ディープラーニングの応用例
G検定の生成モデル(VAE・GAN・拡散モデルの違い)
G検定のシラバスには、生成モデルとして変分オートエンコーダ(VAE)、敵対的生成ネットワーク(GAN)、Diffusion Modelが載っています。3つは、どれもデータから新しいデータを作るモデルですが、学習の仕組みが違います。
このページは、3つの原論文の記述をもとに、VAEのエンコーダとデコーダ、GANの生成器と識別器、拡散モデルがノイズを逆にたどる学習を整理しています。
この記事の目次
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結論
- VAEは、エンコーダ(認識モデル)とデコーダを持ち、連続な潜在変数を介してデータを作る
- GANは、生成モデルGと識別モデルDを同時に訓練し、Gは、Dが間違える確率を最大化するよう学習する
- 拡散モデルは、ノイズを少しずつ加える拡散過程を逆にたどるよう学習する
- DCGANはGANの構成を安定させる指針、Pix2PixとCycleGANは画像変換に使うGANの応用
VAE(エンコーダとデコーダ)
VAEの原論文は、データ点ごとに連続な潜在変数を持つ確率モデルについて、事後分布が扱えない場合にも、効率よく推論と学習ができる確率的変分推論のアルゴリズムを提案しています。 近似推論のモデル(認識モデル)をニューラルネットワークで構成した場合が、変分オートエンコーダです。
観測されない変数zは、符号化理論の観点から、潜在表現または符号と解釈できます。 認識モデルq(z|x)は確率的エンコーダで、データ点xが与えられると、xを生み出し得るzの分布を返します。 p(x|z)は確率的デコーダで、符号zが与えられると、対応し得るxの分布を返します。
VAEは「x→z(エンコーダ)、z→x(デコーダ)」の2方向を持つ点が、見分けの手掛かりです。原論文の実験では、潜在空間を2次元のような低次元に選ぶと、学習したエンコーダで高次元のデータを低次元の多様体へ射影し、可視化できると述べています。 潜在変数の事前分布の例には、平均0・単位共分散の多次元ガウス分布が置かれています。
一次資料: Kingma・Welling (2013) Auto-Encoding Variational Bayes, arXiv:1312.6114 の要旨・2.1節・第3節・第5節
GAN(生成器と識別器)
GANの原論文は、敵対的な過程で生成モデルを推定する枠組みを提案しています。 データの分布を捉える生成モデルGと、標本がGではなく訓練データから来た確率を推定する識別モデルDを、同時に訓練します。
Gの訓練手順は、Dが間違える確率を最大化することです。この枠組みは、2人のプレイヤーによるミニマックスゲームに対応すると、原論文は述べています。 任意の関数の空間では、Gが訓練データの分布を再現し、Dがあらゆる所で1/2になる解が、ただ1つ存在します。
GとDが多層パーセプトロンなら、系全体を誤差逆伝播法で訓練できます。 学習にも標本の作成にも、マルコフ連鎖や近似推論のネットワークは使わなくてよいとも述べています。
一次資料: Goodfellowほか (2014) Generative Adversarial Networks, arXiv:1406.2661 の抄録
拡散モデル(ノイズを逆にたどる)
拡散モデルの代表的な原論文(Ho・Jain・Abbeel、2020年)は、拡散確率モデルを、有限の時間でデータに合う標本を作るよう、変分推論で訓練するパラメータつきのマルコフ連鎖と説明しています。 この連鎖の遷移は、拡散過程を逆にたどるように学習されます。 拡散過程は、信号が壊れるまで、データへ少しずつノイズを加えるマルコフ連鎖です。
データにノイズを加える向きが拡散過程で、モデルが学習するのはその逆向きです。論文の抄録は、条件なしのCIFAR10でInceptionスコア9.46、FIDスコア3.17を得たと述べています。 256×256のLSUNでは、ProgressiveGANと同程度の標本品質です。
一次資料: Ho・Jain・Abbeel (2020) Denoising Diffusion Probabilistic Models, arXiv:2006.11239 の抄録と序論
3つの違いを並べて確認
| モデル | 登場する部品 | 学習の特徴(原論文の記述) |
|---|---|---|
| VAE | 認識モデル q(z|x)(確率的エンコーダ)と、p(x|z)(確率的デコーダ) | 連続な潜在変数を持つ確率モデルを、変分推論で効率よく学習する |
| GAN | 生成モデルGと、識別モデルD | Gは、Dが間違える確率を最大化するように学習する。2人のプレイヤーのミニマックスゲームに対応する |
| 拡散モデル | ノイズを少しずつ加える拡散過程と、それを逆にたどる遷移 | 拡散過程を逆にたどるよう、変分推論で訓練したマルコフ連鎖で標本を作る |
「エンコーダとデコーダ」ならVAE、「生成器と識別器」ならGAN、「ノイズを逆にたどる」なら拡散モデルと、部品の名前で見分けます。各モデルの詳しい比較はGANとVAEの違いと拡散モデルとGANの違いのページで確認できます。
DCGAN・Pix2Pix・CycleGAN
シラバスのキーワード欄には、GANの派生として、DCGAN、CycleGAN、Pix2Pixも並びます。 3つは、GANの枠組みをどこに使うかが違います。
| 手法 | 原論文の記述 |
|---|---|
| DCGAN | CNNの構成に制約を置いたGAN。プーリング層をストライド付き畳み込みに置き換える、バッチ正規化を使う、など5点の指針で学習を安定させた |
| Pix2Pix | 条件付き敵対的ネットワークを、画像から画像への変換の汎用的な解決策として検討した。整列した画像のペアで学ぶ |
| CycleGAN | ペアの訓練データが得られない課題のために、ペアなしの画像集合から画像変換を学ぶ手法を提案した |
画像変換では、ペアの画像で学ぶのがPix2Pix、ペアなしで学ぶのがCycleGANです。DCGANの5点の指針は、プーリング層をストライド付き畳み込み(識別器)と分数ストライド畳み込み(生成器)へ置き換える、生成器と識別器の両方でバッチ正規化を使う、深い構成では全結合の隠れ層を取り除く、生成器は出力層のみTanhでそれ以外はReLU、識別器は全層でLeakyReLUを使う、です。
一次資料: Radfordほか (2015) arXiv:1511.06434、Pix2Pix arXiv:1611.07004、CycleGAN arXiv:1703.10593
シラバスのどこに出るか
JDLA公式シラバス(G2024#6〜)では、関連語は次の大項目に載っています。
| 場所 | 内容 |
|---|---|
| 大項目5「ディープラーニングの要素技術」の生成モデル | キーワード欄に、変分オートエンコーダ(VAE)、Attention、Self-Attention、位置エンコーディング、Transformer、Encoder-Decoderが並ぶ |
| 大項目6「ディープラーニングの応用例」の生成AI・基盤モデル | キーワード欄に、Diffusion Model、画像生成、敵対的生成ネットワーク(GAN)、DCGAN、CycleGAN、Pix2Pixなどが並ぶ |
10大項目全体の位置づけは出題範囲の整理にまとめています。
選択肢の読み方
原論文の記載から、選択肢を次のように読みます。
- 「確率的エンコーダと確率的デコーダを持ち、潜在変数を介する」は、VAEの説明
- 「生成モデルと識別モデルを同時に訓練し、ミニマックスゲームに対応する」は、GANの説明
- 「標本が訓練データから来た確率を推定する」のは、GANの識別モデルD
- 「信号が壊れるまでノイズを加える過程を、逆にたどるよう学習する」は、拡散モデルの説明
- 「ペアなしの画像集合から画像変換を学ぶ」は、CycleGANの説明で、Pix2Pixの説明ではない
ここで挙げた読み方は、一次資料の記載から導いたこのページの整理で、出題を予想するものではありません。
G検定の学習に使う書籍(Amazon)
試験範囲を通して読むときの1冊です。読んだ章は、このサイトの章別問題で確かめられます。
よくある質問
VAEとGANは、どちらも「生成モデル」ですか?
どちらも、データの分布を捉えて新しいデータを作るための生成モデルです。VAEは潜在変数を持つ確率モデルを変分推論で学習し、GANは生成モデルと識別モデルを競わせて学習する、という学習の枠組みの違いがあります。
GANの識別器Dは、何を判定しますか?
原論文の記述では、識別モデルDは、ある標本が生成モデルGではなく訓練データから来た確率を推定します。Gは、Dが間違える確率を最大化するように学習します。
VAEの「潜在変数」とは何ですか?
観測されない変数zのことです。原論文は、符号化理論の観点から、zを潜在表現(符号)と解釈できるとしています。データ点xが与えられるとzの分布を返すのがエンコーダ、zが与えられるとxの分布を返すのがデコーダです。
拡散モデルの「拡散」とは何を指しますか?
データに、信号が壊れるまで少しずつノイズを加えていくマルコフ連鎖を、拡散過程と呼びます。拡散モデルは、この拡散過程を逆にたどるように遷移を学習し、ノイズから標本を作ります。
拡散モデルは、GANより高品質だと言えますか?
原論文が述べているのは、256×256のLSUNで、ProgressiveGANと同程度の標本品質を得たという範囲です。GANより高品質だと断定する記述は、原論文の抄録にはありません。
