見えます。ところが、判決は、パブリシティ権を、人格権に由来する権利の一内容とし、その根拠を、肖像等それ自体の商業的価値に置いています。人格に着目するか、商業的価値に着目するかで、設問の説明を切り分けます。
生成AIで有名人に似た画像を作ろうとしている人
生成AIパスポートのシラバスは、知的財産権や著作権と並べて、肖像権とパブリシティ権を挙げています。シラバス上は別のキーワードなので、別の権利として確認します。著作権側の整理は、学習段階と生成・利用段階の比較ページで確認できます。
広告に使わなければ、何に使っても問題ないと考える人
判決が違法とする場面は、広告、商品への付与、商品化などに限られません。判決は「など」と書いており、専ら顧客吸引力の利用を目的とするといえるかどうかで判断します。設問では、使い方の呼び名ではなく、その目的が顧客吸引力の利用に当たるかどうかを見ます。
具体例で使い分ける
例 1
芸能人の写真を、商品の広告に無断で使う場合
あるサービスの宣伝画像に、有名な歌手の写真を、本人の承諾なく使っています。
- 判決は、肖像等を商品等の広告として使用することを、専ら顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合の例に挙げています。
- この場合は、パブリシティ権を侵害するものとして、不法行為法上違法となります。
- 設問が顧客吸引力や商業的価値を問うているなら、答えはパブリシティ権です。
結論: 広告での無断使用で、顧客吸引力の利用が問われているなら、パブリシティ権を選びます。
例 2
雑誌が、記事の内容に合わせて歌手の写真を無断で載せた場合
週刊誌が、歌手の曲の振り付けを使ったダイエット法の記事に、その歌手の写真を使っています。承諾は得ていません。
- これは、判決の事案そのものです。最高裁は、記事がダイエット法の解説と思い出の紹介で、写真は約200頁の雑誌の3頁で使われたにすぎないことなどを理由に挙げました。
- そのうえで、専ら顧客吸引力の利用を目的とするものとはいえず、パブリシティ権の侵害として違法とはいえないと判断しました。
- 無断だから違法、という単純な結論にはなりません。
結論: 無断使用でも、専ら顧客吸引力の利用が目的といえなければ、パブリシティ権の侵害にはなりません。
例 3
説明文に『顧客吸引力を排他的に利用する権利』とある場合
ある権利を、肖像等の持つ顧客吸引力を排他的に利用する権利と説明しています。
- 判決は、この定義を、パブリシティ権として示しています。
- 人格の象徴として、みだりに利用されない権利という説明ではないため、肖像権の説明ではありません。
結論: 顧客吸引力という語があれば、パブリシティ権を選びます。
問題文から答えを選ぶ手順
- 1
守る利益を確認する
人格に着目した説明なら肖像権、顧客吸引力や商業的価値に着目した説明ならパブリシティ権です。
- 2
『顧客吸引力』『商業的価値』の語を探す
この2語は判決がパブリシティ権を説明するときに使う語なので、説明文にあればパブリシティ権と判断できます。
- 3
『専ら』を確認する
パブリシティ権の侵害は、専ら顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に認められます。目的が別にある使用は、侵害にならない場合があります。
- 4
侵害の判断は目的で見る
パブリシティ権は、使用の目的が専ら顧客吸引力の利用といえるかで判断されます。記事の内容を補う使用などは、違法とされない場合があります。
試験での見分け方
- 1人格に由来して、肖像等をみだりに利用されない権利は、肖像権。
- 2肖像等の顧客吸引力を排他的に利用する権利は、パブリシティ権。
- 3パブリシティ権は、肖像等それ自体の商業的価値に基づく。
- 4パブリシティ権の侵害は、専ら顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に認められる。
- 5肖像等を商品等の広告として使用するのは、専ら顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合の例。
- 6時事報道、論説、創作物等への使用は、正当な表現行為等として受忍すべき場合もある。
誤答しやすい選択肢
無断で使えば、必ずパブリシティ権の侵害になると思う
修正: 判決は、専ら顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に、侵害として違法になるとします。記事内容を補う目的の写真掲載は、違法とされませんでした。
パブリシティ権は人格権と無関係だと思う
修正: 判決は、パブリシティ権を、人格権に由来する権利の一内容と位置づけています。ただし、守る対象は、人格ではなく、肖像等それ自体の商業的価値です。
パブリシティ権の侵害を、著作権の侵害と同じものと思う
修正: 判決が問題にしたのは、肖像等の顧客吸引力を排他的に利用する権利です。シラバスでも、著作権とは別のキーワードとして肖像権・パブリシティ権が並んでいます。設問の説明文が何を守る権利かで見分けます。
報道や論説での使用も、必ず許されないと思う
修正: 判決は、顧客吸引力を有する者の肖像等が、時事報道、論説、創作物等に使用されることもあり、その使用を正当な表現行為等として受忍すべき場合もあると述べます。使用の目的を見て判断します。
確認問題
Q1肖像等の顧客吸引力を排他的に利用する権利を、何といいますか?
答え: パブリシティ権
最高裁平成24年2月2日判決は、肖像等の顧客吸引力を排他的に利用する権利を、パブリシティ権と呼んでいます。
Q2判決によれば、パブリシティ権の侵害として違法になるのは、どのような目的で肖像等を使用する場合ですか?
答え: 専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合
判決は、肖像等それ自体を鑑賞の対象となる商品等として使用する、商品等の差別化のために付す、商品等の広告として使用する、などの場合を挙げています。
Q3判決によれば、人の氏名・肖像等について、個人が人格権に由来するものとして有する権利は何ですか?
答え: これをみだりに利用されない権利
判決は、氏名・肖像等を個人の人格の象徴とし、個人は、人格権に由来するものとして、みだりに利用されない権利を有すると解されるとしています。
到達チェック
- 肖像権が守る利益を、人格という語で説明できる
- パブリシティ権が守る利益を、商業的価値という語で説明できる
- 『顧客吸引力』の語からパブリシティ権と判定できる
- 『専ら』の要件を説明できる
- 著作権との違いを、対象の面から説明できる
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よくある質問
Qパブリシティ権は、肖像権の一種ですか?
最高裁平成24年2月2日判決は、パブリシティ権を、人格権に由来する権利の一内容と位置づけています。ただし、守るのは、肖像等それ自体の商業的価値です。
Q有名人の写真を無断で使うと、必ず違法ですか?
いいえ。判決は、専ら顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に、パブリシティ権の侵害として違法になるとします。時事報道などでの使用は、受忍すべき場合もあるとしています。
Qパブリシティ権の定義は、どこで確認できますか?
最高裁平成24年2月2日判決の判決文が、肖像等の顧客吸引力を排他的に利用する権利を、パブリシティ権と呼んでいます。裁判所のサイトで全文を読めます。
Q試験中に二つを最短で見分ける方法は?
『人格』『みだりに利用されない』の語があれば肖像権、『顧客吸引力』『商業的価値』の語があればパブリシティ権と判定します。
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執筆: ミナト編集部(運営者情報を見る)
