大項目2 人工知能をめぐる動向(知識表現とエキスパートシステム)
G検定のエキスパートシステム(MYCIN・DENDRAL・ELIZA)
G検定の出題範囲には、知識表現とエキスパートシステムの用語として、MYCIN、DENDRAL、ELIZA、意味ネットワーク、Cycプロジェクト、オントロジー、is-a関係、part-of関係があります。このページは、3本の規則による推論と、4つのノードの意味ネットワークを自分で追って、用語を区別します。固有名詞が多い分野は、「何をするシステムか」を一言で言えるようにすると、選択肢を選びやすくなります。
規則・ネットワーク・入力文の例はすべて架空です。出題を予想するものではありません。
この記事の目次
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結論
- エキスパートシステムは、専門家の知識を「もしAならばB」の規則で表し、推論エンジンで結論を導く仕組み
- DENDRALは有機分子の構造候補、MYCINは感染症の原因菌と抗生物質、ELIZAはキーワードによる会話の模倣
- 意味ネットワークは概念をノード、関係をリンクで表し、is-aは「種類」、part-ofは「部分」を表す
- オントロジーは分野の用語と関係を形式的に定義したもので、Cycは常識を集めた大規模な知識ベースを作る試み
- 課題は、専門家から知識を取り出す手間と、知識ベースの更新だった
エキスパートシステムの仕組み
英語版Wikipediaは、エキスパートシステムを、従来のプログラムの手順ではなく、主に「if-then」の規則で表した知識を使って複雑な問題を解くものと説明しています。構成は次の2つです。
- 知識ベース:事実と規則を保存する部分
- 推論エンジン:規則を既知の事実に当てはめて、新しい事実を導く部分
知識を規則として書き出す作業が必要なので、専門家の時間を確保しにくいことが、最もよく挙げられる欠点です。英語版Wikipediaは、知識獲得の難しさと、知識ベースを素早く更新する難しさを課題として挙げています。
3本の規則で前向き推論と後ろ向き推論を追う
家電の故障診断を例にした、架空の3本の規則です。
- 規則1:もし「電源ランプが消えている」かつ「コンセントは差し込み済み」ならば、「電源部の故障の疑い」
- 規則2:もし「電源部の故障の疑い」ならば、「修理窓口に連絡する」
- 規則3:もし「電源ランプが点いている」かつ「画面が映らない」ならば、「映像ケーブルを確認する」
英語版Wikipediaによると、推論エンジンには2つの進め方があります。前向き推論は、規則の条件部が成り立つと結論部を新しい事実として追加します。後ろ向き推論は、可能な結論から出発して、その結論が成り立つかをさかのぼって調べます。
事実が「電源ランプが消えている」「コンセントは差し込み済み」の2つのときの前向き推論は、次の順です。
- 規則1の条件が2つとも成り立つので、「電源部の故障の疑い」を事実に追加する
- 規則2の条件が成り立つので、「修理窓口に連絡する」を事実に追加する
- 規則3は条件が成り立たないので、使わない
同じ問題を、「修理窓口に連絡すべきか」という目標から後ろ向きに調べると、規則2が必要とする「電源部の故障の疑い」、その根拠の規則1が必要とする2つの条件、の順にさかのぼり、条件を確認します。前向きは事実から結論へ、後ろ向きは目標から条件へ進みます。
MYCIN・DENDRAL・ELIZAを区別する
3つとも古いプログラムの名前ですが、何をするものかが違います。英語版Wikipediaの記述を整理すると、次のとおりです。
| 名前 | 時期 | 何をするか | 覚える点 |
|---|---|---|---|
| DENDRAL | 1964年に始まった | 質量スペクトルなどのデータと化学の知識から、未知の有機分子の構造の候補を出す | スタンフォード大学で開発。特定分野の知識を使う代表例 |
| MYCIN | 1970年代前半に開発 | 重い感染症の原因菌を特定し、抗生物質を推奨する | スタンフォード大学で開発。約600本の規則と後ろ向き推論。日常の診療では使われなかった |
| ELIZA | 1964年から1967年に開発 | 入力のキーワードを見つけ、文を変換して返答する | MITのワイゼンバウムが開発。意味を理解せず、パターンの照合と置き換えで会話を模した |
MYCINとDENDRALは専門分野の知識で推論するシステム、ELIZAは推論せずに言い換えで会話を続けるシステムです。ELIZAは、たとえば「私は疲れています」という入力のキーワードを見つけ、「なぜ疲れているのですか」という文に置き換える、といった仕組みです(この文は架空の例です)。
MYCINについて、英語版Wikipediaは、性能の弱さが理由ではなく、日常の診療で使われなかった最大の理由は、他のシステムとつなぐ技術が当時未熟だったことだと説明しています。MYCINは単独で動くシステムで、患者の情報を利用者が質問に答えて手で入力する必要がありました。誤診したときの医師の責任など、倫理的・法的な問題を挙げた論者もいたと併記されています。
意味ネットワークと is-a・part-of
英語版Wikipediaは、意味ネットワークを、概念どうしの意味的な関係をネットワークで表す知識ベースと説明しています。概念がノード、関係がリンク(弧)です。
よく使われる関係には、部分を表す関係(AはBの一部)と、種類を表す関係(AはBの一種)があります。G検定の用語では、前者がpart-of、後者がis-aです。
架空の4ノードで確かめます。
- 犬 is-a 哺乳類
- 哺乳類 is-a 動物
- 尻尾 part-of 犬
is-aをたどると、犬は哺乳類で、哺乳類は動物なので、犬は動物だと言えます。part-ofは種類ではなく部分の関係なので、「尻尾は犬の一種」とは言えず、「尻尾は犬の一部」です。問題文では、「一種」か「一部」かの言葉が、関係を見分ける目印になります。
オントロジーとCyc
英語版Wikipediaによると、情報科学のオントロジーは、ある分野に関わる概念、データ、実体のカテゴリ、性質、関係を、形式的に名づけて定義したものです。ほとんどのオントロジーは、個体、クラス(概念)、属性、関係を記述します。 先ほどの意味ネットワークに、用語の定義と関係の決まりを加えて整理した形だと考えると、つながりがわかります。
Cycは、世界の基本的な概念と規則を集めた包括的なオントロジーと知識ベースを作る、長期のAIプロジェクトです。常識的な知識を取り込むことを目指し、1984年7月にダグラス・レナートがMCCで始めました。専門分野に限らず常識を網羅しようとした点が、MYCINやDENDRALとの違いです。
問題文から読み取る
このページの内容から導いた読み方です。出題を予想するものではありません。
- 「感染症の原因菌の特定と抗生物質の推奨」とあれば、MYCIN
- 「質量分析のデータから有機化合物の構造を推定する」とあれば、DENDRAL
- 「キーワードの照合で対話を続ける」とあれば、ELIZA
- 「概念をノード、関係をリンクで表す」とあれば、意味ネットワーク
- 「一種である」ならis-a、「一部である」ならpart-of
- 「常識的な知識を大規模に記述する」とあれば、Cycプロジェクト
G検定の学習に使う書籍(Amazon)
試験範囲を通して読むときの1冊です。読んだ章は、このサイトの章別問題で確かめられます。
よくある質問
エキスパートシステムとは何ですか?
専門家の知識を「もしAならばB」という規則で表し、その規則を使って推論する仕組みです。英語版Wikipediaは、知識ベース(事実と規則)と、規則を事実に当てはめて新しい事実を導く推論エンジンの2つの部分で構成されると説明しています。
MYCINとDENDRALの違いは何ですか?
扱う分野が違います。MYCINは感染症の原因菌の特定と抗生物質の推奨、DENDRALは質量スペクトルから有機分子の構造候補を出す化学の分野です。どちらも1960年代から1970年代にスタンフォード大学で開発されました。
ELIZAはエキスパートシステムですか?
ELIZAは、専門知識の推論ではなく、入力文のキーワードを見つけて返答の文に変換する対話プログラムです。英語版Wikipediaは、ELIZAが文の意味を理解せず、パターンの照合と置き換えで理解しているような錯覚を与えたと説明しています。MYCINやDENDRALとは目的が違います。
is-a関係とpart-of関係は何が違いますか?
is-aは「Aは一種のBである」という種類の関係、part-ofは「AはBの一部である」という部分の関係です。たとえば、犬はis-aで哺乳類につながり、尻尾はpart-ofで犬につながります。尻尾は犬の一種ではなく、犬の一部です。
Cycプロジェクトは何を目指したものですか?
世界の基本的な概念と規則を集めた、包括的なオントロジーと知識ベースを作る長期のAIプロジェクトです。英語版Wikipediaによると、常識的な知識を取り込むことを目指し、1984年7月にダグラス・レナートがMCCで始めました。
