大項目6 ディープラーニングの応用例
G検定の音声処理の整理|MFCC・隠れマルコフモデル・WaveNet
G検定のJDLA公式シラバス(G2024#6〜)の大項目6「ディープラーニングの応用例」には、音声認識、音声合成、WaveNet、メル周波数ケプストラム係数(MFCC)、隠れマルコフモデルがキーワードとして並びます。音声分野は、認識(音声から言葉へ)と合成(言葉から音声へ)の向きで分け、それぞれの代表的な技術を1つずつ対応させると混ざりにくくなります。
このページは、WaveNetの原論文の抄録と、英語版Wikipediaの該当項目の記述を読み直し、選択肢で間違えやすい点だけを取り出しています。
この記事の目次
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結論
- MFCCは、フーリエ変換、メル尺度への写像、対数、離散コサイン変換の順で求める音声の特徴量
- 隠れマルコフモデルは、観測できない状態の列を、観測できる側から推定するモデルで、音声認識の従来方式で使われた
- 音声合成の方式は、連結型・フォルマント型・隠れマルコフモデル型・深層学習型に分けて読める
- WaveNetは、生の音声波形を1サンプルずつ、それ以前のすべてのサンプルに条件づけて予測する深層ニューラルネットワーク
音声分野の中身
大項目6のうち音声に関わるキーワードを、認識と合成に分けて並べます。同じ中項目にある深層強化学習とDQNは、別のページで扱っています。
| 向き | キーワード欄の主な語 | 要点 |
|---|---|---|
| 音声認識 | 音声認識、メル周波数ケプストラム係数、隠れマルコフモデル | 音声を数値の列(特徴量)に直し、その並びから言葉を推定する流れで読む |
| 音声合成 | 音声合成、WaveNet | 文字から音声を作る処理。方式は連結型・フォルマント型・隠れマルコフモデル型・深層学習型に分かれる |
時系列を扱うモデルはRNN・LSTM・GRUのページ、強化学習の側はDQNのページを見てください。10大項目全体の位置づけは出題範囲の整理にあります。
MFCC:音声を数字にする
英語版Wikipediaの「Mel-frequency cepstrum」は、MFCCを次の順で求めると説明しています。順番は、フーリエ変換、メル尺度、対数、離散コサイン変換です。なお、この工程には変形もあると同項目は述べています。
| 順 | 処理 | 中身 |
|---|---|---|
| 1 | フーリエ変換 | 短く区切った音声(窓をかけた断片)をフーリエ変換して、周波数ごとの強さ(スペクトル)にする |
| 2 | メル尺度への写像 | スペクトルの強さを、三角形が重なった窓でメル尺度の上に写す。メル尺度は、聞き手が等間隔と感じる音の高さを並べた尺度 |
| 3 | 対数 | メル尺度の各周波数について、強さの対数をとる |
| 4 | 離散コサイン変換 | メル対数強度の並びを1つの信号とみなして離散コサイン変換をかける。結果のスペクトルの振幅がMFCC |
「Speech recognition」の項は、MFCCという語は使わず、音声認識の特徴量ベクトルをケプストラム係数と呼び、短い窓のフーリエ変換で得たスペクトルをコサイン変換で無相関にし、先頭の(重要な)係数を取ったものと説明します。ベクトルは10ミリ秒ごとに出力される例が挙げられています。MFCCは、音の高さの聞こえ方に合わせて周波数を並べ替えた特徴量、と覚えると選択肢を切り分けやすくなります。
出典:英語版Wikipedia「Mel-frequency cepstrum」「Mel scale」「Speech recognition」
隠れマルコフモデル
英語版Wikipediaの「Hidden Markov model」は、隠れマルコフモデルを、観測が隠れた(潜在の)マルコフ過程に依存するモデルと定義します。隠れた過程は直接観測できないので、観測できる側の結果から隠れた側を推定することが目標になります。「隠れ」とは、状態そのものは見えず、状態から出てくる観測だけが見えるという意味です。
- 音声認識では、10ミリ秒ほどの短い時間なら音声を定常な過程と近似でき、多くの確率的な目的でマルコフモデルとみなせる、と説明されている
- 2000年代初頭の音声認識は、隠れマルコフモデルとフィードフォワード型ニューラルネットワークの組み合わせが主流で、その後LSTMが取って代わった
- 従来の隠れマルコフモデルを使う方式は、発音・音響・言語の部品を別々に学習する。エンドツーエンド方式(2014年以降に研究が進んだ)は、全部の部品を一度に学習する
用語の単独の解説は隠れマルコフモデルの用語解説と音声認識の用語解説にあります。
出典:英語版Wikipedia「Hidden Markov model」「Speech recognition」
音声合成の方式
英語版Wikipediaの「Speech synthesis」は、方式を次のように説明しています。音声合成の方式の違いは、「何を材料に音声を作るか」で読めます。
| 方式 | 項目の説明 |
|---|---|
| 連結型 | 録音した音声の断片をつなぎ合わせる方式。百科事典は、一般に最も自然に聞こえる合成音声が得られると説明する |
| フォルマント型 | 実行時に人の音声サンプルを使わず、加算合成と音響モデルで音声を作る方式 |
| 隠れマルコフモデル型 | 隠れマルコフモデルを使う方式。統計的パラメトリック合成とも呼ばれる |
| 深層学習型 | 2016年9月にDeepMindが公開したWaveNetが、深層学習で生の波形を扱えることを示し、この分野の出発点になったとされる |
出典:英語版Wikipedia「Speech synthesis」
WaveNet
WaveNetの原論文(van den Oordほか、題名は『WaveNet: A Generative Model for Raw Audio』、arXiv:1609.03499、2016年)の抄録は、WaveNetを生の音声波形を生成する深層ニューラルネットワークと紹介しています。
- モデルは完全に確率的で自己回帰的。各音声サンプルの予測分布は、それ以前のすべてのサンプルに条件づけられる
- 音声合成(テキスト読み上げ)に適用すると、英語と中国語の両方で、人間の聴取者が最良のパラメトリック方式・連結方式のシステムより有意に自然だと評価した
- 話者のIDで条件づければ、1つのWaveNetで多数の話者を切り替えられる
- 音楽を学習させると新しく写実的な音楽の断片を生成でき、識別モデルとして音素認識にも使える
WaveNetの特徴は、特徴量を経由せず、波形そのものを1サンプルずつ予測する点です。単語の意味を数値で表す仕組みは単語埋め込みのページで確認できます。
出典:WaveNetの原論文(arXiv:1609.03499)の抄録、英語版Wikipedia「Speech synthesis」
選択肢の読み方
資料の記載から、選択肢を次のように読みます。
- 「MFCCは音声合成の波形を生成するモデルである」は、MFCCが音声から求める特徴量であるという説明と合わない
- 「WaveNetは音声を認識して文字にする専用の手法である」は、生の波形を生成するモデルという紹介と合わない(識別モデルとして音素認識にも使える、という記述はある)
- 「隠れマルコフモデルは、状態を直接観測できるモデルである」は、隠れた過程は直接観測できないという定義と合わない
- 「メル尺度は、周波数を等間隔に並べた尺度である」は、聞き手が等間隔と感じる音の高さを並べた尺度という説明と合わない
ここで挙げた読み方は、一次資料の記載から導いたこのページの整理で、出題を予想するものではありません。
G検定の学習に使う書籍(Amazon)
試験範囲を通して読むときの1冊です。読んだ章は、このサイトの章別問題で確かめられます。
よくある質問
MFCCとは何の略で、何のために求めますか?
メル周波数ケプストラム係数(Mel-frequency cepstral coefficients)の略です。求め方は、音声の断片のフーリエ変換、メル尺度への写像、対数、離散コサイン変換の4工程です。百科事典は、MFCCが音声認識システムの特徴量として一般に使われると説明しています。
隠れマルコフモデルの「隠れ」は何が隠れているのですか?
観測できない状態の列です。百科事典は、隠れマルコフモデルを、観測が隠れたマルコフ過程に依存するモデルと定義し、隠れた過程は直接観測できないため、観測できる側の結果から推定することが目標になると説明します。
音声は連続した信号なのに、なぜマルコフモデルで扱えるのですか?
百科事典は、10ミリ秒のような短い時間なら音声を定常な過程と近似でき、多くの確率的な目的ではマルコフモデルとみなせると説明します。この近似のため、短い区間ごとに特徴量を取り出して並べる扱い方が成り立ちます。
WaveNetは音声合成だけの手法ですか?
原論文の抄録は、音声合成(テキスト読み上げ)への適用を中心に報告しつつ、音楽を学習させると新しい音楽の断片を生成でき、識別モデルとして音素認識にも使えると述べています。
今の音声認識は隠れマルコフモデルが主流ですか?
百科事典によると、2000年代初頭は隠れマルコフモデルとフィードフォワード型ニューラルネットワークの組み合わせが主流で、その後LSTMが取って代わりました。2014年以降は、発音・音響・言語の部品を別々に学習する従来方式に対し、全体を一度に学習するエンドツーエンド方式の研究も進んでいます。試験では、隠れマルコフモデルが従来の標準的な方式だった、という位置づけで押さえておくと整理しやすくなります。
