生成AIの技術の基礎
拡散モデルとは(拡散過程と逆拡散過程)
拡散モデルは、生成AIパスポートの公式シラバスで、第1章と第2章に詳細キーワードとして載る、画像や動画の生成の技術です。拡散モデルは、データにノイズを少しずつ加える過程を逆にたどり、ノイズから新しいデータを作る生成モデルです。
このページは、原論文と公式シラバスの範囲で、拡散過程と逆拡散過程、潜在拡散モデル、GAN・VAEとの区別、出る章を整理しています。
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結論
- 拡散モデルは、ノイズを加える過程(拡散過程)を逆にたどって生成する
- 学習の対象は、ノイズを取り除く逆拡散過程
- 潜在拡散モデルは、拡散を画素ではなく潜在空間で行い、計算量を減らした方式
- 設問では「生成器と識別器」ならGAN、「ノイズを取り除く」なら拡散モデル、「エンコーダ・デコーダ・潜在ベクトル」ならVAEで見分ける
拡散過程と逆拡散過程
拡散モデルの考え方は、2015年の論文が示しています。データの構造を、繰り返しの拡散過程でゆっくり壊し、その逆の過程を学習することで、構造を元に戻す生成モデルにする、という内容です。2020年のDDPM(Denoising Diffusion Probabilistic Models)の論文は、この方式で高品質な画像を生成できると示しました。
| 名前 | 内容 |
|---|---|
| 拡散過程(順方向) | データに少しずつガウスノイズを加え、元の信号が壊れるまで続ける。DDPMの論文では、ノイズの量を決めるスケジュールを固定して進める |
| 逆拡散過程(逆方向) | ノイズだけの状態から、ノイズを少しずつ取り除いてデータに戻す。この向きの変換をニューラルネットワークが学習する |
DDPMの論文は、生成の側を、ノイズだけの状態から始まる連鎖として定義します。ノイズを加える側は、分散のスケジュールに従ってガウスノイズを段階ごとに加える連鎖で、論文の主な設定ではこの分散を固定し、学習するのは逆向きの変換です。「加えるのは決まった手順、学ぶのは取り除く手順」と覚えると、拡散過程と逆拡散過程の取り違えを防げます。
一次資料: Sohl-Dickstein et al.「Deep Unsupervised Learning using Nonequilibrium Thermodynamics」(arXiv 1503.03585)、Ho et al.「Denoising Diffusion Probabilistic Models」(arXiv 2006.11239)
潜在拡散モデルとは
DDPMの拡散モデルは、データと同じ次元の変数を扱います。画像なら画素の並びそのものにノイズを加え、取り除きます。潜在拡散モデル(Latent Diffusion Model、LDM)の論文は、このように画素空間で動かす拡散モデルは、強力なものの学習に数百GPU日かかることがあり、推論も段階ごとの計算を順に行うため高価だと指摘しています。
そこでLDMは、事前学習済みのオートエンコーダが作る潜在空間で拡散モデルを動かします。さらに、モデルの中にクロスアテンション層を入れることで、テキストなどの条件を入力として受け取れる生成器にしています。潜在拡散モデルは「ノイズの加減を画素ではなく圧縮した表現の上で行う」方式で、計算量を大きく減らせる点が要点です。
一次資料: Rombach et al.「High-Resolution Image Synthesis with Latent Diffusion Models」(arXiv 2112.10752、CVPR 2022)
GAN・VAEとの区別
第1章のシラバスには、GANとVAEも並びます。設問の説明文のどの語に反応するかで見分けます。
| 観点 | 拡散モデル | GAN | VAE |
|---|---|---|---|
| 説明文で見分ける語 | 拡散過程、逆拡散過程、ノイズを段階的に取り除く | 生成器、識別器 | エンコーダ、デコーダ、潜在ベクトル、ノイズ |
| 生成のしくみ | ノイズから、ノイズを少しずつ取り除いて作る | 生成器が作り、識別器が本物かを見分ける。2つを同時に学習する | データを潜在ベクトルに圧縮し、デコーダで復元して作る |
「ノイズ」という語はVAEの詳細キーワードにも載るため、説明文に出たときは「段階的に取り除く」のか「潜在ベクトルに混ぜる」のかまで読みます。シラバスの詳細キーワードにある語は、生成器、エンコーダ、デコーダ、潜在ベクトル、ノイズ、拡散過程、逆拡散過程です。識別器や「段階的に取り除く」は、解説上の言い換えです。 GANの原論文(arXiv 1406.2661)は、生成モデルと識別モデルを同時に訓練する枠組みです。VAEの原論文(arXiv 1312.6114)は、観測データから潜在変数を推論するエンコーダと、潜在変数からデータを作るデコーダを使います。
シラバスのどこに出るか
2027年2月試験から適用される公式シラバスでは、次の3か所に拡散モデルが載っています。
| 場所 | 内容 |
|---|---|
| 第1章 中項目「AIの歴史」 | 詳細キーワードに拡散モデル(Diffusion Model)が載る |
| 第2章 中項目「生成AIを支える技術革新(Transformer以降)」の学習項目「拡散モデルの登場」 | 詳細キーワードに拡散モデル(Diffusion Model)、拡散過程、逆拡散過程、潜在拡散モデル(Latent Diffusion Model)が載る |
| 第2章 中項目「各モダリティの生成AI」の学習項目「動画生成AI」 | 詳細キーワードに動画生成AI、ディープフェイク、拡散モデル、本人の同意が並ぶ |
第1章は「拡散モデルという語」、第2章は「拡散過程・逆拡散過程・潜在拡散モデル」まで区別する語として読みます。動画生成AIの項ではディープフェイクや本人の同意と並ぶため、悪用への備えはディープフェイクとはとつなげて読みます。 章立ての変更は2027年2月試験の新シラバスに整理しています。試験での出題を予想するものではありません。
よくある質問
拡散モデルとは、一言でいうと何ですか?
データに少しずつノイズを加えていく過程(拡散過程)を逆にたどり、ノイズから元のデータに近いものを作る生成モデルです。2015年の論文が考え方を示し、2020年のDDPM論文で高品質な画像生成ができると示されました。
拡散過程と逆拡散過程は、どちらが学習の対象ですか?
学習の対象は逆拡散過程です。DDPMの論文の主な設定では、ノイズを加える側の分散を固定し、逆向きの変換を学習します。
潜在拡散モデルは、ふつうの拡散モデルと何が違いますか?
拡散を画像の画素そのものではなく、事前学習済みのオートエンコーダが作る潜在空間で行う点が違います。原論文は、画素空間で動かす拡散モデルは学習に数百GPU日かかることがあり、推論も高価だと述べ、潜在空間で動かすことで必要な計算量を大きく減らせるとしています。
GANと拡散モデルは、何で見分けますか?
設問の説明文に「生成器と識別器」があればGAN、「ノイズを加える」「ノイズを取り除く」があれば拡散モデルです。VAEは「エンコーダ・デコーダ・潜在ベクトル」で見分けます。識別器や「取り除く」は、シラバスの語ではなく解説上の言い換えです。
拡散モデルは、必ず試験に出ますか?
出題を予想するものではありません。公式シラバスの詳細キーワードに載っている語として、定義と見分けるための手掛かり語を押さえておく、という範囲の話です。

